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20歳  夏




「明です!!
今日からよろしくお願いしま~す!!」



暗い感じもするけど明るい感じもする店内。
今日からゲイバーでバイトをすることになった。



高校生の頃はアヤメと2人で、“極上に良い女”である峰子さんのお店2店舗の裏方の手伝いをしていた。



1つは峰子さんがママをしているスナック。
もう1つは、あたしのお母さんがママをしているクラブ。



アヤメは18歳になってからクラブの表でお酒を飲まず働いていて、あたしが20歳になった時に“ゲイバーで働けば可愛い格好が出来る”と言ってくれた。



あたしの顔は小さな頃から、お兄ちゃん2人にソックリの顔だった。
この男みたいな顔は小さな頃からイヤで、あの男とソックリなのだと知ってからはもっとイヤになった。



それでもこの顔で生きていくしかないので、仕方がない。
“アヤメ”を守らなくてもいい時が来たら、その時は男の空気ではなく女の空気を纏って・・・可愛い女の子になれればいい。



そのくらいだった。
そのくらい軽い気持ちだった。



あたしはこの顔でも楽しく生きていたから。
家庭が複雑でもあの男が最低な男だとしても“アヤメ”を守らなくてはいけないとしても・・・。



どんな苦境でも、友達である明るく楽しい空気があるから、あたしは楽しく生きていた。



そして、可愛いドレスを着てゲイバーの初日のバイトへ。
“アヤメ”からは“社会勉強”と言われていた。
“アヤメ”が小学校1年生の時、“極上に良い女”である峰子さんが“アヤメ”や紅葉、雷に言った。
その言葉を大切にしていたから。



だから“アヤメ”はあたしにもしつこいくらい“勉強”をするように言っていた。



“勉強だけはどんな場所でもどんな環境でも、お金があってもなくても出来る。
男でも女でも、男じゃなくても女じゃなくてもよく分からない“何か”でも出来る。”



いつまで経っても勉強をしないあたしに、“アヤメ”がこう言った。
真剣な空気でこう言った。



“アヤメ”のこの言葉とその空気はあたしの空気を刺激した。
複雑な環境でお金がなかった我が家、それに男でも女でもない“何か”のあたしだったから。



だから、そんな“アヤメ”が社会勉強と勧めてくれるならと思ってゲイバーでバイトをすることにした。



あたしの1番上のお兄ちゃんもこのゲイバーでバイトをしていたから、迷わずここに。
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