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真っ黒なロングドレスを身に纏い、あたしは裏にある更衣室からゆっくりと歩きだした。
“男”の空気を纏って、美しい“男”として・・・美しい“ゲイ”として表に出た・・・。



そしたら、空気が動いた・・・。



お姉ちゃんの周りにいた従業員の数人があたしに気付き、無言のあたしだったのにこっちを向いたから。
あたしは空気を動かしたのだと分かった。



何も喋らなくても、空気は動く。
それは知っていたけど、あたしは喋らないと空気は動かせなくて。



この日、人生で初めて無言のまま空気を動かした。



そんなあたしを、お姉ちゃんの周りにいた授業員だけでなく、他のお客さんや他の授業員も見ている。



でも、お姉ちゃんの周りにいた従業員だけはやけに熱い視線を・・・空気を向けてきていた。
誰も笑わず、何も言わず、やけに熱い視線の空気を向けてきていて・・・。



その中には、オーシャンも。
オーシャンが仕事中にあたしのことを見てくれたのは初めてで・・・。
それに、オーシャンもいつもより熱い視線の空気を向けていた・・・。



あたしはずっと“女”でも“男”でもない“何か”だったから、誰かにこんな風な空気を向けられたことはなくて。
凄い熱い空気ではないけど、こんな少しの熱い空気でも一気に恥ずかしくなってしまった・・・。



“苦境”ではないけど、人生で初めての恥ずかしい感情になっていると・・・



「美しい“ゲイ”になったじゃな~い!!!」



カウンターに立っていた“ママ”が大きな声でそう言った。
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