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そんな嬉しいことを言ってくれて・・・。



「真坂、明のこと好きだろ?」



続いて言われたこの言葉には、固まった。
でも・・・



「うん・・・。」



すぐに返事をした。
だって、好きだから。



明ちゃんは凄く良い子だし、凄く可愛いし・・・。



それに・・・



「その心の中の海の明かりだからな?」



今思っていたことを木葉君に言われた。



それに驚いていると、木葉君が優しい顔で笑った。



「明は我が家の明かり。
あの狭い部屋の明かりなんだよ。
良い子なんだ、すげー良い子で。」



「うん・・・分かるよ・・・。」



俺がそう返事をすると木葉君は俺を少しジッと見て・・・



「お前、“好き”っていうより“愛してる”だな。」



「え・・・!?」



「激しい奴だからな、“好き”なんて可愛い感情じゃおさまってねーだろ。
まだ高校1年だし出会ってそんなに経ってねーのに、“愛して愛して仕方ない”顔してるぞ?」 



「え!!!?」



自分ではそこまでだとは思っていないけど、木葉君にそう言われてしまって・・・



木葉君はゆっくりとベンチから立ち上がった。



その両手が強く強く握られているのを見る。



「真坂、俺を助けて欲しい・・・。」



「木葉君を・・・?俺が・・・?」



木葉君が俺に大きな大きな背中を向けたまま話す。



「俺は・・・“弟”だから・・・。」



「・・・名前が?実際?」



「どっちもだな・・・。
世の中の色々なことに名前なんか関係ない。
でも、限界を感じる時がある。
俺の兄貴2人はあまりにもデカすぎる名前と存在で。」



「そうなんだ・・・。」



「俺と一緒に闘ってくれる奴が欲しい。
1番上の兄貴とはタッグを組むことで話がついてる。
でも、“俺”だけだと兄貴の相棒は不十分で。」



「そんなことはないでしょ?」



「あるんだよ・・・。
兄貴2人とは俺1人じゃ肩を並べられない。
一歩も二歩も後ろに下がらないといけないような気がするんだよ。」



木葉君の強く握り締める両手が、強すぎるからか震えてきた。
それを確かめた時・・・木葉君が俺の方を振り向き見下ろした。



そして・・・



「殺しにいきたいんだよ。」



「殺す・・・?」



「あの男を・・・俺達の父親を・・・。」



そんな物騒な話をしてきて驚く。
驚いた俺に・・・木葉君は激しすぎる熱い雷のような目で俺を見る。



「あの男を殺して、明を女にする。
あの男が生きている限り明は女になれない。
可愛い妹なんだよ、我が家の・・・俺の明かりでもある。
明の存在に・・・俺は何度も救われてた。
俺の心の中には1番上の兄貴である“男”、2番の兄貴である“雷”、そこに明の明かりが灯ってる。」



木葉君は少し震える大きな大きな手、右手を俺に差し出してきた。



「真坂、俺の“海”になって欲しい。
“弟”の俺の“海”に・・・大きな海・・・“オーシャン”になって欲しい・・・。」



木葉君の大きな大きな手を見る・・・。



その手を見ながら・・・



俺は自分の小さな右手で木葉君の大きな右手を掴んだ。



「明ちゃんを、女の子にするために。」



“自分が死んででも愛した女を守れ”



父さんの声が、今はよく頭の中に響いてきた。
あんなに煩いと思っていた声・・・。
でも、もっと煩くてもいいと思った・・・。



そう思った時・・・



木葉君が俺の右手を思いっきり引っ張り・・・



「・・・わっ!!」



木葉君の大きくて厚い胸の中に・・・。



太くてガッシリとした左腕で俺を抱き締めてきて・・・



「俺、彼女より真坂の方が好きなんだよな!!」



と・・・。



それに心臓が飛び出る程喜んでしまったのは・・・



秘密にしておいた・・・。
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