【完】可愛くて美味しい真理姉

Bu-cha

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「21時過ぎ・・・やっと抜けられそうだな。」



和君が少し息を吐き、腕時計を見下ろした後に私の方を見てきた。



「遅くなったけど・・・何処か行きたい所あるか?」



そう聞かれたので・・・私は小さく笑って首を横に振った・・・。



そして・・・



「ごめんね、何処にも行かない。」



そう言った・・・。



私がそう答えると和君は焦った様子になり・・・。
“私”のことが好きらしいので、それには申し訳ない気持ちになってくる。



「もっと早く抜けられれば良かったよな、ごめんな・・・。
でも・・・まだ21時だし、もう少し・・・。
・・・イルミネーションでも見に行くか、近くにあるから。」



和君がそう言って、明るい笑顔で私に笑い掛けてくる。
焦った様子なのに・・・明るい笑顔で・・・。



そんな初めて見る和君に・・・“和雄”君に笑い掛ける・・・。



“彼女”と何度も紹介してくれた“和雄”君に・・・。



“私”のことを、何度も“彼女”と紹介してくれた・・・。



和雄君の隣に並んで、何度も“彼女”と・・・。



それで、それだけで、“私”はもう良かった・・・。



これでもう、“私”は良かった・・・。



そして、何処かに出掛けるのはもう無理そうだった・・・。



それよりも・・・



それよりも・・・



「疲れちゃった・・・。
何処かで休んでから帰りたいから。」



休みたかった・・・。
凄く、疲れたから・・・。
“武装”をするのは2回目で・・・。
たった数時間の“武装”でもう限界だった・・・。



“和雄”君との舞踏会はこれで終わりでよかった・・・。
とても素敵な夢のような時間だったから・・・。
忘れ物も落とし物もせず、このまま何処かで休んでから帰りたかった・・・。



それくらいに、疲れていたから・・・。



そう言った私に、和雄君は何故か凄く驚いた顔をしていて・・・。
その瞳は大きく揺れていた・・・。
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