【完】雪の上に、犬と猿。たまに男と女。

Bu-cha

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社会人1年目、11月。



「桃子せんぱいって、再婚しないんですか?
めちゃくちゃモテるじゃないですか!」



教育担当の桃子せんぱいが俺と長峰を初めて飲みに誘ってくれ、3人で居酒屋に入ったら長峰がすぐにバカ舌を披露した。



28歳になる桃子せんぱい。
入社してすぐの頃も長峰がバカ舌を披露して、「何でそういう化粧してるんですか?」と聞いていた。



「長峰さ、そういうデリカシーないこと言うのやめなよ。」



「だって凄い疑問じゃん!!
めちゃくちゃモテるし性格も良いし、こういうメイクしてても隠しきれない美人さ!!
お子さん2人も大きいんですよね?」



大きい子どもが2人いる桃子せんぱい。
桃子せんぱいは高卒どころか中卒でマツイ化粧品に入社をした人だった。
その時には既に子どもが2人いたらしい。
それも、シングルマザーだった。



噂では前の旦那さんの子どもと言われているけれど、そういう人には全く見えなかった。



自分とは違うパーソナルカラーのファンデーションだか化粧下地をしているのか、いつも顔色の悪い桃子せんぱいはお酒を呑んだからかいつもより顔色が良い。



コンシーラーで唇の赤みまでおさえているけれど、今はそれも落ちてよく色付いた唇が現れている。



後ろで1つに結んでいる黒い髪の毛、サイズの合わないブカッとしたパンツスーツ。



そんな姿で桃子せんぱいは幸せそうに笑う。
“私はメイクで武装をしてお母さんになっているの”
いつか長峰に答えた桃子せんぱいの言葉を思い出す。



「私は、子どものことが好きなの。
子どものことが1番好きだからいいの。
それに、あれはモテてるんじゃないよ。
私は死神だからね、みんな気を遣ってくれてるの。」



陰で桃子せんぱいは“死神”と呼ばれていた。
そう呼ばれる理由はいくつかあることを俺と長峰は知っている。
周りの奴らがやたらと俺達に桃子せんぱいのことを吹き込んでくるから。



それくらいにこの人の存在はマツイ化粧品で異質だった。
新卒は大卒でなければ入社出来ないはずのマツイ化粧品。
そんな会社で、中卒で入社をした2人の子持ちのシングルマザーが企画部で課長として就いている。



「お子さん、何歳なんですか?」



長峰がこの話を広げようとする。



「二十歳と18歳。」



それには、呑んでいたビールを吹き出しそうになった。
いつも“もう大きい子”としか言わない桃子せんぱいが初めて具体的な話をしてきた。
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