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雪枝side.......



「もう1人の社長、須崎も“ゆきのうえ商店街”の出身なので。
駄菓子屋の息子で、元不良の“女好きの竜”。
僕と長峰は高みを目指さないといけないので。
憧れでもあり怖い存在でもあるこの2人の元で、長峰と高みを目指すことに決めました。」



宝田が力強くそう言い切り、なのに困った笑顔で私の方を見てきた。



「でも、大好きな奥さんと離れ離れにさせるのは申し訳ないしね。
そんな素敵な理由なら俺達からは何も言えないし、残念だけど諦めようか。」



宝田の言葉に私は素直に頷いた。
私もそう思うから。



「長峰、じゃあアレだけお渡しして帰ろうか。」



「そうだね、アレだけはお渡ししようね。」



私は自然と笑顔になり、どんな結果になったとしてもお渡ししたかった物を宝田が持ってきてくれた紙袋から出した。



そして、それを2人に向かって掲げた。



「宝田の実家、宝多米店というお米屋さんのプライベートブランドの純米酒です!!
奥様が日本酒が大好きだと息子さんから伺いましたので、お持ちしました!!」



昨日、和の妹の彼氏、2人の2人目の息子から聞いた話の1つ。
宮本さんは日本酒が大好きだという話。
むしろお酒は日本酒だけしか呑まないらしい。



だから今日はとっておきの純米酒を持ってきた。
その話を聞いた瞬間、私にはこの純米酒を宮本さんに持っていくことだけしか考え付かなかったから。



宝田は渋りながらも「流石だね」と頷いてくれた。



そのとっておきの純米酒の一升瓶を見た夫婦は目を大きく見開いている。



宝田のお父さんが作った新しい純米酒、まだ販売前の物。
そして商店街の福引きの商品となっていた純米酒。



ゆきのうえ商店街に新しい天使が誕生し、宝田のお父さんが作った物。



新しい天使とはサトシとキミヨの息子のこと。



宮本の名字に変わったキミヨから産まれた可愛い可愛い天使。



その天使の名前がフルネームでラベルに書かれている純米酒。



この純米酒の名前は・・・



名前は・・・



「「「宮本武蔵。」」」



宝田と言葉が重なっただけではなく、宮本さんとも重なった。



今でいう歴女である旧姓宮本さん。
自分達の長男に“武蔵”と名付けたくらいに宮本武蔵が大好きな宮本さんに、“宮本武蔵”の純米酒を持ってきていた。
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