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寒さで震える手でタバコを口に咥える。
ライターで火をつけようとするけど、手が震えて火がつかなかった。
何度も何度もライターで火をつけようとしていた時・・・
「火、いります?」
真っ暗な道の中、遠い街灯の光で少しだけ男のシルエットが見える。
驚いていると、男が・・・今の時代珍しくマッチを擦った。
その瞬間、マッチ棒の先端に儚い火が灯り・・・
私の口に咥えるタバコの先に、ゆっくりと近付けてきた。
タバコの先が儚い火で焦げていくのを見ながら、ゆっくりと毒を吸い込む。
黒い黒い世界の中、突き刺さるような冷たい空気を感じ、儚い火を見ながら吸い込んだ毒は・・・
一気に身体に回った。
一瞬で目が覚めるような毒が回った。
こんなに毒が回ったのは初めてだった。
その毒を感じながら、儚い火が消えていないのに気付く。
その儚い火の向こう側には、男の顔があった。
驚いた顔で私のことを見ている。
こんな田舎町にはいない良い女だからかもしれない。
そんなことを思いながら、目の前の男の顔にタバコの煙を吹き掛けた。
ゆっくりゆっくりと、吹き掛けた。
白い白いタバコの煙が広がり、男の顔が見えなくなる。
そして少しずつ、タバコの煙が薄れていく。
儚い火の中現れた男の顔を見て、笑った。
良い男だったから。
これは“ママ”が親父にだけやっていたこと。
昔はよく親父もママのお店に来ていた。
その時、“ママ”はよく親父にこれをやっていた。
そして、こう言っていた・・・。
「煙が消えた後も、良い男だね!!!」
驚いた顔をしていた男にそう言った。
それくらい良い男だったから。
顔にシワは刻まれていないけど、その顔には何かがしっかりと刻まれている良い男だったから。
こんな田舎町にいるのが不思議なくらいの、良い男だったから。
思わず、してしまった。
これをしたのは初めてだった。
思わずしてしまうくらいの、良い男だった。
その男が、儚い火の向こう側で・・・
嬉しそうな顔で、幸せそうな顔で、笑った・・・。
私を見て、笑った・・・。
その顔は爺さんに似ていた。
私が恋をしてしまいそうになった爺さんに、なんとなく似ていた・・・。
ライターで火をつけようとするけど、手が震えて火がつかなかった。
何度も何度もライターで火をつけようとしていた時・・・
「火、いります?」
真っ暗な道の中、遠い街灯の光で少しだけ男のシルエットが見える。
驚いていると、男が・・・今の時代珍しくマッチを擦った。
その瞬間、マッチ棒の先端に儚い火が灯り・・・
私の口に咥えるタバコの先に、ゆっくりと近付けてきた。
タバコの先が儚い火で焦げていくのを見ながら、ゆっくりと毒を吸い込む。
黒い黒い世界の中、突き刺さるような冷たい空気を感じ、儚い火を見ながら吸い込んだ毒は・・・
一気に身体に回った。
一瞬で目が覚めるような毒が回った。
こんなに毒が回ったのは初めてだった。
その毒を感じながら、儚い火が消えていないのに気付く。
その儚い火の向こう側には、男の顔があった。
驚いた顔で私のことを見ている。
こんな田舎町にはいない良い女だからかもしれない。
そんなことを思いながら、目の前の男の顔にタバコの煙を吹き掛けた。
ゆっくりゆっくりと、吹き掛けた。
白い白いタバコの煙が広がり、男の顔が見えなくなる。
そして少しずつ、タバコの煙が薄れていく。
儚い火の中現れた男の顔を見て、笑った。
良い男だったから。
これは“ママ”が親父にだけやっていたこと。
昔はよく親父もママのお店に来ていた。
その時、“ママ”はよく親父にこれをやっていた。
そして、こう言っていた・・・。
「煙が消えた後も、良い男だね!!!」
驚いた顔をしていた男にそう言った。
それくらい良い男だったから。
顔にシワは刻まれていないけど、その顔には何かがしっかりと刻まれている良い男だったから。
こんな田舎町にいるのが不思議なくらいの、良い男だったから。
思わず、してしまった。
これをしたのは初めてだった。
思わずしてしまうくらいの、良い男だった。
その男が、儚い火の向こう側で・・・
嬉しそうな顔で、幸せそうな顔で、笑った・・・。
私を見て、笑った・・・。
その顔は爺さんに似ていた。
私が恋をしてしまいそうになった爺さんに、なんとなく似ていた・・・。
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