【完】タバコの煙を吸い込んで

Bu-cha

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実家の仏壇の前で、朝から両手を合わせる。
私の両隣には拓実とジジイが。
“クラブ 時”のマッチで火をつけた3本のお線香から、煙がユラユラと広がっていく。



「ジジイ、時子ママからの迎えはまだまだじゃない?」



「いいんだよ。
きっと時子ちゃんが回してくれている時間の中に僕はいるから。」



「・・・じゃあ、拓実と私の子ども、この子がここを出ていくまでは一緒に生きて?」



下腹部に手を添えながらジジイを見ると、ジジイがシワクチャな顔をもっとシワクチャにして笑った。



そんなジジイを拓実が嬉しそうな顔で見て、私を抱き締めてくれる。




「小太郎君達が新居に移ったから、本格的にこっちに住もうね。
みんなで一緒に生きていこう。」



「・・・親父、案外大丈夫そうだったね。」



「最近よくスナックに行ってるからね。」



「私が住んでたマンションには、新しい女の子が入居する手続きをしたから。
私が抜けてNo.1になった子。」




拓実に向き合い、拓実の背中に両手を回す。




「俺と響ちゃんで前にタクシーに乗せた子だよね?」



「そう。あの後に入ってきたの。
私の噂を聞いて・・・。
よくああいうことしていたから。」




拓実に抱き付いたまま、また仏壇を見る。
そこには写真が3枚。
凛ばあちゃんの写真と時子ばあちゃんの写真。




それと、時子ママが32歳の時の写真。
拓実にはもう怒れないくらい、信じられないくらい私だった。
ママよりも遥かに、私だった。




「時子ママ、私もタバコを吸う・・・。
また夜の時間を生きて、タバコの煙を吐き出す・・・。
見守っていて・・・。」




私がそう呟くと、爺さんが私の頭に少しだけ手をのせた。





そして、拓実が私の身体を優しくも強く抱き締める・・・。






2人いる・・・。
私には、2人もいる・・・。






私自身が吐き出すタバコの煙を吸い込んでくれる良い男が、2人もいる・・・。








「じいちゃんが相手だと、俺はまだまだだから怖いな・・・。」







どんな道でも1人で歩けるはずの私の戸籍上の夫は、こんなにヨボヨボの爺さんだけは怖いらしい・・・。












end........
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