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「ごめん・・・母ちゃん癖が強いから・・・。」




“勝也”が困った顔で私に笑い掛けるので、私も頷きながら笑った。




「勝也は女の趣味が悪いって、樹里から聞いてる。
樹里は樹里でヘソ曲がりだけど、あの子は目が良いから・・・お母さんは信じてる。」




“勝也”のお母さんがこっちを見ることなく、そう言った。




「良い子だよ、凄く良い子で・・・本当だったら、俺が一緒にいたらいけないくらい、良い子なんだ・・・」




“勝也”が泣きそうになりながらそう言うので、私は“勝也”にもう1度笑いかけお母さんを見た。





そして、“勝也”のお母さんの元へ歩き出す・・・。






ゆっくりと、ゆっくりと、いつもよりゆっくりと歩いて・・・






正座をしている“勝也”のお母さんの横に、ゆっくりとしゃがんだ。






それでも、私の方を見ない“勝也”のお母さん・・・






怒った顔で、仏壇を見上げている・・・。







そんな“勝也”のお母さんに笑いながら、私は話し掛ける。




























「なんてことのない女でごめんなさい。
勝也君のまだ彼女にはなれていない、大橋莉央です。」





“勝也”のお母さんが、少しだけ動く・・・





それに笑いながら、伝える。














「先日は、お菓子をありがとうございました・・・加瀬様・・・。」
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