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「国光さんにあげたんだから後は好きにしろよ。」



須崎君はそう言ったけれど、パッと私の両腕からキャンバスを抜き取った。



「家どこ?」



そう聞かれ最寄り駅を答えた。
そしたら須崎君が凄く驚いた顔になり・・・



「神社ってもしかして、“ゆきのうえ商店街”の近くの?」



「そうだよ、知ってるの?」



「神社は行ったことないけど商店街にはガキの頃に数回だけ行ったことがある。」



嫌な顔をしながら私にキャンバスをまた押し付けてきた。
それをまたしっかりと抱き締めると須崎君が急に何かを思い出したように私を見下ろした。



そして・・・



「じゃあ、国光さんって“神様”の娘なんだ?
だからネコの姿見えたのか、すげーな。」



サラッとそう言われた。
それには驚いていると・・・



「俺の両親“ゆきのうえ商店街”出身なんだよな。
父親は駄菓子屋の息子で母親は本屋の娘。」



「そうなんだ、お父さんとお母さんから聞いたことはある。
2人とも結婚した時に商店街を出たって。」



キャンバスを抱き締めながら言った私の顔をジッと見詰め、須崎君が口を開いた。



「国光さんのその顔の雰囲気、すげーうちの母親に似てる。
“可愛い顔”も“綺麗な顔”もうちの母親が独占してたから、国光さんのその顔めっっっちゃタイプなんだけど。」



そんなマザコンみたいな発言には笑ってしまい、でも恥ずかしい気持ちにもなりながら俯いた。



そしたら、いた。



ニャンがいた。



須崎君の足元に美しく佇み、宝石のような真っ赤な目で私のことを見下ろしている。



見付けてきたくれたのだと分かった。



ニャンがいなくなったこの世界で“普通”ではない私の傍にいてくれるような人を、ニャンが見付けてきてくれた。



「ありがとう、ニャン・・・。」



ニャンに笑いながらお礼を言うと・・・



「俺のあだ名“ニャン”かよ!!
いくら同じ名前だからって酷すぎだろ!!」



須崎君にそう勘違いをさせてしまって慌てて顔を上げた。



須崎君は楽しそうに笑っていて・・・



その笑顔がオレンジ色にキラキラと輝いていたから、私は何も言い訳せずにただ笑った。



胸にニャンを抱き締めながら、久しぶりに心から笑った・・・。
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