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それには驚きすぎて流れていた涙も止まった。



「カヤ、誰とも結婚なんて出来ないだろ?」



「誰とも・・・私、誰とも結婚出来ないのかな・・・?」



「出来ないだろ。」



ニャンにまた即答された。
私は“普通”ではないから・・・。
私はこんなにも“普通”ではないから、私は誰とも結婚が出来ないとニャンから言われてしまった。



「だったら俺でもいいだろ、セックスの相手として俺を選べてたわけだし。」



「エッチはしたけど、でもそれは・・・」



「カヤ。」



“ニャンの為だった。”
続く言葉をニャンに遮られ、ニャンがまた私の目の前に立った。



「俺、絵を描く仕事をして金を稼ぐから。」



「うん・・・。」



「カヤには悪いけど、俺はカヤを掴まえておきたい。
勝手にいなくならないような関係になっておきたい。」



そんなことを真剣な顔で言われる。



「その代わり、カヤは好きにしていいから。
会計事務所も続けたければ続ければいいし、料理だって家事だってしなくてもいい。
俺のことは何て呼んでもいいし、カヤがしたい時だけセックスだってすればいい。
相手になるから、俺。
カヤがしたい時にだけ相手になるから。」



そう言って、怖いくらい目に力を込めた。
ニャンはステンドグラスを背中にして立っているけれど、それが分かるくらいに黒い中でニャンの目が鋭く光っている。



「子どもだってカヤが欲しくなければ作らなければいいし、他に好きな男がいるならそいつを想っててもいい。」



「なにそれ・・・?」



私が聞くとニャンが私の腕を少しだけ掴んできた。
あまりにも熱いその手に、今回も驚いて自分の腕を見下ろす。



「そいつとセックスが出来るようになればセックスだってしてくればいい。
そいつとの子どもが出来たとしても俺も育ててやるから。」



「ニャン・・・っ」



この腕が焦げ落ちてしまうくらいに熱すぎて、それから逃れるように腕を振る。
それでもニャンは私の腕を離してくれず、もっと強く握ってきた。



「俺、何にだってなるから。
カヤが望むモノに何だってなるから。
だからその代わりに俺と結婚して欲しい。
俺の前からいなくならないで欲しい。」



怖いくらいのそんな言葉には身体が震えてきた。



「俺のことなんて好きにならなくていい。
そんな日は最後まで来なくていい。
俺のことなんて見なくてもいいから。
俺もカヤの顔以外は見てない。」
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