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初めて見る会長のそんな顔には驚いた。
驚いている俺に気付いたのか松戸さんがチラッと俺の方を見てきて、照れたような顔で俺に笑い掛けてきた。



「国光と・・・カヤと高校の同級生なんですよね?」



「はい・・・。」



「実は僕、カヤの従兄でして。」



「そうですか。」



高校時代、会長から従兄がいるなんて話は聞いたことがなかった。
家族の話はよくしていたけれど、従兄の話は聞いたこともなかった。



そう思いながら松戸さんの名刺をもう1度見る・・・。



もう1度だけ見て・・・



「朝・・・。」



そう呟いた。



“松戸朝人”と書かれている名刺を見下ろしながら、そう呟いた。



「覚えてるかな?
何回か話したことがあった気がする。
“朝がだるい”とか“朝が面倒”とか。
それ、この人。」



「人だったんだ・・・?
てっきり本物の朝について言ってるのかと思ってた・・・。
“朝にアイテープするの面倒”とかも言ってたし。」



会長との何気ない話を思い出しながら松戸さんのことを見る。
松戸さんは照れたような顔から急に真面目な顔になり俺のことを見詰めてきた。



「すみません、ちょっと個人的にカヤとやり取りしていいですか?」



「はい・・・。」



俺が返事をした瞬間、松戸さんは隣に座る会長に向き合い・・・



両手でカヤの頭をグジャグジャにしながら撫で始めた。
整った顔を・・・整いすぎているような顔をクシャクシャにして笑って・・・。



「ちょっと・・・やめてよ!!」



「良い子良い子、マジで良い子!!
愛してる!!!」



「キモいから・・・!!」



会長はそんな返事をしながらも嬉しそうな顔で笑っている。
めちゃくちゃ嬉しそうな顔で笑っている。



何を見せられているのか・・・。



俺は一体何を見せられているのか・・・。



何を注文したのかも何を食べたのかも、画家としての俺の収入についてどんな話をしたのかも何も思い出せなかった。
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