63 / 235
6
6-13
しおりを挟む
大急ぎで玄関まで迎えに行く。
長い長い廊下を大急ぎで走り、玄関に座り込み俯いている武蔵の後ろ姿に向かって声を掛けた。
「武蔵!!!」
私が武蔵の名前を呼ぶと・・・
呼ぶと・・・
呼んでも、武蔵は振り向いてくれなかった。
いつもは心底嬉しそうな顔で、心底幸せそうな顔で振り向いてくれるのに、振り向いてくれなくて・・・。
その代わり、ゆっくりと立ち上がり・・・革靴を脱いでからゆっくりと顔を上げた・・・。
「こんなに夜更かしで大丈夫?女子大生。」
“女子大生”と・・・。
武蔵が私を“女子大生”と呼んだ・・・。
“小町”ではなくて、“女子大生”と・・・。
驚いている私の横を、武蔵がいつもと同じ笑顔で・・・優しい笑顔で、通り過ぎていって・・・
そんなことをされたのは初めてで・・・。
それに・・・
それに・・・
武蔵からは凄いお酒の匂いがして・・・。
たまに会社の飲み会に参加しているのは知っていたけど、こんなにお酒の匂いがしたのは初めてで・・・。
驚きながらも武蔵の後をついていく。
「武蔵、飲み会だったの?」
「そうだね、会社の人と飲んできて。」
「会社の人・・・?研究室の人?」
「そうだね。」
武蔵が優しい声で、いつもと変わらない優しい声で返事をしてくれるけど、早足で部屋へと向かっていく。
私と話したくないかのように・・・。
「もしかして、女の子と飲んできたの・・・?」
そうなのかなと、思ってしまった。
お父さんからの話を聞いて、そうなのかなと思ってしまった。
「うん。」
「そうなんだ・・・。」
それにも驚いて、ショックで、それからは無言で武蔵の部屋の前までついて行った。
「それじゃあ、おやすみ。」
武蔵がそう言って、私のことを見ることなく部屋の扉を開けてしまって・・・
部屋に入ってしまって・・・
その扉が閉まる直前、無我夢中で右手を伸ばして扉が閉まるのを阻止した。
長い長い廊下を大急ぎで走り、玄関に座り込み俯いている武蔵の後ろ姿に向かって声を掛けた。
「武蔵!!!」
私が武蔵の名前を呼ぶと・・・
呼ぶと・・・
呼んでも、武蔵は振り向いてくれなかった。
いつもは心底嬉しそうな顔で、心底幸せそうな顔で振り向いてくれるのに、振り向いてくれなくて・・・。
その代わり、ゆっくりと立ち上がり・・・革靴を脱いでからゆっくりと顔を上げた・・・。
「こんなに夜更かしで大丈夫?女子大生。」
“女子大生”と・・・。
武蔵が私を“女子大生”と呼んだ・・・。
“小町”ではなくて、“女子大生”と・・・。
驚いている私の横を、武蔵がいつもと同じ笑顔で・・・優しい笑顔で、通り過ぎていって・・・
そんなことをされたのは初めてで・・・。
それに・・・
それに・・・
武蔵からは凄いお酒の匂いがして・・・。
たまに会社の飲み会に参加しているのは知っていたけど、こんなにお酒の匂いがしたのは初めてで・・・。
驚きながらも武蔵の後をついていく。
「武蔵、飲み会だったの?」
「そうだね、会社の人と飲んできて。」
「会社の人・・・?研究室の人?」
「そうだね。」
武蔵が優しい声で、いつもと変わらない優しい声で返事をしてくれるけど、早足で部屋へと向かっていく。
私と話したくないかのように・・・。
「もしかして、女の子と飲んできたの・・・?」
そうなのかなと、思ってしまった。
お父さんからの話を聞いて、そうなのかなと思ってしまった。
「うん。」
「そうなんだ・・・。」
それにも驚いて、ショックで、それからは無言で武蔵の部屋の前までついて行った。
「それじゃあ、おやすみ。」
武蔵がそう言って、私のことを見ることなく部屋の扉を開けてしまって・・・
部屋に入ってしまって・・・
その扉が閉まる直前、無我夢中で右手を伸ばして扉が閉まるのを阻止した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
20
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる