【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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「行ってらっしゃい。」



「行ってきます。」



朝5時、数ヶ月前から武蔵は30分早く会社に行くようになっていた。
いつものように見送る私を武蔵は目を合わせることもしない。



昨日の武蔵からの話を聞いて、私は決めた。



言おうと思う。
言ってしまおうと思う。



私の婚約者に武蔵が選ばれてしまっていると。



こんなにも頑張ってきて、こんなにも無理そうで、期限まであと1ヶ月になってしまっていて。



もう武蔵に告げて、あと1ヶ月で気持ちの整理をしてもらって、少しでも私のことを好きになってもらうしかないと思った。



「武蔵。」



玄関の扉を開けた武蔵の名前を呼ぶと、武蔵がピタッと動きを止めた。
私を振り返ることなく、武蔵は止まったまま。



そんな武蔵に言う・・・。



そんな武蔵の後ろ姿に、言う・・・。



「武蔵・・・あの、私の・・・私の婚約者のことなんだけど・・・」



「小町。」



久しぶりに・・・久しぶりに、私の名前も呼ばれた・・・。



そして・・・



そして・・・



「関係ないから。
俺には小町の婚約者が誰でどんな人かなんて関係ないから。
だからそんな話もうしないでね。」



そう、言われてしまった・・・。



そう言われてしまった・・・。



「会社、行ってくる。」



何も言えない私に、武蔵が背中を向けたまま出ていってしまった・・・。



出ていってしまった・・・。



「笑ってたのに・・・。」



私は今、笑っていたのに・・・。



夜に泣きながら起きた後、ずっと鏡の前で練習していたのに・・・。



いつもよりは可愛い笑顔で言えるように、練習していたのに・・・。



そんな笑顔も見てくれなくて、私からの言葉も聞いてくれなくて・・・



あとは、何が出来るんだろう・・・。



期限までの1ヶ月、私には何が出来るんだろう・・・。
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