【完】秋の夜長に見る恋の夢

Bu-cha

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屋敷に入るとすぐ、長い長い廊下を小町が小走りで駆け寄ってきた。
その姿を見て身体は大丈夫なのか心配にもなる。



「武蔵、お帰り。
こんなに早い帰りなんて初めてじゃない?
どうしたの?」



「小町のお父さんから、小町が具合悪いって聞いたから。」



「あ、うん。朝起きた時に身体とかお腹が痛くて熱っぽかったんだよね。
でも・・・こういう話するのちょっとアレだけど、武蔵とは一緒に暮らしてるわけだから言うけど・・・。
女の子の月に1度のやつが関係してるっぽい。
そろそろ始まるから。
私たまに重くなるんだよね。」



小町が・・・そう言った・・・。



なんというか、本当に何でもない感じで・・・。
それには驚いた・・・。



正直、俺は今日1日小町のことを何度も思い出して・・・。
小町の甘い唇や、初めて触れた小町の身体、抱き締めた身体の柔らかさ、小町の中の感じとか・・・。
何度も思い出してしまって、その度に興奮したり恥ずかしくなったり集中し直したり。



そんな1日を過ごしていたのに。



不器用な器しかない俺は、そんな1日を過ごしていた・・・。



昨晩だけと言われていたのに・・・。



そう言われていたのに・・・



俺は、避妊具まで購入してしまって・・・。



小町はちゃんと、昨晩限りで終わらせていたのに・・・。



25歳にもなった俺が、そんなことも出来そうになくなっていて・・・。



「そうなんだ。」



なんとか、声を出した。



「心配して帰って来てくれたのにごめんね?
今はもう全然大丈夫だから。」



もう大丈夫・・・。
小町は、もう大丈夫・・・。



昨晩だけで・・・小町はもう大丈夫・・・。



格好悪い姿だっただろうなと、思った。
25歳にもなった男が、19歳の女の子に夢中になって・・・。
よく覚えていないくらい夢中になってそういうことをしてしまって・・・。



小町はもう、全然大丈夫らしい・・・。



「そっか、よかった。」



「スマホで連絡してくれれば良かったのに。
そしたらもっと早く知れたよ?」



「スマホって、そういう風に使えるんだね。」



友達といえるような友達もいない。
家族は俺がスマホを気にしていないことを知っている。
誰からも連絡なんて来ないはずだから、スマホを気にしたこともなかった。



スマホで誰かと連絡を取ろうと考えたこともなかった。



25歳になって初めて、スマホの使い方も知った。



それに笑いながら、この屋敷の鍵を鞄の中に仕舞おうとして・・・
チリン──...と、また・・・それでも幸福の音が響いた。



静かに深呼吸をしながら小町の隣で長い長い廊下を歩く。



昨晩のこと、それを小町が何でもないことにするのなら、俺はそれに付き合おうと思う。



それが小町の覚悟でもあるとは思うので、俺はそれに付き合おうと決めた。
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