【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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一夜に初めて彼氏のことを、譲のことを聞かれた。
何故か胸が苦しくなってきて、私は一夜の横顔を眺める。



あれから信之は帰ってくることはなかった。
それどころか、永家の力を使っても信之の行方は掴めなかった。
信之の両親は頭を下げ続けるだけだったけれど、うちのお父さんとお母さんの方が憔悴していた。
“生きていてくれればいいが”
今でもそう何度も2人で言っていて、ずっと信之を探し続ける動きは続けている。



だから、私も譲との付き合いを続けていた。
結子の次の婚約者が決まり、結子の結婚の日が決まるまで。
私からは言っていないけど、譲からそう提案されたのでそれにはすぐに頷いた。



信之が消えてから結子はもっと苦しそうにするようになっていたから。
それに、あのクソジジイが結子に対して暴言だけではなく箸まで投げつけるようになった。
信之がいなくなり初めての孫会でそれをやり、“結子”としてちゃんと出席していた結子は過呼吸まで起こした。
箸は妙子がキャッチしてくれたけれど、結子に信之がいなくなったこの世界は苦しすぎた。



だから私は譲からの提案に即答した。
譲との時間しかないと思ったから。
結子に生きる力をチャージ出来るのは、譲との時間しかないと思った。



永家不動産ではみんなが私に彼氏がいることを知っている。
恋バナが好きではない私は“高校3年から付き合っている”としか話していないので、みんな詳しくは知らない。



私は結子のように恋バナは好きではなかった。
恋愛漫画や恋愛映画も好きではなかった。
でも、結子と交換っこする為には必要な知識だったからそれらも詰め込んだ。
全然好きではない美容系動画も、結子が好きだから何倍速も速めてだけど見ていた。



私は結子を守る為だけに生まれてきた。



私は結子を守る為だけに育てられた。



両親が“ゆきのうえ商店街”出身である一夜の横顔を眺めながら、“駿と雪”であるあの2人を思い浮かべる。
あんな2人みたいな関係だったら付き合ったら楽しいだろうなと思っていた。
だからあの2人の恋バナだけは興味があった。



めちゃくちゃ仲の良い友達の延長線のような譲との付き合いにも満足していた。
私はそれを満足していた。



でも・・・



「普通の人ではないかな。」



何故か息苦しくなりながら、そう答えた。
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