【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「そうだな、されたな!」



譲は立ち止まり、“私”に笑いながら向かい合った。



「結子の告白は忘れてあげて?
そしたら結子は同じ大学を選べると思う。」



「分かった、告白されたことは忘れる。
でも結子の気持ちだけは貰っておく。」



そう言って右手で胸を抑えた譲を見上げ、“私”は譲の目の前まで歩き譲の右手の上に自分の右手を重ねた。



「ダメ、気持ちも貰わないで。
“私”が結子に返しておく。」



そう言ってから自分の右手を強く握った。
その右手を譲に見せながら伝える。



「結子の告白も結子の気持ちも忘れて。
なかったことにして。
“私”が結子の気持ちを結子に返しておくから。」



真剣な顔で“私”を見下ろしてくる譲に笑い掛けた。



「それで結子に言っておく。
譲への初恋は忘れるように、譲への初恋はなかったことにするように。
今までの譲との思い出は忘れてなかったことにするように。」



強く握り締めた右手をゆっくりと下ろす。



「そしたら結子は譲と同じ大学を選べると思うから。
譲の“涙担当”の友達でいられるはずだから。」



怖いくらい真剣な顔をしている譲に笑い続けながら、伝えた。



「結子にカラフルな景色を見せてくれてありがとう。
結子は譲と一緒にいて凄く楽しかったと思う。
でも・・・余計な気持ちを抱いて、余計な言葉を伝えてごめんね!!
“私”に代わりに謝らせて!!」



そう伝え、“私”は右手を強く握り締めたまま譲に背中を向けて歩き始めた。



“翔子”だけど、本当は“結子”である自分の口から伝えることが出来てよかったと思いながら。
これでやっと綺麗に初恋を終らせられると思いながら。



家に帰ったら“結子”に伝えて、“結子”の初恋を綺麗に終わらせることが出来る。



忘れることにしよう・・・。



なかったことにしよう・・・。



告白を忘れると言ってくれていた。
“結子”の気持ちをこの右手に返して貰うことも出来た。



“涙担当”というよく分からない担当ではあるけれど、それでもあの人が“結子”の存在を認めてくれるのなら。



永家結子ではなくて“結子”としての存在を認めてくれるのなら。



“涙担当”の友達として、あの人の隣にいたいと思う。



二度と泣かないと決めたあの人の代わりに、あの人が泣きたい時に泣くくらいなら“結子”にだって出来るから。



何も出来ない“結子”だけどそれくらいだったら出来るから。



そう思いながら歩いていた時・・・



その時・・・



「待って。」



と・・・



譲に“私”の右手の手首を力強く握られた・・・。
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