【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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5月22日、翔子さんの双子の姉である結子さんの誕生日にお見合いは開かれた。
プレゼントはいらないと社長から言われたのでその言葉の通りに受け取り、手ぶらで向かった。



そして、目の前に座る人を見て笑いを堪えるのが大変で。



一体何を考えているのか、永家結子だと言って現れたその人はどこをどう見ても翔子さんだった。



清楚で上品なワンピースにヒールの靴、可愛くセットされた髪型、翔子さんの顔の造りに似合う化粧。
いつもの強い化粧ではなく翔子さんの顔の造りや今日の雰囲気には合っている化粧。
でもその心とあまりにもチグハグなその化粧と格好には笑いを堪えるのが大変だった。



“翔子さんの双子の姉である結子さんとお見合いをしにきたのにな。”



翔子さんには長い付き合いの彼氏がいる。
普通の人ではないという彼氏が。



浮気も不倫もご法度なので、今日ここで中身は翔子さんの結子さんとお見合いをしても何の意味もない。



翔子さんとお高いフランス料理を上品に食べ、全くの別人になっている翔子さんと普段しないような会話をし、あの翔子さんがこんなことをしていると考えるとやっぱり笑いを堪えるのが大変だった。



でも、思い出すことは1つで。



“生まれた時からずっと私の隣にいた。
ドレスを着て可愛くて歩きにくい靴を履いて、可愛い髪型でいつも私の隣にいた。
私が守らないと、結子を。”



“私はスニーカーを履いて結子を守らないと。
結子は永家の本家の長女。
だからいつだってドレスを着ているの。
あの子はそうやって生まれてきてしまった。
永家の“家”に、ドレスを着て生まれてきてしまった。”



いつか聞いた翔子さんの言葉を思い出す。
双子の姉の結子さんの為に永家ホールディングスの代表取締役にまでなろうとしている翔子さんの言葉を。



「翔子さんは強くて逞しい女性ですよね。
結子さんに強くて逞しいお相手が出来れば、翔子さんは永家財閥の本家の次女として自由になれるものなんですか?」



「翔子は私を守る為に生まれてきたの。
私を守る為だけに育てられてきたの。
だから自由になることはないかな。
うちは特殊な家だから・・・。」



翔子さんである結子さんが困った顔で笑っている。
そんな悲しいだけの言葉を本当は翔子さんであるこの人が言っている。



胸が苦しくなりながら言った。



「もう1度お会いすることは出来ますか?
それからお返事をしたいです。」
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