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「そっか、それは残念だけど、結子さんがそう決めたなら俺はそのワガママを叶えるよ。」
翔子のことだけを考えながら、初めて見た翔子の泣き顔を思い浮かべながら、私は一夜君に婚約を破棄したい旨を申し出た。
5月22日まで残り数日。
絶対に渋られると覚悟をしていたけれど、一夜君は残念そうな顔をしながらも優しい笑顔で笑ってくれている。
「本当にごめんなさい・・・。」
「約束したからいいんだよ。
灰色でも真っ黒でもどんなワガママでも叶えるって、俺言ったよね?」
その言葉を伝えていたのは“結子”になっていた“翔子”にだけど、一夜君も増田君も確かにそう言ってくれていた。
だから翔子も私も「灰色でも真っ黒でもワガママを言っていいらしいから、言ってみよう」と思えた。
一夜君の優しい笑顔を見上げながら私は微笑み返し、右手の指先で左手の薬指に触れた。
もうなくなってしまった増田君からの婚約指輪。
“結子”にくれたわけではなかったけれど。
でも、私は増田君から婚約指輪をはめて貰った。
その婚約指輪をつけて数日間だけ増田君の彼女として振る舞っていた。
“結子”ではなく“翔子”としてだったけれど。
灰色の景色の中、婚約指輪まで漆黒に塗り潰されたように見えていたけれど、それでも私にとってはずっと忘れることはない感覚。
この薬指には、増田君から貰った指輪があった。
今頃翔子がその指輪を返しているだろうけど・・・。
長い期間ずっと騙し続けていた増田君のことを思うと、増田君の代わりに涙を流しそうになってしまう。
でも、私にとってこの世界で1番大切なのは翔子で。
1番大切で、1番特別で、好きで好きで大好きで、この汚い世界の中で1番綺麗なモノは翔子で。
私は翔子を守りたい。
私は翔子のことを幸せにしたい。
「弱者でいるのはもうやめる。
永家の“家”が何を言おうと、どんな力を使おうと、私は私が守りたいと思うものを守って、幸せにしたいと思うものを幸せにしてみせる。」
翔子のことだけを考えながら、初めて見た翔子の泣き顔を思い浮かべながら、私は一夜君に婚約を破棄したい旨を申し出た。
5月22日まで残り数日。
絶対に渋られると覚悟をしていたけれど、一夜君は残念そうな顔をしながらも優しい笑顔で笑ってくれている。
「本当にごめんなさい・・・。」
「約束したからいいんだよ。
灰色でも真っ黒でもどんなワガママでも叶えるって、俺言ったよね?」
その言葉を伝えていたのは“結子”になっていた“翔子”にだけど、一夜君も増田君も確かにそう言ってくれていた。
だから翔子も私も「灰色でも真っ黒でもワガママを言っていいらしいから、言ってみよう」と思えた。
一夜君の優しい笑顔を見上げながら私は微笑み返し、右手の指先で左手の薬指に触れた。
もうなくなってしまった増田君からの婚約指輪。
“結子”にくれたわけではなかったけれど。
でも、私は増田君から婚約指輪をはめて貰った。
その婚約指輪をつけて数日間だけ増田君の彼女として振る舞っていた。
“結子”ではなく“翔子”としてだったけれど。
灰色の景色の中、婚約指輪まで漆黒に塗り潰されたように見えていたけれど、それでも私にとってはずっと忘れることはない感覚。
この薬指には、増田君から貰った指輪があった。
今頃翔子がその指輪を返しているだろうけど・・・。
長い期間ずっと騙し続けていた増田君のことを思うと、増田君の代わりに涙を流しそうになってしまう。
でも、私にとってこの世界で1番大切なのは翔子で。
1番大切で、1番特別で、好きで好きで大好きで、この汚い世界の中で1番綺麗なモノは翔子で。
私は翔子を守りたい。
私は翔子のことを幸せにしたい。
「弱者でいるのはもうやめる。
永家の“家”が何を言おうと、どんな力を使おうと、私は私が守りたいと思うものを守って、幸せにしたいと思うものを幸せにしてみせる。」
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