【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「何でって言われても・・・あれ?和のお父さんから俺のこと聞いてないっすか?」



「的場からもこいつらの父親からも聞いてる!!
和の“もう1人”になれる男だと報告を受けてる!!
それが何を考えてるんだ、お前は!!
的場製菓をもう1つの財閥に売るなんて何をしたか分かってるのか!?」



おじいちゃんの叫びに私は驚くしかない。
だって、おじいちゃんは和のお父さんからも私のお父さんからもそれしか聞いていないらしいから。



「親族だからって気を抜き過ぎだろ!!
永家のじいさんもだいぶポンコツになってきたな!!」



「な・・・っ!?じいさん!?ポンコツ!?
お前誰に物を言っているのか分かってるのか!?」



おじいちゃんが顔を真っ赤にし、怒りの感情を剥き出しにして増田君に叫んでいる。



そんなおじいちゃんの発言に私は少しだけ焦る。



そしたら、私に手を重ねていた増田君の右手に力が入った。
慌てながら増田君を見ると・・・



増田君は無機質な表情になり、重すぎる空気を出した・・・。



“存在感がない”



いつか聞いた翔子の言葉を思い浮かべながら、増田君の右手が私の胸の真ん中も契約書も私の両手も押さえてくれているのを感じながら、増田君が解放した初めてのここまでの圧に身を任せることにする。



そして、増田君が空気を少しだけ多めに吸い込んだのを感じ取り・・・



「じいさんこそ俺が誰だか分かってるのかよ?」



増田君がそう言って、何も言えないでいるおじいちゃんに続ける。



「この前は“譲”とだけ言ったけどな、俺のフルネームは増田譲。
永家と藤岡、そしてもう1つの財閥である増田財閥の本家の長男だぞ?」



そう言ってからおじいちゃんの目の前に何かの紙を無造作に置いた。
パッと見ただけだけど、それは会社の登記事項全部証明書なのだと分かった。



「そして、増田ホールディングスのもう1人の代表取締役としても就任した。
俺も増田ホールディングスの代表取締役に就任して、父親とのダブル代表になった。」



増田君がそう言った・・・。



私の誕生日プレゼントとして渡してくれたこの契約書。
そこの最後のページには社判が押されていた。
その社判の会社名、増田ホールディングスの下には代表取締役の名前が・・・。
そこには増田君のお父さんの名前ではなく“代表取締役 増田 譲”と書かれていた・・・。
そして、その隣には増田ホールディングスの実印が押されていた・・・。



永家財閥と藤岡財閥、そしてもう1つの財閥である増田財閥の本家の長男。
和の“もう1人”という表現を和の両親はしているけれど、和の“もう1人”どころかずっと上でしかないような増田君。



でも、永家の“家”の孫は男が和だけで。
和は永家の“家”にとってはとても大切な存在でもあるはずで。



そんな永家の“家”の唯一の男の孫である和、確かに“永家”の“もう1人”になれる男は増田君という表現でもおかしくはない。



永家と肩を並べられるもう1つの財閥は、増田なのだから・・・。






結子side.........
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