【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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28歳になる年、5月22日



仕事から帰り自分の部屋に入ってすぐ“一夜”の一升瓶を持ち上げた。
今日は結子が有給休暇を取り会社を休んだ。
そして数日前に決まった婚約者候補の男とのお見合いに行った。



遂に出てきた。
結子の新しい婚約者候補が遂に出てきた。



「これはタイミングが来ただろ・・・。」



“そろそろタイミングだ”
そう思う度にフワフワと国光さんが現れて「まだタイミングが来てないね。」そう言われていた。



でも今日の帰り道、バッタリと同じ電車に乗っていて・・・



「タイミングが来るみたいだよ。
ところで何のタイミングを待ってるの?」



そんなことをフワフワと笑いながら聞いてきた。



タイミングが来た。



やっと、タイミングが来た。



どんどん興奮してくる中で持ち上げた“一夜”の一升瓶を眺めていた時、スマホが鳴った。



空いている手でスマホを確認すると、珍しいことに翔子からの電話だった。
中身が結子なのか翔子なのかは分からないけれど出てみる。



「どうしたんだよ、珍しいな。」



『次の日曜日空いてる?』



「空けられるけど、お前仕事だろ?」



『有休取る。
一緒に付き合って欲しいんだけど。』



めちゃくちゃ珍しいことを言ってくるのでそれには素直に驚いた。



「別にいいけど、どこに?」



『結子の2回目のお見合いに。』



それを聞き俺は乾いた笑い声が口から漏れた。



「何で俺までそんなのに付き合うんだよ。」



『2回目は私と譲も一緒にって。
ダブルデートをしたいらしいよ?』



「何がダブルデートだよ。
2回目のお見合いってことはお互いにまだ返事してねーんだろ?」



『向こうはもう1度会ってから返事したいって言ってる。
今回の相手は絶対に逃したくない。
結子にもそう助言してる。』



「そんな助言するなよ、結子は乗り気じゃねーだろ?」



『乗り気じゃなくても仕方ないじゃん。
永家の本家の長女として生まれ落ちたんだから。
でも今回の相手はこれ以上にない相手だから。』



翔子がこんなにも力強く男について話すことは滅多にない。
翔子みたいな女が認める男なのだと分かり、死ぬほど怖くなってきた。



「どんな奴だったか聞いたのかよ?」



思わず聞いた俺に翔子が答えた。



『私が教育担当をしてた新卒の男の子。
1人だけを担当してた時の後輩。』
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