【完】好き好き大好きの嘘

Bu-cha

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「強大な力を持ちすぎてるからな、あの家は。
全てが自分の思い通りになっていると思ってやがる、子ども達も含めて全てが。
だからあのじいさんに一泡も二泡も吹かせる。」



「そんなこと出来ますかね・・・?」



そんなことを聞いてきた一夜には大笑いをした。



「俺を誰だと思ってるんだよ。
もう誰にも何も取られない為にガキの頃からそれだけの為に生きてきた。
自分の力だけで上にいく為だけに生きてきた。
家が潰れた時になくなる力じゃなくて、俺自身に力があるように。
俺はもう何も譲るつもりはねーよ、結子のことも“ゆきのうえ商店街”のことも。」



そう言ってからポケットに両手を入れて、竜さんと同じように立った。
竜さんが本気を出す時に無意識に出てしまう不良の時の姿で。



「いくぞ、一夜。
歩くでもなく泳ぐでもなく翔るでもない。
強大な家の“主”に必要な力とやり方を教えてやるよ。」



俺の言葉に一夜は良い笑顔で笑い返してきた。
その笑顔はオババせんぱいとも似ているけれど、どことなく竜さんの面影もしっかりとある。



「了解です、ユズさんは普通の方ではないですからね。」



そんな返事をした一夜と並び、俺達は喫煙所をゆっくりと出た。



その瞬間・・・



“お前がぶっ殺したいと強く思った時には、割れることなくそいつをぶっ殺せるくらい強い男に育ててる。
だから持っていけ、“一夜”を持っていけ。”



“ゆきのうえ商店街”を去った日に聞いた竜さんの声がこの胸に響いてきた。



そして、俺の部屋の中に置いてある“一夜”と“譲”の一升瓶。
毎日毎日見ていたその2本が並んでいる光景。
それが自然と思い浮かんだ。



“ぶっ殺してこい、ユズ。”



竜さんの言葉がこの胸に響く。



“了解です。”



心の中で“あの日”の“ゆきのうえ商店街”のみんなに返事をした。
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