【完】可哀想な皇太子殿下と没落ヒヒンソウ聖女は血の刻印で結ばれる

Bu-cha

文字の大きさ
116 / 168
6

6-19

しおりを挟む
「・・・っ・・・っっ」



ユンス12体くらいだったら1人でも余裕で倒せるはずで。
いつもなら余裕で倒せる。



なのに・・・



「お前ら・・・!!
知能が高過ぎだろ・・・!!」



7体殺し、残りは5体。
俺の動きを学習しているような戦い方までし始め、更にはその5体で連携を取っている。



致命傷にはなっていないけれど、俺の身体にもユンスの長くて太い腕で切り付けられた傷が増えていく。



遠くでエリーが威嚇している声が聞こえるけれど、威嚇しているだけで。



「エリー!!!
瞬間移動が出来るんだからお前も戦えよ!!!
皇子である俺の魔獣なんだろ!!?」



そう叫んでも、エリーはやっぱり威嚇しているだけ。



それには大笑いをしながらもユンスを1体倒し、また1体倒し・・・



残り、3体。



荒い呼吸を繰り返しながら3体のユンスと向き合う。
ユンスは3体とも王都を目指す様子もなく、俺の殺意が強いからか、それとも俺がここにいる人間の中で1番強いからか、俺の前からいなくならない。
やっばり俺は魔獣からはモテる。



そんなことを考えながら、また伸びてきた髪の毛が風でなびいていくのを感じながら剣を構えた。



俺のこの黒い髪の毛を切る時、ルルは怖くなかったのかな・・・。



戦いの最中にそんなことまで考えてしまい、痺れるように震えてくる両手や足の筋肉を実感する。



俺が1体を攻撃しようとする度に他のユンスが俺の隙を狙ってきて、俺の身体も神経も磨り減り続けていた。



まだ10歳の自分がどうしようもなく嫌だった。
チチもルルも俺が10歳なことが良いモノのように喋っていたけれど、俺はもっとルルと近い歳が良かった。



そしたらもっと大きな背中を持てていて、何かが変わっていたかもしれないのに。



少しだけでも、ルルが見る俺の“何か”が変わっていたかもしれないのに。



そんな気持ちもユンスにぶつけながら、2体のユンスを倒した。



「ハァッ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・」



残り1体・・・。



他の個体に指揮のようなものを取っていたユンス。
12体のユンスの中でも一回りは大きく、腕の長さも太さも今まで見たユンスの中で1番だった。



「お前ら、何なんだよ・・・。
何で王都を目指すんだよ・・・。」



第1騎士団が“死の森”の番人になる前から魔獣は王都を目指していたと記録されている。
そして第1騎士団が“死の森”の番人になってからも魔獣達のその行動は変わらなかったらしい。



今よりも騎士団の統制が取れていなかった時代は何度も王都へ魔獣を通してしまう事態があったらしい。



チチから教わったそのことを思い出しながら、剣の柄を握る右手に何も力が入らないことに気付く。
右手の上にほぼ力が入っていない左手も重ね、傷1つない、疲れている様子もないユンスと向き合う。



「村には入れさせない・・・。
こんなに知能も高く身体も大きな魔獣を絶対に入れさせない・・・。
俺は厄災ではない・・・。
俺は厄災ではないはずだから・・・」



俺はルルと結婚出来る・・・。



きっと、結婚出来る・・・。



王宮へは行かずにずっとインソルドの村にいて、ルルに俺のことを男として愛して貰って、そしたら子作りだって出来る・・・。



「俺はインソルドで1番強い男になる・・・。
必ずなるから・・・。
それを証明して、俺はインソルドにずっといる・・・。」



そう呟き、感覚のなくなってきている両足を動かし、力が入らないはずの両手を強く強く握り、剣を振り上げた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

私は愛されていなかった幼妻だとわかっていました

ララ愛
恋愛
ミリアは両親を亡くし侯爵の祖父に育てられたが祖父の紹介で伯爵のクリオに嫁ぐことになった。 ミリアにとって彼は初恋の男性で一目惚れだったがクリオには侯爵に弱みを握られての政略結婚だった。 それを知らないミリアと知っているだろうと冷めた目で見るクリオのすれ違いの結婚生活は誤解と疑惑の 始まりでしかなかった。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

処理中です...