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その日の夜・・・



リビングに隣接している畳の部屋で布団で寝ていると、玄関が開く音が聞こえた。
時計を見てみると夜12時を回っている。



理子は豊の家で寝ているだろうし、光一の方かなと思い・・・起き上がることなくそのまま目を閉じた。



そしたら、足音がリビングに入ってきたのが分かり・・・



「・・・寝てる?」



「寝てる。」



私が答えると、光一が笑った。



「お帰りなさい。
仕事本当に大変そうだよね。」



「ただいま。
でも、すげー楽しい。」



「・・・これまで、苦しかった?
ごめんね・・・私、光一にとって“お母さん”になれなかったんだろうね・・・。
だから、セックスなんて私と出来ちゃうんだよ・・・。」



私がそう言うと、光一がドカッと目の前に胡座をかいて座った。
暗い部屋の中、大きなシルエットだけが見える。



そのシルエットが喋る。



私に、喋る。



「桃子だって、俺を息子だなんて思ってないだろ?」



そう、喋る・・・。
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