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冬・・・



「鮫島君・・・。」



今日も学校で茶色いノートと赤い鉛筆を持った岩渕が俺についてくる。
休み時間になる度に、俺につきまとってくる。



「もう、やめろよ・・・!!!
なんなんだよ!!!
何回言えば分かるんだよ!?
絶対に教えねーから、一生言ってくるなよ!!!」



「教えてよ・・・。
鮫島君の妹のお母さんのこと、教えてよ・・・。」



「俺の母親だろ!?」



「鮫島君のお母さんは・・・現実世界にいる、あの人だけだから・・・。」



ここ数日、岩渕が俺から母親のことを聞き出そうとしてくる。
“鮫島君の妹のお母さん”と言って、死んだ奴らのことを聞き出そうとしてくる。



「そうだよ!!!
俺の母ちゃんは桃子だけだよ!!!
理子の母ちゃんも桃子だけだよ!!!
死んだ奴らなんて知るかよ!!!」



そう叫び、廊下で岩渕を睨み付ける。



「母ちゃんにも聞くなよ!?
死んだ奴らのことなんて、母ちゃんにも聞くなよ!?
絶対にやめろよ!?」



俺の叫びに何も答えず、岩渕は真っ直ぐと俺のことを見てくる。



余計なこと頼みやがって、理子の奴・・・。
こういう面倒な奴に、頼みやがって・・・。
ナヨナヨして男らしくなかったはずなのに、なんなんだよ、こいつ・・・。



俺がどんなに怒鳴っても、岩渕は俺のことを真っ直ぐと見詰め返してくる。
母ちゃんのことを渡に頼んでから、俺は岩渕に前よりも色々なことを指摘するようになった。



家族になるだろうから・・・。
きっと、岩渕と俺は家族になって・・・こいつが、兄貴になるかもしれないから・・・。



こんなナヨナヨとした男らしくない男が俺の兄貴だなんて認めたくなかった。



認めたくなかったのに・・・。



勉強だけしか出来ないような岩渕が、俺に睨み付けられているのにジッと俺と対峙してくる。



構えているわけでもなく、茶色いノートと赤い鉛筆を持っているだけなのに、渡と対峙しているような感覚になる。
強い奴と、対峙している時のような感覚になる。



そう思いながら、口を開く。



「岩渕!!!!なんとか言えよ!!!!」



母ちゃんに死んだ奴らのことを聞くことについて何も言わない岩渕に怒鳴った。



そしたら・・・



「サメ!!!やめなよ!!!!」



と、ま~た面倒臭い女の声が聞こえた。
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