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第九話 ルームシェアをしよう
しおりを挟む三者懇談の結果を、祥馬に話したところ、「その条件は自分に得しかない。優華ちゃんの手料理食べたい」と快諾され、予定を合わせて物件を探すことになった二人。
優華と祥馬の作業所や仕事の兼ね合いを見て、三件ピックアップされたところを内見して、当たり前だが二人は別々に寝る予定で、優華の作業所に程近い各部屋に鍵がある2LDKのところに決めた。
祥馬は正直自家用車があるので、遠方過ぎなければいいのだ。
まあ、遠方でも、優華が待っていると思えば頑張れるのだが。
内見からすぐ。
優華と祥馬はルームシェアを始めた。
お互い、元の家からの持ち込みが殆どなので、買い足すものは少なかったが、祥馬がどうしても食器をお揃いにしたいと言い出し、仔犬のようなあの目で見つめてくるので仕方なしにお揃いの食器を二人で買いに行った。
しっかりしている祥馬だが、優華の方が一歳年上だからか、どうしても年下ワンコ系男子になってしまうことがある。
それを可愛いと思ってしまうから、優華も優華だ。
「優華ちゃん」
「うん?」
「お揃いのネックレスが欲しい」
また、この顔。
いつもお揃い物は自分から催促していた優華は、また満たされる。
「……ええけど、そんなお金ないよ」
「ボクある」
「アトリエ持ちアパレル店長め」
元カレと別れて、一時男性不信になっていた優華だが、祥馬には少し軽口が叩けるようになった。
でも、やはり、本当に信じていいのかと、不安になる。
「あ、パワーストーンのやつにしよ。ボク、恋愛成就がいい」
「じゃあ、私は厄除け」
「な!ん!で!」
自分と同じものを身に付けさせることに必死なこの男が可愛くて仕方がない。
ああ、この人と永久に共にいれたらいいのに。
あわよくば、この人に看取られて死ねたらいいのに、なんて。
この男は、麻薬だ、と思った。
結局、祥馬に頼み込まれて、ローズクォーツという恋愛成就に効くというパワーストーンをペンダントトップにしたお揃いのネックレスをつけさせられた。
まあ、嫌な気はしないが、あの姉たちになんて言われるかが問題だ。
商業施設に買い物に行って、夕飯の買い物もして、今日はカレーとポテトサラダにすることになった。
シンクで祥馬が新品のカトラリー類を洗っている間に、優華が夕飯の支度を始めた。
「なぁ、優華ちゃん」
「なに~?」
「新婚みたいやな」
「な!?」
突然の祥馬の楽しそうな発言に、優華は顔が真っ赤になった。
「ああああああああああアホ言いなや!!」
「ボクの優華ちゃんは可愛いな~」
「まだあんたのちゃう!」
すると、翔馬は意地悪な顔をした。
「まだか。見とき。すぐにボクにメロメロにしたるから」
「……あほ」
まさか言えない。
もう、引き返せないほどに惹かれているなんて。
でも、素直になれないのは、幸せの後の孤独ほど、つらいものはないから。
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