unseen hero 〜魔法が使えない異能者と魔術師の戦いに目の見えない魔術師が戦いに終止符を打つ話。

雷出午吉

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第一章 運命

第一話 対峙

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この世界は、二つに分断されている状況下にある。
1つ目はここ、魔術師のみが暮らしている国。
ソーサーズ。
2つ目はここから離れたところにある。
ケイパブル。
そこは国というよりも「組織」という表現の方が正しいのかもしれない。
ケイパブルには魔術師がいない。
全員が能力を持った異能力者であり、能力一つで戦う。
異能力者はかなり強く、簡単な魔法では太刀打ち出来ないだろう。
その組織は反社会勢力の者が多く、ソーサーズを毛嫌いする輩で集まっている。
その為、国同士の境目は勿論のこと。
一見平和そうな場所ですら戦いが勃発することがある。
・・・私はというと、まぁ言わなくてももうじき分かるだろう。
何せ、私は怨みを持っているからね。

                         ※※※

「あぁ~あ、情報が少なすぎるよぉ~」
私は、この近辺に敵がいることを耳にしたため、探索をしていた。
敵は、そう・・・ケイパブルだ。
数刻前。
ここらでケイパブルの襲撃があったらしい。
言われた通り、ここには能力値の痕跡が微量に残っている。
わざわざ痕跡を残すだなんて、それほど余裕がなかったのか?
それか、別の目的が?
考えても無駄だろう。
取り敢えずは痕跡を辿って追跡をするだけ。
この先を歩いていくと、何時しかたどり着くだろう。
そう思い、痕跡を辿って歩いていく。
少し歩いた先は、やけに静かな場所だった。
襲撃が要因なのだろうか?
疑問に思った時だった。
「・・・お前は、ソーサーズの差金か?」
「・・・ん?」
眼前にはケイパブルの連中とおそらく襲撃の主犯であろう人物がいた。
そこで、私は瞬時に察した。
そこまで強くない能力値。
「君は・・・下っ端かな?」
「確かに俺は下っ端だが、舐めない方が身のためだぜ?最近は俺らケイパブルの質も上がってきているんだ。」
「・・・それは良い情報だね。」
「あんたみたいに目が見えないやつなんかに・・・俺は負けねぇんだよ。」
「どうだかねぇ。無理だと思うけど。」
「その生意気な口を黙らせてもらうぜ!」
その言葉を発した瞬間、奴は瞬く間に距離を詰める。
恐らく身体強化の異能だろう。
異能力者の異能は、基本的に私たちが使う中級魔法と同等かそれ以上。
人によっては、上級魔法を超える場合があるらしい。
私は、この相手の異能力を中級程度だと感じた瞬間。
相手は思い切り振りかぶって、打拳を私の顔面目掛けて放ってくる。
「遅い。」
私は顔を右に傾け、打拳を回避する。
「何!?」
そのまま相手の腕を両手で掴み、自身に強化魔法をかけて背負い投げを繰り出す。
相手は自身の攻撃をかわされたことに脳が追いついていなかったのか、何の抵抗もせずに地面に打ちつけられる。
「カハッ」
相手は呼吸器官にかなりの衝撃を伴ったせいか、苦しそうに顔を歪ませて咳き込んでいる。
私はそんなことお構いなしに、相手に声をかける。
「君は前提を間違えている。」
相手は「は?」と、心の底からの疑問を私にぶつける。
私は言葉を紡ぎ続ける。
「一つ目は、私は君より強いということ。調子に乗っていたのかな?出端を挫かれて可哀想だね。」
相手は悔しそうに歯軋りをする。
そして、私は相手にこう言い放つ。
「二つ目は、君は目が見えてないと言ったけど。私は・・・しっかりと『見えている』よ。」
「・・・!?」

       ※※※
「・・・」
地面にみっともなく倒れた下っ端。
・・・既に息を引き取っている。
まぁ、バラバラにされたから呼吸の有無とかいう以前の問題だろう。
私をお手頃な魔術師と勘違いしたのだろう。
随分と舐めた態度を取ってきたし。
相手の力量を図ろうともせずに。
もしかしたら、私から逃れてたかもしれないというのに。
勿体無いったらありゃしない。
私は、この場から去ろうとする。
まだまだケイパブルの連中の気配がするからだ。
私は連中の気配がする方へと足を運ぼうとする。
「あの、貴方ってウォーロックの方ですか!?」
突然、路地裏に隠れていたのか。
1人の女性がこちらにそう問いかけてくる。
「・・・」
ウォーロックとは、魔術師の中でも高ランク帯の者たちのことを指す。
人並外れた魔力、さまざまな魔法を使用出来る汎用性。
簡単な話、戦闘面での能力が高い者達がそのウォーロックに分類されるのだ。
私も、一応そのウォーロックに分類される。
「そうだけど、何か用があるのかな?」
「え、えっとぉ・・・その・・・!ソーサーズの方が救助に来てくれたのかと思って・・・!」
目の前の女性はそのように言ってきた。
「まぁ・・・結果的にはそうなるんだろうけど・・・一つだけ間違えているね。」
「・・・え?」
「私はソーサーズの者じゃない。」
「え・・・じゃ、じゃあ・・・貴方は・・・!?」
女性は他にも何か言いたげな感じだったが、言い寄られても面倒だった為、その場を立ち去ろうと歩を進めていく。
私に対して何か言っていたかもしれないが、私は先ほどの彼女の言葉には微塵も耳を傾けなかった為、何を言っていたのかは分からない。
まぁ大体想像つくけど。
私は次の目的地へと向かって行く。
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