勇者学園とスライム魔王 ~ 勇者になりたい僕と魔王になった君と ~【最終章投稿中】

冒人間

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第12章

第11話 僕達とマーナ山

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 《 - 翌朝 - 》

「さぁてッッッ!!!
 よく眠れたかッッッ!!
 誇り高き勇者達よッッッ!!!
『ヴァール』の未来はこの光輝く朝日の如くッッッ―――」

「うーん、朝からこのノリは中々に胃が持たれるなぁ」

「―――ぅぅぅぅ………
 まるでギットギトの油料理みたいな奴だって言われた……」

「フィル、お前実は割と楽しんでるだろ」

 ヴィガーさんの鋭い指摘から目を逸らしつつ――
 僕は改めて今日から行われる活動を思い、一夜明けた『レスピレーティア』の朝日を前に気合を入れ直すのであった。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「それでは昨日話した通り、本日は『ドワーフ』達が住んでいる鉱脈まで君達を案内しよう」

 気を取り直したウェルラング様は僕達の前に立ちながらそう話し始めた。

「『マーナ山』の麓までは馬車で行けるが山道に入ると徒歩で移動してもらうことになる。
 結構険しい道のりになるから注意して欲しい。
 それでは早速―――」

「あ、あの!
 ちょっといいですか!」

 僕達が泊まった宿泊施設の前に用意された複数台の馬車へ乗り込もうとするウェルラング様を見て、僕は思わず声をかけていた。

「ウェルラング様……もしかして貴方が直接案内をしてくれるんですか?」

 この国の第3王子……言うまでもなく飛んでもなく偉い人だ。
 そんな身分の人が僕達の為に自ら険しい山まで案内だなんて……

「ああ、そういえば言ってなかったな。
 これも契約の内の一つでね。
『ドワーフ』達と交渉など話し合いを行う場合は必ず私自ら出向くことになっているんだ」
「ええっ!」

 こともなげにそんなことを言うウェルラング様に対し、僕は驚きの声を上げる。

「ただでさえ過酷な環境のこの地で、更に危険を伴う鉱脈の採掘までして貰っているんだ。
 これくらいの誠意は見せないといけないとね」
「はぇぇ……!」

 僕は思わず感嘆の溜息を漏らしてしまう。
 ちょっとアレな部分もあるけど……やっぱりこの人は凄い立派な人だ……

「まあ、彼らと会う度に『あのノリ』が始まるのでぶっちゃけ『ドワーフ』達は辟易している節があるのですけれどね」
「……………」

 片眼鏡の側近さんがぼそりと呟いた容赦のない指摘に僕はまた何とも言えない気持ちになってしまうのだった……

「それじゃあ皆が『マーナ山』に向かっている間、私は『レスピレーティア』周辺の警戒作業にあたってくるわ」

 と、ウィデーレさんは僕達へ一言声をかけると街の外へ向かって歩を進めようとし―――

「あ、そうそう」

 途中でピタリと足を止め、僕達に振り向いた。


「まだ言ってなかったことがあったわね。
 これから貴方達に行ってもらう『ドワーフ』達の集落だけど、そこには―――」


 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 《 マーナ山・山道入口 》

 馬車に揺られ数十分……僕達は大陸最北端の街『レスピレーティア』より更に北にある『マーナ山』の麓まで来ていた。

 街から見えていた時点でとても大きい山であることは分かっていたけど……近くまで来たことによりそのスケールがより鮮明になった。
 間違いなく標高は数千メートルに達しているであろうこの山をこれから登らなければならないのか……
 僕だけでなく生徒達全員が思わず顔をゆがめてしまっていた。

「そこまで深刻にならなくて大丈夫だよ。
 別に山頂まで登ろうという訳でもないのだからね。
 件の『ドワーフ』達が居る坑道の入口まではここから約1時間といった所だ」

 と、ウェルラング様からかけられた言葉に僕達は少しばかり表情が和らぎ――

「とはいえ、途中で急斜面などがあったりそれなりに険しい道のりにはなりますので、皆さん決して油断なされないように。
 そして何より、貴方達がここへ呼ばれた理由……魔物の襲撃にも十分ご注意を」

 と、すかさずメアリーさんからかけられた警告に再び表情を固くする僕達……

「あの、ところで……これからそんな所に行くのにウェルラング様の傍にいるのが僕達以外ではメアリーさんだけなのって……大丈夫なんでしょうか……?」

 そう……今、ウェルラングの傍にいるのは側近のメアリーさんただ一人だ。
 僕はてっきり彼の身を警護するべく何人も兵士さんが着いてくるものとばかり思っていたのだけど……

「ご心配なく。
 メアリーは『上級魔法師』だよ。
 この地域で屈指の実力者さ」
「『上級魔法師』……!
 メアリーさんが……!」

 僕は思わず目をむいてメアリーさんを見つめた。

「とは言っても私が使える魔法は防御魔法や補助魔法といったものが主でして、ウェルラング様の身を守ることに偏重しておりますがね。
 直接的な戦闘能力は皆さんに劣るものと思って頂ければ」

 メアリーさんは片眼鏡を抑えながら恭しくそう述べるのだった。

「と、いった所でッッ!!
 早速君達を『ドワーフ』達の元へ案内しよう!!
 さあッッ! 私の元をしっかり付いてきたまえッッ!!」

 そんなウェルラング様の勇ましい号令によって、僕達は『マーナ山』を登り始めるのだった。

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 《 - 数十分後 - 》

「ぜぇぇぇ……はぁぁぁぁ……!」
 め、メアリぃぃぃ………!
 ほ、補助魔法をぉぉぉぉ………!」
「言っておきますがウェルラング様が例のノリで無駄に喧しく先導しようとした結果ですからね」

 息絶え絶えになっているウェルラング様と彼に冷めた目で体力補助魔法をかけるメアリーさんの姿がそこにはあった……

「ふぅ……側近さんが言ってた通り……
 結構険しい道のりだな、ここは」
「ああ……けど、意外なのは……」

「よっ……と!」

 僕は急勾配の道を跳ねるように駆け上がる。
 そしてそんな僕をミルキィさんとヴィガーさんが後ろから見上げていた。

「おいフィル!
 お前そんなに飛ばして大丈夫なのかよ!」
「そんな風に動けるのって、例の質量操作魔法のおかげなんだろうけどよ!
 それ使うと結局身体に負担が掛かるんだろ!?」

 少し先の方へと進んだ僕に対しミルキィさん達が心配の声をかける。
 まあ、普段の訓練ですぐにぶっ倒れる僕のことを知っているのだからそれも当然だ。

「あれから魔法の出力をもっと細かく調整出来るようになったんです!
 今使ってるのは《3/4スリークォーター》で、これなら身体への負担も少なくて数十分ぐらいはもたせることが出来るんです!」

 おかげで今は戦闘時だけでなく、こうして普段の行動を楽にする用途として使うことも出来るようになっていたのだった。
 まあ、それでもあまり長時間使い続けると使用後にドカッと疲労が襲ってくるから油断は禁物なんだけど。

「ふふっ……貴方も日々成長しているということですわね、フィル。
 ライバルとして誇らしいですわ」
「アリーチェさん……!
 ありがとうございます!」

 隣にいるアリーチェさんからのお褒めの言葉に僕は笑顔でお礼を述べる。

 ……ちなみにそのアリーチェさんはファーティラさん達にまるでお神輿のように車椅子ごと掲げられて移動をしていた……
 いやまあこの急斜面の多い山道を車椅子で移動するのは困難だろうし、例の『アーティフィシャルフラワー・モード』は内蔵魔力の消費が激しいのでホイホイ使えないって話だし……
 ミルキィさんやヴィガーさん他生徒達から何か言いたげな目線を送られながらもまるで気にしていない風なのは流石というべきか……

「キュルルさん、アナタもフィルの成長を――――?」

 アリーチェさんが僕の反対側にいるキュルルへと話をかけようとし……途中でその言葉を止めた。
 どうしたのかと、僕もキュルルへと目を向けると―――

「………………………」

「――?
 キュルル?」

 キュルルは――心ここにあらずという風に、虚空を見つめたままボーっとしていた。
 その様子は……以前、彼女が『変な夢を見た』と言っていた時を彷彿とさせた。

「キュルル!」

「きゅるっ!?」

 僕が強めに呼びかけるとキュルルは我に返ったようだった。

「キュルル……どうかしたの?」
「きゅる………」

 キュルルは寝ぼけていたかのように片手で頭を抑えていた。

「なんかね……この山に来た時から……
 ボク、なんか変な感じがするの……」
「変な感じ……?」

「うん……なんて言うか………」

 キュルルは―――ぽつりと呟く。

「ボクがボクでないような……そんな感じ……」

「えっ……?」

 それって、どういう――?

「おいお前ら!!
 魔物が出やがったぞ!!
『ハーピィ』の群れだ!!」
「上から来るぞ!!
 足場にも気を付けろ!!」

「「「キシャアアアアアッッ!!!」」」

「―――っ!!」

 僕がキュルルの言葉をより詳しく聞こうとしたタイミングで―――魔物の襲撃が!
 ミルキィさんとヴィガーさんの警告……そして甲高い『ハーピィ』の声に生徒達がすぐさま反応する!

「メアリー!!」
「ウェルラング様の身は私が!
 皆様! どうかお願い致します!!」

 続けて、側近の名を呼ぶウェルラング様と即座に防御魔法の構えを見せるメアリーさんの声が聞こえ――!

「きゅるっ!」
「フィル!
 話は後ですわ!」

 キュルルとアリーチェさんも同じく迎撃態勢に入る!
 キュルルの言葉は気になるけど―――今は!

「《キッチンナイフ》!!
規格スタンダード2倍ダブル』!!」

 2倍の『黒い包丁』を構え―――僕は上空へと目を向けるのだった!
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