異世界転生がテンプレで何が悪い!

氷雨 いぶき

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1 Yuuri

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「ゆうり、誕生日おめでとう!」
「もう16歳かぁ。彼氏なんか連れて来た日にゃ父さん泣いちゃうからな!」

と、いいつつすでに涙目の父を横目に私は、16本のろうそくの揺れる炎に強く息を吹きかけた。






申し遅れました私、水樹ゆうりと申します!ただ今幸せ絶頂です!

高校生活は楽しいし、両親の仲もいいし、来月子猫を迎える予定だし、なにより来週には妹が生まれます。

あぁ~、幸せ。

「………ねぇ、ちょっと。聞いてる?」

「あ、うん。ごめんなんて?」

「聞いてないじゃん!」

そう膨れるリカとはもう長い。

たしか小学五年生の時からの付き合いだ。

「だからねー、駅前にサーティオンができたらしいのよ。今度いこーね!」

「ホント?あぁでも今ダイエット中………」

「来週行くからそれまで帳尻合わせに走ったりすればいいじゃない?」

「うーん………そうする……」

リカはバレー部で、運動しまくっているのでどれだけ食べても太らない。

太りたい、などと言っていた日には右手が思わず疼いた。

「あっ、猫!」

薄暗い帰り道をサッと猫が横切った。

トクン。

心臓が………なんで今?

「………追いかけよ、なんか嫌な感じする」

私のカンはよく当たる。

それだけにリカも不審がらずについて来てくれた。

案の定、猫は車の往来も激しい大通りに躊躇なく飛び出した。

「ちょ、そっちは車道………!」

リカの声を私は後ろで聞いた。

「え、ゆうり!?」

車は行き交う。行き交う。
止まらない、止まれない。


トクン。

また心臓が振れる。

「届け………っ!」

こんなことしなきゃいいのに。

来月猫を迎える予定だから、とかそんなことは関係ないいや関係ある。

「もう………ちょい!」

あぁもう。こんな性格に作った両親、恨むよ。

「届………………いた!」




キキィーーーーーーーーーッ!


わだちがつくほどブレーキをかけた運転手は悪くない。

あー、ごめんね父さん母さん。


彼氏連れて行くより泣いちゃうかな、父さん。

薄れゆく意識、血に歪む視界の端にあわてて過ぎ去るネコ。

(あぁ………鈴つけてる。やっぱり飼い猫だった…………ね)

ちりん。

そこで私は死んだ












はずだった。

「………起きて、起きてユーリ。まったく………あなたのせいよバディ!?お酒なんか飲ませるから…!」

「そ、そんな。だってもう16歳だろユーリは?飲めんじゃんか」

「そんでもダメなの!誕生日のその日に飲ませるなんてありえないわ!」

意識が形作られていく。

私はだれ?__________私はユーリ。ユーリ・マルム

ここはどこ?__________ここはラゼンブルグの街。

『目を開けてユーリ。あなたは目を開けなければならないわ、なぜならそれがあなたである証明なのだから』

不思議な女性の声が響いて、意識は完全に覚醒する。

「…………っ!頭イタッ………」

不意に襲いくる頭痛、徐々にそれは収まりを見せる。

「ホラ見なさい!一気飲みなんかさせるから!」

「わ、わるかったよ………ごめんなユーリ」

布地の服に革のジャケットを着た茶髪の男がユーリを片手で拝む。

「気にしないでバディ。もう収まったから………それより私………は、ユーリ。だよね………??」

「なにいってるんだ?当たり前じゃないか、村一番のべっぴん…………はカレルだけどね。ユーリもべっぴんさんだ」

バディは妻の殺気を感じ取ったか、慌てて繕うように喋る。

私は赤ん坊の頃、街外れに捨てられていた。

それを拾って育ててくれたのが、この小さな街の優しい人たちだ。

「…………あ、あれ?どうしたんだろ………私。あはは、ごめんね。ちょっと……空気吸ってくる」

止める2人を尻目に、ユーリは硬い材木のドアを開けた。

春の優しい風がどこかからサクラの花弁を運んできて、ユーリにキスした。

「私は私だ。ユーリ・マルムだ。なにもおかしくなんかないはずなんだ。なのに、なんで…………!」

記憶は途切れることなく完璧に繋がる。だがそこに違和感がある。

なんとなく自分のものでないような、そんな異質な感覚。

「…………そうだ、街外れに賢者のおじいさんが住んでるんだ。行っちゃいけないって言われてるけど……今、行かなきゃいけない気がする」

なぜ賢者のおじいさんが住んでることを知っているのか、そしてなぜ行ってはいけないことを知っているのか。

それもそこで解決しよう。

大丈夫、きっとお酒のせいだ。









気味悪がってだれも近づかない洋館の蝶番を鳴らす。

不気味なほど音が響いて、留まっていたカラスが一斉に飛び立つ。

「はい」

驚くほど軽くドアが開いて、中から老人…………ではなく青年が現れる。

青い髪をかきあげてヘアバンドで留め、メガネの奥からは蒼い双眸がのぞく。

「なんの用ですか?」

気のせいか気だるそうな声だ。

「あ、あの…………え?おじいさん、が、住んでるん……じゃ?」

「あー、あのおじいさんね。亡くなられたと聞いてるよ。ボクでよけりゃ話聞くけど?」

気だるそうだがそれなりに面倒見はいいようである。

「じゃあ…………はい」

「カモミールティーがね、余ってるんだ」

青年は少しだけ嬉しそうにユーリを招き入れた。



立派、というより小綺麗な内装だった。

飾られた絵画を見る暇もなく客間へと通される。

「はい、どーぞ。パックでごめんね」

青年が人差し指をタクトのように振ると、たちまちカップに暖かな紅茶が湯気を立て始める。

「えっ、すごい。使魔法が使えるんですか?」

魔法は「マナ」を消費して様々ななことができる。
ものを浮かしたり、火を吹いたり。

だがそれは「杖」という媒体を使って、自分の中にある「潜在魔インナーマナ」と自然界にある「永久魔アウターマナ」を消費しなければならない。

杖を使わない、なんて聞いたことない。

「うん、まぁね。それより話してくれるかい?どうしてこんなトコに来たのか」

啜っていたお茶がやけに不味くなった。

「うん…………あの。信じてもらえるか分からないんですけど、記憶が………おかしいんです。なんか、違くて。その、うまく説明できないけどなんか違和感があるんです」

「フゥン。それで?」

「なんか、見てもらえないかなって」

「そうか。分かった、じゃあ見るけどボクを責めないでね?」

「え?」

「たまーに来るんだ、キミみたいな人」

それは…………私が精神異常者かもしれないと思ってるってこと?

泣きそうな心もつゆ知らず、青年はユーリに向かって手をかざし、目を瞑る。

「名前は?」

「ユーリ・マルム……」

「ふむ………」

しばらくすると、驚きの面持ちで青年は目を開けた。

「驚いたね。ユーリ、キミはユニークスキルを持っている」

「ぇえっ!?」

ユニークスキルは一部の人しか持たない、強力無比なスキルだ。

「その名も恒星眼ノヴァ・アイズ。ユニークスキルは同じものは2つはないから見たことないけど…………すごい効果だ」

「え、ど、どんな?」

「相手の能力を数値化して見れるようだね。名前、筋力、俊敏なんかを。そしてそのステータスを1つだけコピーできる。そしてなにより驚いたのは、ユニークスキルのコピーができることだ。20分の時間制限もあるし、その後3日間魔法が使えなくなるけど鍛えたらすごいよコレは」

「そ、そんなものが私に………」

「それだけじゃないね、ユニークスキルがある。もっとも、それは封印されていてボクにも見えないがね」

私は後半、青年の言葉をほとんど聞いていなかった。

青年の後ろに鏡があった。

黒髪を短く切ってそろえた、整った容姿の自分。

幾度も見て来たはずなのに、ひどく懐かしい。

涙が出るほど。

「ちょ、な、なんで?なんで泣くの?」

「なんか………ごめん、わかんない!」

「はぁ!?」

分からないものは分からないのだ。

自分の顔を見て泣いたなんて絶対誰にも言えない。

「あっ、そうだ。あなた、名前は?」

「敬語も辞めてるし………レイン。ボクはレイン・ジェラルドだよ!文句ある!?」

「あははっ!文句だらけだよ!」

涙は乾いてこびりついた。

忘れられないならそれでもいい。
結局捨てられないのだから。

「よろしくレイン!」

差し出した手をレインが握る。




ちりん。



それは、始まりの音。
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