うまく笑えない君へと捧ぐ

西友

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おまけ話

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 今年の年末年始は、帰らない。

 彰太は家族に連絡した。理由は、姪に一翔を取られたくないから。ようやく一翔と再会できてから、まだ半年。心の余裕が、彰太にはまだなかったのだ。


 そうして迎えた元旦。
 明けましておめでとう。遅めの挨拶を一翔と交わした直後。琉太から連絡がきた。今、奈良にいると。

「何で?!」

 彰太がスマホを耳に当てながら、声を荒げた。隣にいる一翔がびくっと肩を揺らす。

『瑠里が一翔に会いたいってあんまり泣くからさ……いや、これでも頑張ったんだぞ? ずっと会いたい会いたいって泣き続ける瑠里を何とか宥めること数ヶ月……お前が一翔を連れてきて、瑠里が風呂に入ってる間に突然帰ったときなんかホント大変で』

 電話の向こう。琉太が心底疲れた様子で延々続ける。さすがに悪いと思った彰太は「……わかったよ。一翔にも確認するから、ちょっと待ってて」と、一翔に視線を向けた。

 訳を話すと、一翔は「えーっと……俺は構わないけど」と、何とも言えない顔をしていた。元より一翔は、本当に実家に顔を出さなくていいのかと心配していたほどだ。一翔と瑠里を合わせたくないのは、単なる彰太のわがままだった。


 一翔と会えた瑠里の喜びようったらなかった。彰太だけでなく、父親である琉太も嫉妬するほどだった。

「かずと。るり、みかんたべたい」

「いいよ」

 一翔の膝の上に座りながら瑠里が「あーん」と口を開ける。一翔が剥いたみかんを口の中にいれると、瑠里は「おいしー」と顔を赤くしながらじたばたしていた。

「……彰太。すまん。耐えてくれ」

「し、しょうちゃん。ごめんなさいね」

 ものすごい形相の彰太に、左右から琉太と瑠花が宥めにかかる。瑠里が眠ったら連れて帰るから。そう言っていたが、いつも昼寝をするはずの瑠里が眠ったのは、夕方になってからだった。


「……ごめんな、一翔。彰太へのフォロー、全部任せて」

「いえ、そんな」

 眠る瑠里を抱っこしながら、琉太が申し訳なさそうに謝罪する。瑠花が玄関先で「あの、しょうちゃんの姿が見えないようだけど」と、困ったように視線をさ迷わせる。

「大丈夫です。いるところは見当がついているので」

 琉太は「……そうか。すまん。後を頼む」と頭を下げ、部屋を後にした。

 さて。
 一翔は踵を返すと、真っ直ぐに奥の洋室に向かい、クローゼットの前で足を止めた。
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