君の見た色

Sora10gp

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誰にも見えない色

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モノクロに見えている



私が【見えている色】は
他の人とは明らかに違う

その事を思い知ったのは
小学生の頃だった



幼稚園までは、よかった
どんな配色、どんな構図であれ
絵を描けば褒められる

私は見えている世界を
思う存分に描く事が出来た



しかし、



授業という名の元に
絵を描くという段になって


「自分で育てた
アサガオの絵を描きなさい」


植木鉢の中で大きく咲き誇る
大輪の青や紫色

純粋だった私は
一度だって世話を怠る事はなかった


勿論、そのアサガオは
様々な色を纏っている

黄色、赤、橙色…
私はそれらを画用紙に
落とし込んでいく


出来上がった絵は

我ながら
かつてない程の
大作となった



けれど



同級生の
何気ない一言が

全てを引っくり返した

「灯ちゃんの絵
なんか…変」

教室に飾られた絵は
私の絵だけが異色を放つ


そして、
一人がそんな事を
言い出せば


皆が口々に囁き、
声をあげる


私は大いに戸惑った


最終的には
その時の先生でさえ
怪訝な顔、苦笑を浮かべて

「次はちゃんと、
描きましょうね」

なんて
笑顔で告げてくる


私は世界の全てを
否定された



それからは
ひたすらに模写に努めた

様々な図鑑を元に
目立たぬ様に


そうして、
中学に上がった頃

市で開催されたコンテストで
賞を貰ってしまったのは

何とも皮肉な事だ


そして、
それが逆に転機となる

高校に上がって
すぐの頃

桜も散り
夏の気配を
微かに感じ始めた


あの日


「ねぇ!
市で賞を取ったっていうのは、
君であってるかい?」


突然、私の机まで訪れ
何の前置きもなく
そう声をかけてきたのは


先輩だった


私は反応に窮する

周りのざわめく声が
耳に届く

先輩はそれすらも
一切、意に介す事なく
続ける


「ねぇ、聞いているか?
後輩」


私は恥ずかしながら
小さく「まぁ…そうです」と返す

先輩は私の返事を
聞くが早いか
「おぉ」と感嘆をあげて

それから脈絡もなく

「美術部へ来ないか?」



【美術部】

その単語は
私を青ざめさせるには
十分だった


「いや…、私、絵は…」



その後、何度断っても
先輩が諦める事などなく

勧誘は
時も場所も選ばない


ある日には

「後輩、
美術部に入る気になったかい?」

「いや、先輩!今トイレなんで!」


という始末


とうとう
根負けした

というのが私が
美術部に入った経緯だ



入部当時は
これまでの経験から
当然の様に

模写を続ける

ユリの花のデッサンは
この頃描いたものだ

モノクロで
何の感情も乗っていない

そんな絵


でも、


だんだんと苦しくなっていく


苦しみが
蓄積されていく




そんな、ある日
私は誰もいない
薄暗い美術室にいた




純白なカンバスが
私を嘲笑う




パレットに色を乗せて
それを筆で掬う




一筆目が
カンバスに触れる瞬間





私は限界を迎えてしまった
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