最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ

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オールドワン

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『リュートくん、手紙ありがとう。 君から手紙をくれるなんて初めてだったから、とても嬉しかったよ。 それこそ額縁に飾って毎日眺めるくらいにね。 あっ、そうそう。 レオール学園に無事入学できたみたいだね。 おめでとう、その内顔を見せに行くからその時は是非学園を案内してくれ。 よろしく。 さて、挨拶はこのくらいにして、そろそろ本題に入ろうか。 君から頼まれたあの件なのだけど、無論協力は惜しまない。 むしろこちらから協力をお願いしたいところさ。 ……とはいえ内容が内容だけに、流石に手紙で伝えるわけにはいかない。 申し訳ないのだけど、月末の深夜0時に僕らが初めて出会ったあの場所に来てもらえないかな。 そこに最も信頼の置ける人物を派遣する。 後はその者から聞いて欲しい。 追伸、あの印章を持ってきてくれ』

 という訳で、約束の場所。
 噴水広場にやってきた訳だが。

「……居ないな」

 時計台で時間を確認してみると、現在の時刻は23時58分。
 予定の時刻より2分早い。
 現れるとしたら、遅くても2分後だろう。
 それまでは噴水の石段にでも座って、ゆっくりしているとしよう。

「…………来たか」

 予定の時間丁度、ローブを纏った何者かが屋根から飛び降りてきた。
 実に諜報員らしい登場の仕方である。

「貴様が殿下の仰っていた男だな」

 女の声?
 この声、どこかで聞いた覚えがあるような……。
 気のせいだろうか。
 
「あ、ああ……俺はレオール学園に在籍している、一年の……」 

「貴様の素性は既に把握している、よって自己紹介の必要はない」

 おお、流石は男が憧れる職業トップスリーに入る諜報員。
 めっちゃカッコいい!
 スパイはやっぱりこうでなきゃ!

「話が早くて助かるよ。 じゃあ早速、例の件についての情報を……」

「その前に証を提示しろ。 殿下からお預かりしている筈だ」

 証……?
 一体なんの話……ああ、なるほど。

「ほら、これで良いか?」

 懐から取り出したのは、キングスナイツの印章。
 俺はそれを掌に乗せて差し出した。

「うむ、確かに。 ではこちらも素性を明かすしよう」

 彼女はそう言って、自分の指を見せてきた。
 指には指輪状の印章が着けられている。

「自分の名は、オールドワン。 キングスナイツを統べる長官だ。 以後自分の事は、オールドワンと呼べ」

「長官!?」

 おいおい、嘘だろ。
 なんで組織のトップが来るんだよ。
 こういうのって普通、下の者にやらせるもんじゃないのか?
 うちの組ではそうだったぞ。

「大声を出すな、人が来たらどうする」

 おっと。

「……まあ良い、とりあえずそこの路地裏に入るぞ。 情報はそこで渡す」

「わかった」

 返事をすると足早に路地裏へ入っていくオールドワンを追い、俺も暗がりへと足を踏み入れた。

「これが例の情報だ」

 オールドワンが差し出してきた冊子。
 俺はそれを受け取るや否や、表紙に目を通す。
 表紙にはこんな題名が記されている。
 デモンブラッドに関する調査資料、と。
 
 ──ぺらっ。
 
「デモンブラッドの調査結果は以下の通り」

 入手したデモンブラッドを調べた所、この薬品には幾つかの効能が確認された。
 この薬品の主な効果は精神面や肉体面に対する治癒だが、他にも身体能力強化、魔力増幅、感覚強調などの効果もあり、ドーピング剤としてもとても有益な薬品である。
 しかしこれらの反応は全てデモンブラッドに含まれる多量な魔力による反応現象由来のものでしかなく、故にかなり危険を伴う代物だと言えるだろう。
 主な副作用としては、まず眩暈や吐き気、手足の震えが起こる。
 そしてその後、精神面になんらかの異常をきたした影響により、常軌を逸した興奮状態へと陥り、狂乱状態となる。
 服用の回数が増えるごとに何らかの悪影響は必ず出ると予測されるが、そちらについては目下調査中。
 報告待たれし。

「デモンブラッド……思ったよりヤバい薬品みたいだな」

 普通は危険な薬品を作る際、解毒用の薬品も作っておくもんだが、デモンブラッドを精製した人間は使用者に常習性を持たせる為わざと作らなかったと思われる。
 だから治す方法がなく、結果使用者はデモンブラッドを幾度となく服用する羽目になってしまう。
 そして、危険だと分かっていつつも再度服用してしまう理由は恐らく、薬の効果が薄まってきた時に起こる精神的な負担や不安を打ち消したい、又はあの興奮状態が病み付きになってしまって、といった所か。
 これだけならまだ麻薬の域を越えないが、デモンブラッドには従来の麻薬にはあり得ない要素が含まれている。
 そう、魔力だ。
 しかも人間の許容量を遥かに凌駕する魔力が、デモンブラッドには内包されている。
 当然ながらそんな物は一口飲み込むだけでもかなり危険。
 もしそれを何度も口にしたらどうなるか。
 死ぬだけならまだ良い。
 最悪の場合……。

「オールドワン、調査結果はこれだけか? 他に資料は? 例えば、デモンブラッドによる死亡例や異形化なんかの情報もあると助かるんだが」

「異形化? デモンブラッドにはそのような効果も?」

 ということは、まだ確認されていないのか。
 それは重畳。

「……まだわからない、ただの推測だ。 けど、可能性はゼロじゃない」

「そうか、ではそれも一応研究部へと伝達しておこう。 それと、これを」

 オールドワンは懐から試験管らしき物を取り出した。
 中に入っているこの赤い液体はなんだ?
 異様に高い魔力を感じるが…………ッ!

「その薬品まさか、デモンブラッドか!?」

「ほう、一目で看破するか。 大したものだ。 受け取れ、特別調査官」

「ちょっ、あぶな! 投げ渡すとかあんた何考えて……って、特別調査官!? なんだよ、それ! 初めて聞いたんだけど!」

「ふんっ。 印章を賜ったにも関わらず、一度も挨拶に来ん奴に何故教えてやらねばならん。 常識で物を言え、小僧」

「うぐっ!」

 好きで受け取った訳じゃないし、キングスナイツ入りを認めた訳でもないが、印章を利用したのは事実。
 そう言われても仕方がない。

「すいませんでした……」

 オールドワンは謝罪を受け取るなり踵を返し、立ち去ろうとする。

「あ、あのぉ……」

「……なんだ」

「これ、持って帰らなくて良いんです? 貴重なサンプルなんじゃ……?」

「そいつは貴様が持っておけ、殿下からの贈り物だ」

 麻薬をプレゼントなんかにすんなよ、王子様。
 倫理観死んでんのか。

「はぁ、じゃあ遠慮なく」

 と、デモンブラッドをポケットにしまっていた最中。
 
「なにか判れば洋菓子店モンブレンへ報せに来い。 期待しているぞ、特別調査官」

 オールドワンはそう言って、今度こそ闇夜に姿を眩ましたのだった。
 また一つ謎を残して。 
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