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6話 外交特使ディーナとの出会い
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「怪我ない?」
「大丈夫です。ありがとうございました」
「ごめんね。どうしても見過ごせなくて」
「いえ、助かりました」
「シャーリーのこと良く言ってくれる人に悪い人いないし」
「貴方もシャーリー様のことを御存知なのですか?」
彼女が本当にループト公爵令嬢なのか確かめたかった。本物なら、シャーリー様のことを深く知っているはずだ。
「うん、すごく仕事できるし真面目で可愛い子だよね」
ああ、やっぱり彼女はループト公爵令嬢だ。
そしてシャーリー様のことを深く理解されている!
「ええ! 素敵な方なんです! 誰よりも努力家で優しくて!」
「わかるー!」
散々シャーリー様が悪だと広め言われ続けた中、シャーリー様のことを話せるなんて幸せすぎる!
「私、エーヴァと言います。本当に、ありがとうございました!」
「気にしないで。私はディーナ、こっちはヴォルム」
護衛騎士が会釈をする。身体魔法を使い拳で戦うループト公爵令嬢についていける数少ない剣使いと呼ばれるリーデンスカップ伯爵令息だろう。
「て、何か用事でもあった? ごめんね、引き止めちゃって」
「いいえ。諸島リッケリに行こうとしていたのですが、制限があったみたいで確認をしていたんです」
「なるほど……制限ね……ヴォルム」
「はい」
護衛騎士が得たりとばかりに紙と細長い何かをループト公爵令嬢に渡した。
細長い何かは紙に文字が書ける画期的な物でドゥエツ王国の技術の高さに驚く。
そしてループト公爵令嬢はさらりと書いた紙を私にくれた。
「これは……」
「私の名前があるから通るよ」
諸島リッケリ入島許可願い。
エーヴァ嬢のリッケリへの入島を許可します。
ディーナ・フォーレスネ・ループト。
外交特使が書いたものなら確実に行ける。彼女のサインはドゥエツ王国内では周知されているだろう。
まさか少し話しただけなのに、ここまでしてくれるなんて!
「あ、ありがとうございます!」
「いいのいいの。シャーリーを良く言ってくれるなら喜んで」
「シャーリー様は美しく完璧な女性です!」
「だよねー!」
おっといけない。シャーリー様の話だと脊髄反射で応えてしまうわね。抑えないと。
ともあれ、元婚約者の暴力から助けてもらったことに加えて、入島許可のサインまでもらってしまった。
なにかお礼をしたいところだけど、今の持ち合わせが私の作った銀細工一つだけ。
ティルボーロン様へ送ろうと思った最近一番いい出来の作品だ。
「ディーナ様……よければこれを受け取ってください!」
いいのだろうかと思ったけど、今できる感謝の形はこれを渡すしかなかった。
銀細工で作ったブローチ。
それを見たディーナ様が眦を上げた。
「……これ、貴方が作ったの?」
「は、はいっ。まだまだ未熟ですが」
「ううん、すごく精巧で綺麗。これ、伝統工芸品だから作れる職人なんて片手ぐらいの数しかいないでしょ」
よく御存知だ。自身が伝統文化保護を手掛けただけあって、すぐにこれが伝統工芸の一つだと分かってくれる。
「……本当はきちんとしたお礼をすべきなのですが、生憎持ち合わせがそれぐらいでして」
「いやいや最高だよ! 嬉しい!」
と、私を見つめてギリギリ聞こえない声音で何かを囁く。人の名前のようだったけど、そうでもないような。
その独り言が終わると急にカッと顔つきが変わった。
「こんなところに逸材が!」
「ディーナ様抑えてください」
護衛騎士の囁きは聞き取れた。この二人、随分距離感が近いし信頼の度合いも特別な感じに見受けられる。
「すごすぎだよ!」
「で、でもまだ色が綺麗に出せなくて……細工も歪みが出てしまうんです」
「そうなの? 私、ここの色合いすごく好み。ここの模様も」
「あ……」
私も気に入ってる所だ。
私の囁きは聞こえてないようだった。銀を酸化させたり金糸や色彩箔から作った糸を使って銀一色ではなく多色にしたのは新しい作品を次々生み出すティルボーロン様を見習ってのことだ。
誰にも言わず、ただずっとティルボーロン様の作品に思いを馳せながら作り続けた。
「バーツに会いたいのね」
伝統文化保護をしていたから面識があるのだろう。
そうだ。私は彼に会って、銀細工を学びたい。
こんなに美しい作品を作る方なんだもの。もう一度、彼の作品を見たい。
「はいっ! 弟子入りしたいぐらいティルボーロン様の作品は素敵で!」
「ヴォルム」
「はい、こちらを」
再び手紙を書いたディーナ様は私にそれを渡した。
「これ、領主に会ったら渡して。執事や侍従に渡しても大丈夫」
「え? は、はい」
紙には「この子を弟子にして!」と書かれていた。
この手紙だけでティルボーロン様が了承してくれるってこと? いくら外交特使でもそこまでできるの? 王陛下ばりに決定権があるなんて想像できないし、少なくともソッケ王国ではそこまでできる人物はいない。
「ディーナ様は実はものすごい方なのですか?」
「んー? まあ顔が利くかな」
伝説のような方だと思っていたけど、それは事実ね。
「こんなに……なにもかも、なんてお礼を言えば!」
「このブローチで充分。自慢にするわ」
「ありがとうございます」
あ、そうだ、とディーナ様が思い出したように私に聞いた。
「エーヴァ、もう一つ聞きたいんだけど、近くに美味しいご飯屋さんある?」
「はい!」
商会周りをシャーリー様としてきた経験が生かされ、貴族女性に受けがいいご飯屋さんを紹介することができた。
お二人と別れて私は決意を新たにした。
「よし。すぐに準備していかないと!」
「大丈夫です。ありがとうございました」
「ごめんね。どうしても見過ごせなくて」
「いえ、助かりました」
「シャーリーのこと良く言ってくれる人に悪い人いないし」
「貴方もシャーリー様のことを御存知なのですか?」
彼女が本当にループト公爵令嬢なのか確かめたかった。本物なら、シャーリー様のことを深く知っているはずだ。
「うん、すごく仕事できるし真面目で可愛い子だよね」
ああ、やっぱり彼女はループト公爵令嬢だ。
そしてシャーリー様のことを深く理解されている!
「ええ! 素敵な方なんです! 誰よりも努力家で優しくて!」
「わかるー!」
散々シャーリー様が悪だと広め言われ続けた中、シャーリー様のことを話せるなんて幸せすぎる!
「私、エーヴァと言います。本当に、ありがとうございました!」
「気にしないで。私はディーナ、こっちはヴォルム」
護衛騎士が会釈をする。身体魔法を使い拳で戦うループト公爵令嬢についていける数少ない剣使いと呼ばれるリーデンスカップ伯爵令息だろう。
「て、何か用事でもあった? ごめんね、引き止めちゃって」
「いいえ。諸島リッケリに行こうとしていたのですが、制限があったみたいで確認をしていたんです」
「なるほど……制限ね……ヴォルム」
「はい」
護衛騎士が得たりとばかりに紙と細長い何かをループト公爵令嬢に渡した。
細長い何かは紙に文字が書ける画期的な物でドゥエツ王国の技術の高さに驚く。
そしてループト公爵令嬢はさらりと書いた紙を私にくれた。
「これは……」
「私の名前があるから通るよ」
諸島リッケリ入島許可願い。
エーヴァ嬢のリッケリへの入島を許可します。
ディーナ・フォーレスネ・ループト。
外交特使が書いたものなら確実に行ける。彼女のサインはドゥエツ王国内では周知されているだろう。
まさか少し話しただけなのに、ここまでしてくれるなんて!
「あ、ありがとうございます!」
「いいのいいの。シャーリーを良く言ってくれるなら喜んで」
「シャーリー様は美しく完璧な女性です!」
「だよねー!」
おっといけない。シャーリー様の話だと脊髄反射で応えてしまうわね。抑えないと。
ともあれ、元婚約者の暴力から助けてもらったことに加えて、入島許可のサインまでもらってしまった。
なにかお礼をしたいところだけど、今の持ち合わせが私の作った銀細工一つだけ。
ティルボーロン様へ送ろうと思った最近一番いい出来の作品だ。
「ディーナ様……よければこれを受け取ってください!」
いいのだろうかと思ったけど、今できる感謝の形はこれを渡すしかなかった。
銀細工で作ったブローチ。
それを見たディーナ様が眦を上げた。
「……これ、貴方が作ったの?」
「は、はいっ。まだまだ未熟ですが」
「ううん、すごく精巧で綺麗。これ、伝統工芸品だから作れる職人なんて片手ぐらいの数しかいないでしょ」
よく御存知だ。自身が伝統文化保護を手掛けただけあって、すぐにこれが伝統工芸の一つだと分かってくれる。
「……本当はきちんとしたお礼をすべきなのですが、生憎持ち合わせがそれぐらいでして」
「いやいや最高だよ! 嬉しい!」
と、私を見つめてギリギリ聞こえない声音で何かを囁く。人の名前のようだったけど、そうでもないような。
その独り言が終わると急にカッと顔つきが変わった。
「こんなところに逸材が!」
「ディーナ様抑えてください」
護衛騎士の囁きは聞き取れた。この二人、随分距離感が近いし信頼の度合いも特別な感じに見受けられる。
「すごすぎだよ!」
「で、でもまだ色が綺麗に出せなくて……細工も歪みが出てしまうんです」
「そうなの? 私、ここの色合いすごく好み。ここの模様も」
「あ……」
私も気に入ってる所だ。
私の囁きは聞こえてないようだった。銀を酸化させたり金糸や色彩箔から作った糸を使って銀一色ではなく多色にしたのは新しい作品を次々生み出すティルボーロン様を見習ってのことだ。
誰にも言わず、ただずっとティルボーロン様の作品に思いを馳せながら作り続けた。
「バーツに会いたいのね」
伝統文化保護をしていたから面識があるのだろう。
そうだ。私は彼に会って、銀細工を学びたい。
こんなに美しい作品を作る方なんだもの。もう一度、彼の作品を見たい。
「はいっ! 弟子入りしたいぐらいティルボーロン様の作品は素敵で!」
「ヴォルム」
「はい、こちらを」
再び手紙を書いたディーナ様は私にそれを渡した。
「これ、領主に会ったら渡して。執事や侍従に渡しても大丈夫」
「え? は、はい」
紙には「この子を弟子にして!」と書かれていた。
この手紙だけでティルボーロン様が了承してくれるってこと? いくら外交特使でもそこまでできるの? 王陛下ばりに決定権があるなんて想像できないし、少なくともソッケ王国ではそこまでできる人物はいない。
「ディーナ様は実はものすごい方なのですか?」
「んー? まあ顔が利くかな」
伝説のような方だと思っていたけど、それは事実ね。
「こんなに……なにもかも、なんてお礼を言えば!」
「このブローチで充分。自慢にするわ」
「ありがとうございます」
あ、そうだ、とディーナ様が思い出したように私に聞いた。
「エーヴァ、もう一つ聞きたいんだけど、近くに美味しいご飯屋さんある?」
「はい!」
商会周りをシャーリー様としてきた経験が生かされ、貴族女性に受けがいいご飯屋さんを紹介することができた。
お二人と別れて私は決意を新たにした。
「よし。すぐに準備していかないと!」
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