婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

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21話 疑われるエーヴァ、否定するバーツ

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「ループト公爵令嬢から手紙が着た」

 諸島に着いてすぐ魔法大国ネカルタスへ向かったディーナ様から体調不良者の件ですぐに指示がきた。

「瓶に入った香料は使わないこと。瓶の中身は魔法薬で、摂取すると体調不良となる、か」
「急いで町へ」
「ああ」
 
 以前から大量に輸入されていた紅茶用の香料は体調不良になる原因で使用禁止になる。町では幸い私が話をしたことと、バーツ様が本土からの連絡が来るまで保留という連絡が行き届いたことから、使者ルーレが持ち込んだ予防薬は使用せずにいる店ばかりだった。体調不良者も急激に増えていない。
 広場に集まりひりついた空気の中、今後について話し合う。そもそも最初に持ち込まれたのはいつ誰だったのかを疑問に持つ者も多かった。

「悪いけどエーヴァ嬢が来てから始まった気がすんだが」
「その前からあっただろう?」
「これってソッケ国から始まったんだろ? エーヴァ嬢ソッケから来たらしいじゃんか」

 矛先が私に向けられる。この島の人たちからすれば、私は部外者で怪しまれても仕方がない。

「ソッケにはすんげえ悪どい王子妃がいたんだろ? ソッケの連中には良い印象がねえよ」
「シャーリー様は悪事を働いていません」

 事実と異なります、と言いきった。

「私はバーツ様から銀細工を学ぶ為に伺いました。島の方々を貶めるようなことはいたしません」

 けどなあと渋られる。確たる証拠もなく身元もはっきりしない私の言うことが信じられるとは思えない。少し牢に入って時間が経ってから折を見て出るとかしないとかしら。

「エーヴァ嬢は大丈夫だ」
「領主様?」

 バーツ様が領民を真っ直ぐ見据えて言った。

「体調不良者とエーヴァ嬢は無関係だ」
「何を根拠に」
「人柄」

 それだけかと言われ、バーツ様は頷く。
 身元についてはあまり確認をとっていないことも伝えた。

「誰でも知られたくない部分はあるだろうし」
「それじゃますます怪しいじゃねえか」
「待ってくれ!」

 途中急ぎ足で合流してきたのは茶葉を売っている店主だった。
 私がバーツ様の指示の元、使者が持ち込んだ予防薬をどうするか決めるべきだと伝えた人。

「予防薬の使用を保留にするよう言ったのはエーヴァ嬢だぞ!」
「え?」
「話は大体聞かせてもらった。エーヴァ嬢が犯人だとしたら使わないよう言わないだろ。むしろ領主様が許可したって広めるだろうし」

 劇的に体調不良者が広まれば島は機能不全になる。自分が怪しまれる前に混乱に乗じて逃げれば勝ちだ。
 つまり、今もここにとどまる私が暗躍する必要がない。

「それじゃあ……」

 一気に形勢が変わった。
 今まで私を疑っていた領民も「疑ってすまなかった」と謝ってくれ、その後は本土の使者を名乗る者に注意すること、見知らぬものは全て領主であるバーツ様対面で確認することになった。
 ディーナ様が「香料が原因」と特定した以上、同じことはしないだろう。
 新しい方法で攻め込んでくるかどうかだ。

「では一度私は屋敷に戻ります。小さなことでも変化があったら呼んでください」

 そうして私たちは屋敷に戻る。

「すまなかった」
「バーツ様?」
「君に疑いがかかってすぐに否定したかったし、その、うまく守ることもできなかったから」

 バツが悪そうに言う姿が可愛らしい。

「バーツ様、素敵でした」
「え?」
「私を信じてくださっての言葉でしょう? 理詰めで皆さんを説得する姿よりも、ただの私を信じて無実を訴えてくれる姿は格好良かったです」
「あ、えっと……」
「そんな優しいバーツ様が好きですよ!」
「っ……」

 嬉しかった。
 ただのエーヴァでも信じてくれるって。
 時間もあまり過ごしていないし、私は素性をバーツ様に伝えていない。
 なのに、ただのエーヴァを信じてくれた。

「……その」
「はい」
「こんな時だけど……こんな時だからこそ銀細工を作ろうか?」
「素敵です!」

 気晴らしだよ、とバーツ様は視線を銀細工に移す。領主との仕事に行き詰った時は銀細工を作って気分転換を図っていたらしい。

「私と同じですね」
「同じ?」
「仕事で辛い時はいつも銀細工が助けてくれました。辛い時こそ黙々と作ってたので」
「ああ……そうだね、同じだ」
「はい! 嬉しいです!」

 より細い銀糸が作れるという新しい銀を早く取りに行きたい。
 けど海賊の件がもう少し落ち着かないと難しいとバーツ様は言う。
 楽しみだとはしゃぐ私にバーツ様はほんの少し口角を上げた。普段クールな姿と違って柔らかく、珍しい姿に心が跳ねる。

「まだこのバーツ様の銀細工より細い銀糸で仕上げたことがないので早く追いつきたいです!」
「ああ。それいつも持ってるの?」
「はい!」
「そう……」

 私にとってのお守りだ。
 ソッケ王国にいた頃は、王城に持ち込み禁止もあって肌身離さずはできなかったけど、今はいつも持っている。私自身は銀細工と同義だもの。

「……それだけ大事にされていると、その銀細工は本望だろうね」
「そうなのですか?」
「それだけ愛されていたら銀細工も幸せだよ」
「まあ!」

 素敵な表現!
 さすがバーツ様だわ!

「ご安心を! 私は銀細工も好きですがバーツ様も好きです!」
「もう充分聞いてる」
「そうでしたか」

 呆れ気味の中に親しみが見えた気がした。

「さあ銀細工を作ろう。次は模様と模様を繋げる技を見せる日だ」
「はい!」
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