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25話 僕も君が好きだ
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バーツ様がディーナ様を好きで、バーツ様の好きを私が得るのは難しい。
バーツ様に関する恋や愛の相関図でディーナ様に敵わない、という意味だ。
「バーツ、来たね」
私ではなくディーナ様が選ばれたのは仕方がない。
「しばらくの間、リッケリのことをよろしくお願いします」
「任せて」
バーツ様の好意に関して、私はディーナ様に敵わない。
そういう想いで口にした。
なんて浅ましいのだろう。
「エーヴァ嬢? どうかした?」
「あ、いえ、なにも。新しい銀、楽しみですね!」
「そうだね」
旅立ちは早朝だった。
領民には昨日までに話は済んでいて、見送りを希望しないバーツ様が領民が寝静まる時間帯を敢えて選んだ。少しばかりの領民と別れ、船は島を離れる。
「君が一緒に来てくれてよかった」
「楽しみですもの! 新しい銀でバーツ様から技術を学ぶ……最高です」
「そう」
静かな海上で二人、船首で朝日に目を細める。
早朝、太陽が昇り始める水平線は眩しくあたたかく光り、反対側はまだ青みを帯びた夜だ。
夜の青を残す空には星が見える。バーツ様の濃紺の瞳と銀細工のようだった。
「戦争で敏腕を振るうバーツ様も格好良くて好きですが、やはり銀と向き合う姿が一番好きなので、これからの時間が楽しみです!」
ねえ、それ、とバーツ様に問われる。
見上げると柔らかな微笑みがあった。
「バーツ様?」
「毎回僕を褒めて好きと言ってくれるけど、応えたらどうする?」
「こたえる?」
「応えていいのかずっと考えてた」
戦争があったから進めなかったとバーツ様は続ける。
「エーヴァ嬢……いや、エーヴァ。僕も君が好きだ」
どっと血が巡るのが分かった。
「最初は動揺させられるばかりだったけど、君と銀細工を作って一緒に生活して……戦時中の活躍には驚いたけど逆に魅力的だと思った。そんな君が好きだと、今頃になってはっきりした」
「……」
嬉しい。
けど、その後に強烈な感情が登り上がった。
「エーヴァの好きは、僕と同じ?」
「…………はい」
ディーナ様へのもやもや感も全ては焼きもちを焼いてディーナ様を恋敵として見ていたからだ。
私は一人の男性としてバーツ様が好き。
けど。
「エーヴァ? どうした、顔色が」
「あ、いえ、違うんです」
登り上がった強烈な感情は恐怖だった。
思い出されるのは、シャーリー様との別離から始まった失職と婚約破棄。感情こそ違えどシャーリー様という大切な方を失い、頑張って結果を残していると自負していた仕事を失い、清々したはずのあの男との婚約破棄が私をがんじがらめにする。
「エーヴァ? エーヴァ大丈夫?!」
顔色が悪いと言われ、立ち眩むのを支えてもらった。
横になろうと言うバーツ様を止める。
「バーツ様、私の気持ちは本物です。本物なんです」
「エーヴァ?」
「バーツ様が好きな気持ちは本物です……本物なのに、今、とても、怖い」
「エーヴァ?」
「……怖いんです……」
仕事を失い自由になれたと思った。
遠くにいるシャーリー様が幸せならそれでいいと思った。
あんなどうしようもない男と別れてよかった。
全部本物の思いだ。
「あの時と同じことがバーツ様との間で起こるのが怖い」
バーツ様を失い、銀細工を作ることを諦め、一人になる。
好きという気持ちを分かりあえても、来るかもしれない別れが怖かった。
「バーツ様が裏切るような方だとは思っていません。でも……失うのが怖い……」
「だから、今は一緒になれない?」
「……バーツ様のお気持ちにさらにお返しが……」
バーツ様が私の言う好きに自身の気持ちを返してくれたのに。
私は、今、ひどい言葉を口にする。
「お返しが……応えることが、できません」
なんて卑怯な女だろう。
好きだ好きだとあれだけ言っておいて、バーツ様から好きが返ってきたら「結構です」だなんて矛盾している。
けど怖い。失う未来が、怖い。
「僕が好きなことに変わりはない?」
「はい」
「ならいい」
「……え?」
怒られ、罵られるかと思った。なのにバーツ様はいいと言う。
「そしたらこれから時間をかけてエーヴァの不安を取り除く。不安がなくなって怖くなくなったら、その時は応えてほしい」
こんな矛盾だらけの私を許してくれるの?
「ですが、今の私はあまりにも不誠実です……こんな、こんな……」
「エーヴァが過去どれだけひどい目にあったかは僕には想像できない。けど傷ついたのなら癒す時間が必要だ」
真っ直ぐ私を見たまま続ける。
「だから待つよ」
涙が出そうだった。
私の気持ちに寄り添ってくれる。なんて優しい方なんだろう。
「でも、そこそこアピールはさせてね?」
「アピール?」
「あとエーヴァの好きにも応える」
「え?」
「エーヴァが好きって言ってくれたら応えるってこと」
バーツ様は優しい微笑みのまま「僕の好きに慣れていこう」と言った。
詳しく聞こうとしたところで、船がソッケ王国を捉え聞くこともできず終わってしまう。
それでもバーツ様は優しさをもって私に寄り添ってくれていることは確かだった。
バーツ様に関する恋や愛の相関図でディーナ様に敵わない、という意味だ。
「バーツ、来たね」
私ではなくディーナ様が選ばれたのは仕方がない。
「しばらくの間、リッケリのことをよろしくお願いします」
「任せて」
バーツ様の好意に関して、私はディーナ様に敵わない。
そういう想いで口にした。
なんて浅ましいのだろう。
「エーヴァ嬢? どうかした?」
「あ、いえ、なにも。新しい銀、楽しみですね!」
「そうだね」
旅立ちは早朝だった。
領民には昨日までに話は済んでいて、見送りを希望しないバーツ様が領民が寝静まる時間帯を敢えて選んだ。少しばかりの領民と別れ、船は島を離れる。
「君が一緒に来てくれてよかった」
「楽しみですもの! 新しい銀でバーツ様から技術を学ぶ……最高です」
「そう」
静かな海上で二人、船首で朝日に目を細める。
早朝、太陽が昇り始める水平線は眩しくあたたかく光り、反対側はまだ青みを帯びた夜だ。
夜の青を残す空には星が見える。バーツ様の濃紺の瞳と銀細工のようだった。
「戦争で敏腕を振るうバーツ様も格好良くて好きですが、やはり銀と向き合う姿が一番好きなので、これからの時間が楽しみです!」
ねえ、それ、とバーツ様に問われる。
見上げると柔らかな微笑みがあった。
「バーツ様?」
「毎回僕を褒めて好きと言ってくれるけど、応えたらどうする?」
「こたえる?」
「応えていいのかずっと考えてた」
戦争があったから進めなかったとバーツ様は続ける。
「エーヴァ嬢……いや、エーヴァ。僕も君が好きだ」
どっと血が巡るのが分かった。
「最初は動揺させられるばかりだったけど、君と銀細工を作って一緒に生活して……戦時中の活躍には驚いたけど逆に魅力的だと思った。そんな君が好きだと、今頃になってはっきりした」
「……」
嬉しい。
けど、その後に強烈な感情が登り上がった。
「エーヴァの好きは、僕と同じ?」
「…………はい」
ディーナ様へのもやもや感も全ては焼きもちを焼いてディーナ様を恋敵として見ていたからだ。
私は一人の男性としてバーツ様が好き。
けど。
「エーヴァ? どうした、顔色が」
「あ、いえ、違うんです」
登り上がった強烈な感情は恐怖だった。
思い出されるのは、シャーリー様との別離から始まった失職と婚約破棄。感情こそ違えどシャーリー様という大切な方を失い、頑張って結果を残していると自負していた仕事を失い、清々したはずのあの男との婚約破棄が私をがんじがらめにする。
「エーヴァ? エーヴァ大丈夫?!」
顔色が悪いと言われ、立ち眩むのを支えてもらった。
横になろうと言うバーツ様を止める。
「バーツ様、私の気持ちは本物です。本物なんです」
「エーヴァ?」
「バーツ様が好きな気持ちは本物です……本物なのに、今、とても、怖い」
「エーヴァ?」
「……怖いんです……」
仕事を失い自由になれたと思った。
遠くにいるシャーリー様が幸せならそれでいいと思った。
あんなどうしようもない男と別れてよかった。
全部本物の思いだ。
「あの時と同じことがバーツ様との間で起こるのが怖い」
バーツ様を失い、銀細工を作ることを諦め、一人になる。
好きという気持ちを分かりあえても、来るかもしれない別れが怖かった。
「バーツ様が裏切るような方だとは思っていません。でも……失うのが怖い……」
「だから、今は一緒になれない?」
「……バーツ様のお気持ちにさらにお返しが……」
バーツ様が私の言う好きに自身の気持ちを返してくれたのに。
私は、今、ひどい言葉を口にする。
「お返しが……応えることが、できません」
なんて卑怯な女だろう。
好きだ好きだとあれだけ言っておいて、バーツ様から好きが返ってきたら「結構です」だなんて矛盾している。
けど怖い。失う未来が、怖い。
「僕が好きなことに変わりはない?」
「はい」
「ならいい」
「……え?」
怒られ、罵られるかと思った。なのにバーツ様はいいと言う。
「そしたらこれから時間をかけてエーヴァの不安を取り除く。不安がなくなって怖くなくなったら、その時は応えてほしい」
こんな矛盾だらけの私を許してくれるの?
「ですが、今の私はあまりにも不誠実です……こんな、こんな……」
「エーヴァが過去どれだけひどい目にあったかは僕には想像できない。けど傷ついたのなら癒す時間が必要だ」
真っ直ぐ私を見たまま続ける。
「だから待つよ」
涙が出そうだった。
私の気持ちに寄り添ってくれる。なんて優しい方なんだろう。
「でも、そこそこアピールはさせてね?」
「アピール?」
「あとエーヴァの好きにも応える」
「え?」
「エーヴァが好きって言ってくれたら応えるってこと」
バーツ様は優しい微笑みのまま「僕の好きに慣れていこう」と言った。
詳しく聞こうとしたところで、船がソッケ王国を捉え聞くこともできず終わってしまう。
それでもバーツ様は優しさをもって私に寄り添ってくれていることは確かだった。
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