婚約破棄された家出令嬢の私、大好きな人に弟子入り! 溺愛は全然必要ありません!

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26話 バーツ様はディーナ様をお慕いしているのでは?

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 自分のことで精いっぱいだった私は、ソッケ王国上陸後、馬車に揺られながら気づいてしまった。気になってバーツ様に聞いてみる。

「バーツ様はディーナ様をお慕いしているのでは?」
「はい?」

 素っ頓狂な声がバーツ様から出た。目を丸くしながら「何故?」と問われる。

「ディーナ様との親交が深く、銀細工に理解がおありでしょう? バーツ様を保護してくれましたし、銀細工師筆頭にまで指名してくださいました。ディーナ様の要望である領主もされて、その、最近お二人で話してる姿が仲睦まじく、てっきりバーツ様はディーナ様に恋しているのかと……」
「違う。ループト公爵令嬢には感謝こそすれど、恋愛や結婚の意味合いがある好きはないよ」
「そうでしたか」

 最近話してた姿ってそんなに? とバーツ様がぶつぶつ言っている。

「バーツ様、照れてました」
「……エーヴァとのことをからかわれた時か」
「私ですか?」
「僕がエーヴァを好きだって、ループト公爵令嬢に知られたから」

 あの時ループト公爵令嬢がいつも通りだったのはそのため? 告白があっても動揺しなさそうな方だから、ついバーツ様の反応しか見てなかった。

「いい? 僕が好きなのはエーヴァだからね」
「は、はひ……」

 格好いい。
 キリッとして、真っ直ぐ私に伝えてくれる。普段優しさが前面に出てる方が凛と告白する姿は毒だわ。
 けどすぐに這い上がってくる激情。
 まだ怖さはがんがん登ってくるけど、バーツ様の言う待つを信じたい。私がいくらひどいことをしてるのだとしても。

「着いたようだ」

 元々自然災害で復興中の場所だからか、人手もそこそこある。数年かけても完全な復興には至ってないけど、かなり状態はいい。バーツ様があらかじめ話を通し、許可を得ていたここ一帯の領地を管理する辺境伯に挨拶し、現場に立つ。
 ソッケ王国といえど、さすがに辺境領地では私を知る人間はいない。存分に銀をとれる。

「始めようか」
「はい!」

 銀や鉱石がとれると、採取専門の人間が集まっていた。バーツ様が伯爵と知っているのか銀採取を止められたけど「お気になさらず」と柔らかく断り銀採取が始まった。
 バーツ様はこういう時も現場に入り自力でとり確認するタイプだ。

「野外の土木作業するバーツ様も素敵です!」
「なら、めいっぱい見せつけようかな」

 笑うもすぐに真剣な表情に変わり、銀をとり始める。銀細工を作る時も、素材をとる時もこの集中している時の表情も雰囲気も好きだ。

「はあ……やっばり格好良い……好き」

 あ、いけない。
 応えられる状態でないのにいつも通り好きだと言ってしまった。バーツ様は土の中の様子を見ながら「大丈夫」と言う。

「いつも通りでいいよ。その方が心地がいいから」

 勿論、応えられるようになったら言ってね、と加えた。

「バーツ様、お優しい……」
「エーヴァにだけね。エーヴァが好きだから」

 あとさ、と続けた。

「僕のことは様をつけなくていい」
「え、ですが」
「訓練だと思ってよ」

 バーツ様の告白に応えるための練習。
 そうだ。少しずつでも変わりたい。応えたい。今すぐじゃなくても続けることで変われるなら、やってみたい。

「分かりました! やってみます!」
「うん」

 あ、でてきた、とバーツ様が掌に銀を握る。

「この辺り一帯は銀だらけだ」
「銀箔にするのでしょう?」
「うん。銀糸にして作ってみないと分からないからね」

 災害地の近くに貴族が使う宿を借りている。辺境伯家に泊まることを打診されたけど、バーツ様は断って領地内で安全な宿を紹介してもらった。ただし、宿の敷地内、空いている物置に銀箔を作れる機器をいれてもらうよう手配した。
 現場で銀糸・銀細工を作るためだ。

「必要な分だけとって、後は復興の手伝いをしようか」
「はい!」

 さすがバーツ様。
 この領地に住む人たちのことを考えている。
 当然私たちが復興手伝いを始めると周囲は戸惑いを見せた。けどすぐに慣れてくれる。これはシャーリー様とドゥエツ王国の王太子が率先して現場の復興活動をしていたからだ。
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