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すごかった。
赤点を回避できた。最大難関の数学なんて平均点を超えた。
「……」
テストを全部広げて満足感に浸る。やべえ笑いが止まらないぞ。
「瀬良くん、どうしたんだい?」
テスト広げて、と鈴木くん。
思いの外テストの点数が良かったことを言うと、よかったねと笑顔で返される。
ぶっちゃけ鈴木くんからしたら、大した点数でもないだろうけど、1つの教科ですら平均点をこえた自分はすっごいと思う。
「吉田さんのおかげだね」
「…あ、うん…」
試験中は図書室を開放しない。
だから彼女とは会ってない。
こっちのクラスにくることもないし、俺も隣のクラスに用がないから、顔を見ることもなかった。
ちゃんと試験に来れたんだろうか。
俺にはさっぱりわからないけど、女の子たちがよく話してるのを聞くと、失恋て相当辛いことなんだなってことしかわからない。
学校いけないとか言ってた子もいたし。
「なぁ、鈴木くん」
「なんだい?」
「…いや、なんでもない」
お礼をしたら喜ぶかなんて、彼に聞いたって意味がない。
鈴木くんから貰えば彼女はなんだって喜ぶ。俺から貰っても喜ばない。
自分で考えてるだけで気持ち悪い。
嫌だな、いつも自信にあふれてきらきらしてるのが俺のデフォなのにさ。
それでもいつも思ってた。
俺のきらきらは、恋をしているきらきらを持ってる子には勝てないって。
それは男でも女でも変わらない。あのきらきらは無敵なんだ。
「……」
なんだかんだ図書室に行くのは半ば意地だ。
失恋して丁度いいじゃん。
今は隙だらけだし、きっとチャンスがやってくる。
そこを狙って散々振り回してやればいい。
「え」
図書室は閉まっていた。
蔵書点検だ。
今日から今週末と来週は土日だけ、図書委員以外入れない。
ということは、テスト期間から来週月曜まで会えない…結構間あくな…。
「瀬良」
「え?」
呼ばれて振り向くと彼女がいた。
「今日は蔵書点検だから入れないわよ」
「…そっか」
「部活あるんじゃなかったの?」
「あぁ、うん」
始まるまで時間あったからって適当に言い訳すると、適当な相槌が返ってきた。
「あ、あのさ、」
「…なに」
「テスト…赤点回避できた」
「そう」
あ、少し肩の力抜けた。
そっか、鈴木くん絡みだからな。
てか、さっき机の上に広げてた俺の点数ばっちり見てるから、鈴木くん本人に聞けばすぐなのに。
そこは失恋したてだからさすがにきけない?
逆に失恋してるなら、もう鈴木くん絡みで俺に関わる必要もないしな…まだあきらめきれないのか。
「あと、数学平均超えた」
「そう」
あっさりいつも通りの平坦な相槌だ。なんだよ、俺からすれば平均超えってすごいんだけど。
「…なんだよ、吉田はどうだったんだよ」
「私?全教科90以上よ」
「うげえ、ガリ勉」
「うるさいわね」
いつものつんけんした感じ。その姿にほっとする。
最期が弱弱しく帰ってく姿だったから、どうにもしっくりきてなかった。
これぐらいが丁度いい。
「…何?」
「いや…その、ありがと、な」
「……」
「……なんだよ」
どうせ、俺がお礼なんて言うと思ってなかったんだろ。
柄でもないとかそういうことなんだろ。
「…ううん、よかったわ」
「え」
俯き気味だからやっと顔見れるってとこだったけど、確かに笑っていたのが見えた。
落ち着かない反面、何かもうちょっと言わないと、と思ったところに端末のバイブ音が響く。
慌てて中身を見ると部長からだ。
そろそろ行かないとか。
「…あ、俺、行くわ」
「そう」
いつも通り…より少し柔らかい彼女をしり目に俺は部活に向かった。
もちろん俺の答案用紙を見て、みんな俺のことをほめたし、びっくりしてた。
補修がないことがやっぱり大きい。
これで部活できるって思うと俺も嬉しかった。
なんてたって1週間後は練習試合だ。気合入れていかないと。
でも、さっきの柔らかい表情の彼女が頭から離れることはなかった。
部活はきちんとやってるから叱られることはない。
蔵書点検って確か結構遅くまでやってるよな…。
「よし、今日はここまでだ」
部長の言葉に汗を拭きながら考える。
図書室まだやってるかな、とか。
行ったところでいつものように図書室に入れるわけじゃないし、鈴木くんもいるだろうから、行ったところで胸やけして帰ってくるだけの気もするんだけど。
「瀬良どうした?」
「あ、いや、俺ちょっと忘れ物したんで先帰ってください」
結局気になって図書室へ行ってしまった。
そこで丁度図書室から出てくる彼女と司書さんに出くわす。
「あぁ、瀬良くん」
「うす」
「丁度良かった、吉田さんを見送ってあげてもらえますか?」
「あ、はい」
「え、先生、私大丈夫です」
「いえいえ、夜道は危険ですから」
大丈夫ですよね、と念を押されるから、大丈夫だと強めに伝えた。
「最初からそのつもりですから」
そう添えたら、司書さんは頼もしいとばかりに喜んで、彼女は困ったように視線を彷徨わせた。
赤点を回避できた。最大難関の数学なんて平均点を超えた。
「……」
テストを全部広げて満足感に浸る。やべえ笑いが止まらないぞ。
「瀬良くん、どうしたんだい?」
テスト広げて、と鈴木くん。
思いの外テストの点数が良かったことを言うと、よかったねと笑顔で返される。
ぶっちゃけ鈴木くんからしたら、大した点数でもないだろうけど、1つの教科ですら平均点をこえた自分はすっごいと思う。
「吉田さんのおかげだね」
「…あ、うん…」
試験中は図書室を開放しない。
だから彼女とは会ってない。
こっちのクラスにくることもないし、俺も隣のクラスに用がないから、顔を見ることもなかった。
ちゃんと試験に来れたんだろうか。
俺にはさっぱりわからないけど、女の子たちがよく話してるのを聞くと、失恋て相当辛いことなんだなってことしかわからない。
学校いけないとか言ってた子もいたし。
「なぁ、鈴木くん」
「なんだい?」
「…いや、なんでもない」
お礼をしたら喜ぶかなんて、彼に聞いたって意味がない。
鈴木くんから貰えば彼女はなんだって喜ぶ。俺から貰っても喜ばない。
自分で考えてるだけで気持ち悪い。
嫌だな、いつも自信にあふれてきらきらしてるのが俺のデフォなのにさ。
それでもいつも思ってた。
俺のきらきらは、恋をしているきらきらを持ってる子には勝てないって。
それは男でも女でも変わらない。あのきらきらは無敵なんだ。
「……」
なんだかんだ図書室に行くのは半ば意地だ。
失恋して丁度いいじゃん。
今は隙だらけだし、きっとチャンスがやってくる。
そこを狙って散々振り回してやればいい。
「え」
図書室は閉まっていた。
蔵書点検だ。
今日から今週末と来週は土日だけ、図書委員以外入れない。
ということは、テスト期間から来週月曜まで会えない…結構間あくな…。
「瀬良」
「え?」
呼ばれて振り向くと彼女がいた。
「今日は蔵書点検だから入れないわよ」
「…そっか」
「部活あるんじゃなかったの?」
「あぁ、うん」
始まるまで時間あったからって適当に言い訳すると、適当な相槌が返ってきた。
「あ、あのさ、」
「…なに」
「テスト…赤点回避できた」
「そう」
あ、少し肩の力抜けた。
そっか、鈴木くん絡みだからな。
てか、さっき机の上に広げてた俺の点数ばっちり見てるから、鈴木くん本人に聞けばすぐなのに。
そこは失恋したてだからさすがにきけない?
逆に失恋してるなら、もう鈴木くん絡みで俺に関わる必要もないしな…まだあきらめきれないのか。
「あと、数学平均超えた」
「そう」
あっさりいつも通りの平坦な相槌だ。なんだよ、俺からすれば平均超えってすごいんだけど。
「…なんだよ、吉田はどうだったんだよ」
「私?全教科90以上よ」
「うげえ、ガリ勉」
「うるさいわね」
いつものつんけんした感じ。その姿にほっとする。
最期が弱弱しく帰ってく姿だったから、どうにもしっくりきてなかった。
これぐらいが丁度いい。
「…何?」
「いや…その、ありがと、な」
「……」
「……なんだよ」
どうせ、俺がお礼なんて言うと思ってなかったんだろ。
柄でもないとかそういうことなんだろ。
「…ううん、よかったわ」
「え」
俯き気味だからやっと顔見れるってとこだったけど、確かに笑っていたのが見えた。
落ち着かない反面、何かもうちょっと言わないと、と思ったところに端末のバイブ音が響く。
慌てて中身を見ると部長からだ。
そろそろ行かないとか。
「…あ、俺、行くわ」
「そう」
いつも通り…より少し柔らかい彼女をしり目に俺は部活に向かった。
もちろん俺の答案用紙を見て、みんな俺のことをほめたし、びっくりしてた。
補修がないことがやっぱり大きい。
これで部活できるって思うと俺も嬉しかった。
なんてたって1週間後は練習試合だ。気合入れていかないと。
でも、さっきの柔らかい表情の彼女が頭から離れることはなかった。
部活はきちんとやってるから叱られることはない。
蔵書点検って確か結構遅くまでやってるよな…。
「よし、今日はここまでだ」
部長の言葉に汗を拭きながら考える。
図書室まだやってるかな、とか。
行ったところでいつものように図書室に入れるわけじゃないし、鈴木くんもいるだろうから、行ったところで胸やけして帰ってくるだけの気もするんだけど。
「瀬良どうした?」
「あ、いや、俺ちょっと忘れ物したんで先帰ってください」
結局気になって図書室へ行ってしまった。
そこで丁度図書室から出てくる彼女と司書さんに出くわす。
「あぁ、瀬良くん」
「うす」
「丁度良かった、吉田さんを見送ってあげてもらえますか?」
「あ、はい」
「え、先生、私大丈夫です」
「いえいえ、夜道は危険ですから」
大丈夫ですよね、と念を押されるから、大丈夫だと強めに伝えた。
「最初からそのつもりですから」
そう添えたら、司書さんは頼もしいとばかりに喜んで、彼女は困ったように視線を彷徨わせた。
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