魔王と呼ばれる元聖女の祝福はラッキースケベ(旧題:婚約破棄と処刑コンボを越えた先は魔王でした)

文字の大きさ
4 / 82

4話 いかにもな男キャラがテンプレな事を言ってきた

しおりを挟む
「どういうこと?!」
「国境に建てようが変わらねえよ。それに三国協定でどこに玄関を置くかで管轄する国が決まるって分かってんだろ」
「そう、だけど……それならそう言ってよ」
「そこは悪かったわ」
「もう」

 そこでやっと第三王太子殿下は気づいたようで「アステリ」と驚きの声を上げた。
 アステリが「よっ」と軽く手を挙げる。

「お前、まだ彼女の側に」
「まーなー」

 私を逃がすにあたり魔法使長が手助けしたことは広まっている。けど、この城にいると思ってなかったなんて意外。

「まあいいわ。で? 保護だっけ? なんでそんなことを提案するわけ?」
「あ……貴殿はパノキカトから命を狙われる身だ。しかし聖女としての祈りの功績は三国に渡る。我が国に来た以上は、貴殿の身の安全を守る義務が我が国にはあると考えての提案をお持ちした」
「ふうん……で、本音は?」
「え?」
「建前はどうでもいいわ。貴方の本音は?」

 黙る。
 国として私を保護したいのは、聖女の力を利用する目的以外はないだろう。
 外交でもいい盾になる。他の国に売りにだしてもいいだろうけど、囲うのが一番利用価値があるかな。パノキカトに戦争を吹っ掛ける理由にもなるだろうし。

「本当は……」
「うん」

 言い淀む王太子殿下をしり目に、指をいじりながら返事を待つ。
 すると予想と反する言葉が返ってきた。

「……本当は、君に結婚の申し出をと思っている」
「……は?」

 見下ろせば真っ直ぐ見上げる視線。
 あ、この人真面目に言ってるぽい。
 隣のアステリが吹き出したのが聞こえて我に返る。

「結婚?」
「ああ。本当は破棄してすぐにでも申し込もうと思っていた」
「……ああ、結婚して囲い込もうってこと」
「え?」

 王家との結婚となれば強力な縛りになる。それを見越してきたの。
 あ、この手の流れは相場が決まってたな。ゲームにしろ漫画にしろ。確か……。

「えっと……婚約破棄してすぐに結婚を申し込んで?」
「え、あ、ああ」
「そのまま貴方の国に連れていく気だった?」
「ああ、そのつもりだった」
「連れていったら後宮とか離宮に住んでもらうとか?」
「あ、ああ。君が望めば」
「はっ」

 鼻で笑うと王太子殿下は目を丸くして驚いた。
 いやもう相場すぎる。

「テンプレおつですわあ」
「え?」

 不穏な私の雰囲気を察した王太子殿下が少し戸惑っている。

「お言葉ですが、アギオス侯爵令嬢」
「?」

 後ろの副団長が声を上げた。
 見た目ちゃらそう。仮称ちゃら男でいくかな。まあ場が場だから真面目にしてるけど。

「あの時あの場にて、王太子殿下が声を上げなかったのは俺が止めたからです」
「カロ、やめろ」

 テンプレという窮屈な型におさまるのも嫌だけど、ちゃら男くんの物言いにもイラっとした。
 言いたいことが分かってしまったもの。

「もしかして、あの時どうして助けてくれなかったのって私が言うとでも思ったわけ?」

 イライラが伝わったらしく頷くだけの副団長。

「違うよ。あれは誰かに助けを求めて無い物ねだりすることじゃない」
「アギオス侯爵令嬢」

 こんなもんか。もういいでしょ。お友達割もここまでだ。

「帰ってくれる? あとはアステリと昔話に花でも咲かせていいから」
「ま、待ってくれ、話を」
「はあ?」

 この期に及んでまだ話? しつこいな。

「保護の話ならお断り。勝手に城建てたのは申し訳ないから、なんなら城やめて普通の家にする。貴方の国に滞在することはもう少しだけ許して。その類のお金なら払う」
「違うんだ、俺は」
「結婚もお断りでーす。アステリあとよろしく」
「違う、俺は君と話が!」
「しつこいなあ」

 しつこい男は嫌われるよ。

「私、人と関わりたくないの。一人にして」
「俺は君のことが」
「お帰り下さーい」
「駄目だ、どうかもう少しだけ」
「もーちょっとイラっとした。あ、なんだかやれそうだな、うんやろう」
「おい、 待てまさか」

 どこからともなく剣をだした私を見て隣のアステリが血相を変える。
 イライラの割にモードがそっちに変わるなら好都合。どうやら私はテンプレという窮屈な展開から解放されたいらしい。

「スイッチ入った」
「待て、それはやめろ」
「というわけで第三王太子殿下、私自らお見送りしてあげる」
「え?」
「エフィ、剣を構えろ! 防御壁はれ!」
「え?!」

 なによ。アステリったら、あっちの味方して。

「くそが! 俺つえええモードは面倒なんだよ!」
「んーごめんねー? みなぎってきたわ」

 笑う。
 この笑い方と力の強さで魔王呼ばわりされてるんだよねえ。

「城半壊じゃ済まねえの知ってんだろ!」
「必殺技でるーむりー」
「どちくしょうが!」
「どういうことだ?」

 瞬間、転移した。
 城の上、空中。
 アステリったらやり方が荒い。
 私も彼も魔法が使えるから空中も自在で、思う存分やれそうだけど。

「え?!」

 言われた通り剣をかまえ、防御壁はってる。アステリの言う事ちゃんときいて真面目だな。
 ま、これなら大丈夫でしょ。

「いくよ?」
「え?!」

 剣を振り上げる。
 雷が轟いた。
 今日は雷な気分か。
 ちなみに日によって剣が呼ぶ属性は変わるんだよ、なんてね。

「さーいしょーかーら」
「ま、待て」
「クライマックスだぜ!」
「え?!」

 振り下ろした剣から、おおよそ想像のできない雷風が吹き荒れ轟いた。

「ええ?!」

 最後までついていけない第三王太子殿下が私の剣によって爆発した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる

夕立悠理
恋愛
 ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。  しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。  しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。 ※小説家になろう様にも投稿しています ※感想をいただけると、とても嬉しいです ※著作権は放棄してません

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります

cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。 聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。 そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。 村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。 かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。 そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。 やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき—— リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。 理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、 「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、 自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...