49 / 82
49話 恋のライバルモード
しおりを挟む
推しなんて概念、この世界にはないぞ。
「ええと、シコフォーナクセーの王陛下の対話を平民向けの新聞で拝読した時に知りました」
あのパリピめ。あーでも半年前くらいの小さな対談コラムにあった気がするなあ。私は意味が分かるからスルーしたような。いやでもだめでしょ、パリピ。抑えないと。こうして使っちゃうよくわからない子が出てきちゃうんだから。
隣でエフィが咳払いした。これ以上、自分の父親の発言掘り下げたくないよね。色々どんまいだけど。
「ピラズモス男爵令嬢」
「はい!」
「悪いが、先程も申し上げたように、私とアギオス侯爵令嬢は今後忙しくなる。全て終わった後、手紙から頂ければ」
「は、はい!」
「では送ろう」
そう言ってエフィが一歩踏み出す前に、私を見下ろした。
ゆっくり一度頷く。一国の王太子殿下に見送りさせるのもどうかと思うけど、ここは任せよう。
肯定の意図が伝わったのか、エフィがゆっくり元婚約者とピラズモス男爵令嬢の元へ進んだ。
「では外までご案内を」
「はい!」
そこで初めてピラズモス男爵令嬢はエフィに自己紹介をした。
社交界では元婚約者がべったりだったから、大してご挨拶まわりもしてなかっただろうし仕方ない。
そして軽く話す二人を見て気づいてしまった。
「あー……」
そうだった。ピラズモス男爵令嬢って物理的な距離近かったんだった。
パノキカト王城にいた時も近かったもんな。話ながら距離とってた時期が懐かしい。
ボディタッチはそうなかったけど、なぜかだんだん近づいてくるんだよね、あの子。
「……」
エフィもにこやかに対応してる。
せざるを得ないんだろうけど、愛想よすぎな気もする。
さっきの婚約云々はどうした。いや、それは話が別かな。たとえ婚約してる身でも人との距離はそれぞれだし。
「社交界でも貴族院でもお見かけしてて」
「そうでしたか」
というか、ゲームでエフィは攻略対象じゃない。
どこかの一文に出るだけで、シコフォーナクセーのキャラは第一王太子殿下と第二王太子殿下しか出てなかった。
だから別にここまでお近づきになる必要なんてないと思うんだけど。
「イリニさんともっとお話がしたかったんですけど……」
「それはまたの機会に」
「イリニさんはとても美しくて清廉で、」
「ええ分かります」
「本当ですか!」
ピラズモス男爵令嬢の華奢な手がエフィにのびる。
あーなんかちょっと嫌。
話が弾んでる二人の姿をあまり見たくない。
「そうなんです、イリニさんは」
ばちっと音がした。
静電気程度だろう、驚いたピラズモス男爵令嬢の手がエフィに触れることなく離れる。
いけない、力が出た。
驚いて目を丸くしてるピラズモス男爵令嬢は気づいていない。
「!」
こちらに振り返ったエフィと目が合った。
「っ」
気づかれた。
合わされた視線だけで。
足早にその場を後にする。
「アステリ、任せる」
「へーへー」
翻る流れで二人のやり取りが聞こえた。
まずい、追いかけてくる。
「やばっ」
謁見の間に入ってすぐ奥へ走る。
外に出れば元婚約者とピラズモス男爵令嬢と鉢合わせる可能性があるから、逃走経路は奥しかない。
「イリニ」
ああもう早い。追い付くのが早い!
「イリニ、さっきのは」
「……」
手をとられ引き寄せられてエフィの方に向かされる。
顔をあわせられなくて視線を彷徨わせれば、どこか上擦った声が降りてきた。
「さっきの……焼き」
「ここでは、ちょっと」
「イリニ」
「離して」
「嫌だ」
やめてよ、よりにもよってモードがあれとかないわ。
掴まれた手は離れない。もう片方の手でエフィを押した。ここは止むを得ない。暴力女子キャラモードで逃げよう。恥ずかしさ的にはすでにモード出てるし。
「あれ?」
胸を押してもびくともしなかった。
「暴力女子キャラモードなら効かない」
「え?」
「対策しているからな」
得意気に云うことじゃないってば。
何かしらの魔法なんだろうけど。
本当、エフィてば私のモードに慣れすぎてない? おかしくない?
「こ、こは誰か来るから、やだ」
「……ふむ」
ふわりと、浮く感覚に瞠目。あっという間に、エフィの顔が下に見えた。
膝裏に腕が通り、お尻からエフィの腕に座る形へ。
ああもう、こういう抱き方は幼女がやってもらうテンプレ!
「エフィ!」
「ぐぐ」
動くと不安定で思わずエフィの頭にしがみついてしまった。
エフィが唸ったからしめすぎたかと思って様子を見たけど、耳が赤くなってるだけだった。
「あ、苦しかった?」
「いや、違う」
「?」
「その、胸が」
「ひえ」
両手を離したら、後ろに倒れそうになって、急いでまたエフィにしがみつく。
結局、胸押し付けることになるという……あててない、あててないぞ。
「ごめん」
「大、丈夫だ」
そんなエフィを見てる間にどこかの部屋に入って扉が閉まる。今度は扉側にエフィが立っているから逃げられない。過去の体験から学びすぎでしょ。
「ここは?」
「俺の部屋だな」
扉しめちゃだめなやつ。
けど開けてくれそうにないし、あまつさえ抱っこからおろされた後は腰に片腕が通ってるから近すぎる。
「もう人は来ないな?」
「ち、近いって」
「さっきの」
「え?」
恥ずかしすぎるのに、うっかり見上げてしまったら、エフィとばっちり目があってしまった。
少し熱を帯びて蕩けた瞳。最近はこの目がエフィの心情をよく語るようになった。
「さっきのはモードか?」
「……」
「ラッキースケベとは違うな?」
「うっ……」
モードの一つだ。
出ることはないだろうと思ってたやつ。
『まあさしずめ、恋のライバルモードでしょうか!』
『ライバル?』
『好きな相手が自分以外の女性と仲良くしているのが許せない、かーらーの! 力で邪魔をしちゃう! これはつまり、その女性をライバル視しているのであって、』
『聖、もう少し簡潔に頼む』
『リーサったら! ここから面白くなるんですよ!』
『ええ……』
『根本は淋しい気持ちから出てくるモードですが、ラッキースケベとはまた違う良い味が出てるモードです。私の知っているシチュエーションで例えますね』
『長くなるな』
『そうですね』
ふと三人で話したモードの内容を思い浮かべてしまった。
ラッキースケベとは違う。淋しさからくるものではあるけど。
「イリニ」
「ん?」
ちょっと待った。
もう一度、回想中の聖の言葉がもう一度再生される。
『好きな相手が自分以外の女性と仲良くしているのが許せない、かーらーの! 力で邪魔をしちゃう!』
好きな相手。
「え?」
好きな、相手?
「ええと、シコフォーナクセーの王陛下の対話を平民向けの新聞で拝読した時に知りました」
あのパリピめ。あーでも半年前くらいの小さな対談コラムにあった気がするなあ。私は意味が分かるからスルーしたような。いやでもだめでしょ、パリピ。抑えないと。こうして使っちゃうよくわからない子が出てきちゃうんだから。
隣でエフィが咳払いした。これ以上、自分の父親の発言掘り下げたくないよね。色々どんまいだけど。
「ピラズモス男爵令嬢」
「はい!」
「悪いが、先程も申し上げたように、私とアギオス侯爵令嬢は今後忙しくなる。全て終わった後、手紙から頂ければ」
「は、はい!」
「では送ろう」
そう言ってエフィが一歩踏み出す前に、私を見下ろした。
ゆっくり一度頷く。一国の王太子殿下に見送りさせるのもどうかと思うけど、ここは任せよう。
肯定の意図が伝わったのか、エフィがゆっくり元婚約者とピラズモス男爵令嬢の元へ進んだ。
「では外までご案内を」
「はい!」
そこで初めてピラズモス男爵令嬢はエフィに自己紹介をした。
社交界では元婚約者がべったりだったから、大してご挨拶まわりもしてなかっただろうし仕方ない。
そして軽く話す二人を見て気づいてしまった。
「あー……」
そうだった。ピラズモス男爵令嬢って物理的な距離近かったんだった。
パノキカト王城にいた時も近かったもんな。話ながら距離とってた時期が懐かしい。
ボディタッチはそうなかったけど、なぜかだんだん近づいてくるんだよね、あの子。
「……」
エフィもにこやかに対応してる。
せざるを得ないんだろうけど、愛想よすぎな気もする。
さっきの婚約云々はどうした。いや、それは話が別かな。たとえ婚約してる身でも人との距離はそれぞれだし。
「社交界でも貴族院でもお見かけしてて」
「そうでしたか」
というか、ゲームでエフィは攻略対象じゃない。
どこかの一文に出るだけで、シコフォーナクセーのキャラは第一王太子殿下と第二王太子殿下しか出てなかった。
だから別にここまでお近づきになる必要なんてないと思うんだけど。
「イリニさんともっとお話がしたかったんですけど……」
「それはまたの機会に」
「イリニさんはとても美しくて清廉で、」
「ええ分かります」
「本当ですか!」
ピラズモス男爵令嬢の華奢な手がエフィにのびる。
あーなんかちょっと嫌。
話が弾んでる二人の姿をあまり見たくない。
「そうなんです、イリニさんは」
ばちっと音がした。
静電気程度だろう、驚いたピラズモス男爵令嬢の手がエフィに触れることなく離れる。
いけない、力が出た。
驚いて目を丸くしてるピラズモス男爵令嬢は気づいていない。
「!」
こちらに振り返ったエフィと目が合った。
「っ」
気づかれた。
合わされた視線だけで。
足早にその場を後にする。
「アステリ、任せる」
「へーへー」
翻る流れで二人のやり取りが聞こえた。
まずい、追いかけてくる。
「やばっ」
謁見の間に入ってすぐ奥へ走る。
外に出れば元婚約者とピラズモス男爵令嬢と鉢合わせる可能性があるから、逃走経路は奥しかない。
「イリニ」
ああもう早い。追い付くのが早い!
「イリニ、さっきのは」
「……」
手をとられ引き寄せられてエフィの方に向かされる。
顔をあわせられなくて視線を彷徨わせれば、どこか上擦った声が降りてきた。
「さっきの……焼き」
「ここでは、ちょっと」
「イリニ」
「離して」
「嫌だ」
やめてよ、よりにもよってモードがあれとかないわ。
掴まれた手は離れない。もう片方の手でエフィを押した。ここは止むを得ない。暴力女子キャラモードで逃げよう。恥ずかしさ的にはすでにモード出てるし。
「あれ?」
胸を押してもびくともしなかった。
「暴力女子キャラモードなら効かない」
「え?」
「対策しているからな」
得意気に云うことじゃないってば。
何かしらの魔法なんだろうけど。
本当、エフィてば私のモードに慣れすぎてない? おかしくない?
「こ、こは誰か来るから、やだ」
「……ふむ」
ふわりと、浮く感覚に瞠目。あっという間に、エフィの顔が下に見えた。
膝裏に腕が通り、お尻からエフィの腕に座る形へ。
ああもう、こういう抱き方は幼女がやってもらうテンプレ!
「エフィ!」
「ぐぐ」
動くと不安定で思わずエフィの頭にしがみついてしまった。
エフィが唸ったからしめすぎたかと思って様子を見たけど、耳が赤くなってるだけだった。
「あ、苦しかった?」
「いや、違う」
「?」
「その、胸が」
「ひえ」
両手を離したら、後ろに倒れそうになって、急いでまたエフィにしがみつく。
結局、胸押し付けることになるという……あててない、あててないぞ。
「ごめん」
「大、丈夫だ」
そんなエフィを見てる間にどこかの部屋に入って扉が閉まる。今度は扉側にエフィが立っているから逃げられない。過去の体験から学びすぎでしょ。
「ここは?」
「俺の部屋だな」
扉しめちゃだめなやつ。
けど開けてくれそうにないし、あまつさえ抱っこからおろされた後は腰に片腕が通ってるから近すぎる。
「もう人は来ないな?」
「ち、近いって」
「さっきの」
「え?」
恥ずかしすぎるのに、うっかり見上げてしまったら、エフィとばっちり目があってしまった。
少し熱を帯びて蕩けた瞳。最近はこの目がエフィの心情をよく語るようになった。
「さっきのはモードか?」
「……」
「ラッキースケベとは違うな?」
「うっ……」
モードの一つだ。
出ることはないだろうと思ってたやつ。
『まあさしずめ、恋のライバルモードでしょうか!』
『ライバル?』
『好きな相手が自分以外の女性と仲良くしているのが許せない、かーらーの! 力で邪魔をしちゃう! これはつまり、その女性をライバル視しているのであって、』
『聖、もう少し簡潔に頼む』
『リーサったら! ここから面白くなるんですよ!』
『ええ……』
『根本は淋しい気持ちから出てくるモードですが、ラッキースケベとはまた違う良い味が出てるモードです。私の知っているシチュエーションで例えますね』
『長くなるな』
『そうですね』
ふと三人で話したモードの内容を思い浮かべてしまった。
ラッキースケベとは違う。淋しさからくるものではあるけど。
「イリニ」
「ん?」
ちょっと待った。
もう一度、回想中の聖の言葉がもう一度再生される。
『好きな相手が自分以外の女性と仲良くしているのが許せない、かーらーの! 力で邪魔をしちゃう!』
好きな相手。
「え?」
好きな、相手?
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる