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78話 優先順位違う
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「自分も見ました! まさに奇跡で!」
エフィのとこの騎士ならそうなるかあ。エフィがきちんと信頼を得ていたからだろうけど、胸を貫かれた姿を見たら精神的に揺さぶられる。
私だって傾きかけたもの。
そこから聖女の魔法で奇跡的に助かる。なんてテンプレ劇だろう。
「アギオス侯爵令嬢は恩人です! 魔王だなんてとんでもない!」
一人がそう言ってくれると、その良い雰囲気が伝播していく。場の空気が柔らかく明るいものになっていった。
「そしたら、この子をどこにいてもらうか、かな?」
「こちらで預かりましょう」
振り向けば神官長が静かに私の掌の蜥蜴を見つめていた。
精霊王から啓示がもうあったと神官長を見ればすぐに分かった。さっきまでの暴走しているのを見れば嫌でもサラマンダーが精霊だと言うのが分かるし、早い内にここに戻って来ていたのかもしれない。
「神官長?」
「精霊王が遣わしたものです。再び暴走することはないでしょう。人の目に触れることで周囲も納得するのではないかと」
「この子は神殿に?」
「はい。精霊王からの啓示がありました。そちらは私から全て王陛下へご報告を」
神官長が王へ報告するならスムーズだし、預かりどころがあれば国民も安心だろう。この近隣諸国を精霊王の代わりに管轄するならサラマンダーにとってもちょうどいい。
「聖女様、いえアギオス侯爵令嬢」
「はい」
「今まで我々は聖女に頼りきりでした。国を年若い一人に背負わせるのは酷だというのに……我々はこれから精霊王の啓示である聖女制度の廃止と、こちらの精霊と共に国に尽力します。今更になりますが、貴方には自由に幸せに過ごして頂きたい」
「ありがとうございます」
そこまで深刻な話でもないけど、善意で言ってくれるなら応えよう。
「まあ既に自由で幸せにすごしてますけどね?」
「イリニ?」
「ね?」
左右に視線を移動し考えた後、小さく俺かと囁くエフィには返事しなかった。その内話せばいいよね、なんて。
「おー、いちゃついてるとこわりーんだが」
「いちゃついてない!」
アステリってばその台詞言い過ぎ。
人前なんだから、変なことしないし。
「まだ大団円には遠いぞ?」
この山がなと瓦礫を指差す。
話もそこそこに復興作業を再開する流れになった。
それを眺めながら、フェンリルとドラゴンを通して魔物も手伝うことになり、戸惑いながらも協力しあう姿はリーサが目指した世界なんだろうなとしみじみ感じる。
「じゃあ私も」
「待て」
「え、なにエフィ」
エフィの視線の先に呆然と立ち尽くす元婚約者の姿があった。
「あらら」
「イリニさん」
ピラズモス男爵令嬢が青い顔をしにながらも、こちらを見留め力なく笑った。
業務上連絡だけしてくか。
「神官長から話があるから、よくきいておいて」
「は、はい!」
「復興も大変だけど、外交も頑張ってね」
「はい!」
まだ報告を得てないから分からないけど、海向こうからの侵略問題は今後の課題だろう。侵略や戦争といった物騒なことになる前に外交で結果を出していった方がいい。
すると茫然自失の元婚約者が膝をついた。
「何も、出来なかった」
人への、私への暴言もなく、元婚約者はひたすら自分を責めていた。普段から何をしてもうまくできないことや、どう足掻いても私のようにうまくやれないという主旨の言葉が囁く言葉の端々に聞こえる。
もしかしたら、この人もただ単純に孤独だっただけなのかもしれない。
「お嬢さん」
「は、はい、イリニさん!」
「その人のこと、よろしくね」
どちらにしろ今回の王都の損壊の責任を問われることになる。そこをどう越えるかだ。
少なくともピラズモス男爵令嬢がいる限り孤独ではない。彼女もさすがヒロインと言うべきか、タフな精神してそうだし。
「いこ、エフィ」
「いいのか?」
今までされたことを考えるなら、一発殴るぐらいはあるのがテンプレ。でも特段ぼこぼこにする意欲がなかった。
責任問題を考えれば、誰かしらが断罪という名のテンプレを繰り広げてくれるだろう。それでいい。私は関わらずに遠くから、そんな話を聞いたでも十分だと思う。
「エフィ。私にたちには先にやることがあるでしょ?」
「ああ、そうか……そうだな」
エフィが笑う。なにかを納得してうんうん頷いていた。
「告白の返事だな」
「優先順位違う!」
復興とか人命救助からだってば。
エフィのとこの騎士ならそうなるかあ。エフィがきちんと信頼を得ていたからだろうけど、胸を貫かれた姿を見たら精神的に揺さぶられる。
私だって傾きかけたもの。
そこから聖女の魔法で奇跡的に助かる。なんてテンプレ劇だろう。
「アギオス侯爵令嬢は恩人です! 魔王だなんてとんでもない!」
一人がそう言ってくれると、その良い雰囲気が伝播していく。場の空気が柔らかく明るいものになっていった。
「そしたら、この子をどこにいてもらうか、かな?」
「こちらで預かりましょう」
振り向けば神官長が静かに私の掌の蜥蜴を見つめていた。
精霊王から啓示がもうあったと神官長を見ればすぐに分かった。さっきまでの暴走しているのを見れば嫌でもサラマンダーが精霊だと言うのが分かるし、早い内にここに戻って来ていたのかもしれない。
「神官長?」
「精霊王が遣わしたものです。再び暴走することはないでしょう。人の目に触れることで周囲も納得するのではないかと」
「この子は神殿に?」
「はい。精霊王からの啓示がありました。そちらは私から全て王陛下へご報告を」
神官長が王へ報告するならスムーズだし、預かりどころがあれば国民も安心だろう。この近隣諸国を精霊王の代わりに管轄するならサラマンダーにとってもちょうどいい。
「聖女様、いえアギオス侯爵令嬢」
「はい」
「今まで我々は聖女に頼りきりでした。国を年若い一人に背負わせるのは酷だというのに……我々はこれから精霊王の啓示である聖女制度の廃止と、こちらの精霊と共に国に尽力します。今更になりますが、貴方には自由に幸せに過ごして頂きたい」
「ありがとうございます」
そこまで深刻な話でもないけど、善意で言ってくれるなら応えよう。
「まあ既に自由で幸せにすごしてますけどね?」
「イリニ?」
「ね?」
左右に視線を移動し考えた後、小さく俺かと囁くエフィには返事しなかった。その内話せばいいよね、なんて。
「おー、いちゃついてるとこわりーんだが」
「いちゃついてない!」
アステリってばその台詞言い過ぎ。
人前なんだから、変なことしないし。
「まだ大団円には遠いぞ?」
この山がなと瓦礫を指差す。
話もそこそこに復興作業を再開する流れになった。
それを眺めながら、フェンリルとドラゴンを通して魔物も手伝うことになり、戸惑いながらも協力しあう姿はリーサが目指した世界なんだろうなとしみじみ感じる。
「じゃあ私も」
「待て」
「え、なにエフィ」
エフィの視線の先に呆然と立ち尽くす元婚約者の姿があった。
「あらら」
「イリニさん」
ピラズモス男爵令嬢が青い顔をしにながらも、こちらを見留め力なく笑った。
業務上連絡だけしてくか。
「神官長から話があるから、よくきいておいて」
「は、はい!」
「復興も大変だけど、外交も頑張ってね」
「はい!」
まだ報告を得てないから分からないけど、海向こうからの侵略問題は今後の課題だろう。侵略や戦争といった物騒なことになる前に外交で結果を出していった方がいい。
すると茫然自失の元婚約者が膝をついた。
「何も、出来なかった」
人への、私への暴言もなく、元婚約者はひたすら自分を責めていた。普段から何をしてもうまくできないことや、どう足掻いても私のようにうまくやれないという主旨の言葉が囁く言葉の端々に聞こえる。
もしかしたら、この人もただ単純に孤独だっただけなのかもしれない。
「お嬢さん」
「は、はい、イリニさん!」
「その人のこと、よろしくね」
どちらにしろ今回の王都の損壊の責任を問われることになる。そこをどう越えるかだ。
少なくともピラズモス男爵令嬢がいる限り孤独ではない。彼女もさすがヒロインと言うべきか、タフな精神してそうだし。
「いこ、エフィ」
「いいのか?」
今までされたことを考えるなら、一発殴るぐらいはあるのがテンプレ。でも特段ぼこぼこにする意欲がなかった。
責任問題を考えれば、誰かしらが断罪という名のテンプレを繰り広げてくれるだろう。それでいい。私は関わらずに遠くから、そんな話を聞いたでも十分だと思う。
「エフィ。私にたちには先にやることがあるでしょ?」
「ああ、そうか……そうだな」
エフィが笑う。なにかを納得してうんうん頷いていた。
「告白の返事だな」
「優先順位違う!」
復興とか人命救助からだってば。
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