22 / 164
1章 推しがデレを見せるまで。もしくは、推しが生きようと思えるまで。
22話 話しかけてきたのは珍しい人物だった
しおりを挟む
「さあお父様、行きましょう!」
「……ああ」
早朝、早速庭の中をウォーキングから開始だ。
私はしばらくすれば外にジョギングに出てしまうけど、父親はそのまま屋敷へ戻っていく。
「やはり夜は眠りづらいな…」
「そうですか」
「酒の量は控えるよう努めたんだが」
急には難しいことを再度伝え、専属医が示した酒の減量を試していくしかない。
そしてふと夜寝る為にはどうしたらいいか閃いたぞ。
「お父様、寝る前にお時間ありますか?」
「ああ…どうした?」
「ストレッチしてみましょう」
「すとれっち?」
適宜内容を説明する。
折角だからヨガも取り入れて瞑想も行っていこう。
続ければ、それが快適な安眠にもつながっていくだろうし、寝る前のルーチンになれば、ストレッチ=眠りというスイッチに変わっていくはずだ。
「わかった。時間をあけるようにしよう」
「お願いします。折角なので皆でやってみましょう」
「皆?」
おっと、メイド長さんや執事長さんも一緒にとは思ったけど、やはりこの世界にそういう概念はないのか。
けど私以外の人もやって損はないので、そこは試しに今日誘ってみよう。
こうなるとジャージの追加注文もしないとな。
「それではお父様、失礼します」
「ああ、気を付けて」
父親と別れ、いつもの道をひた走る。
「チアキ」
「ん?」
オリアーナが走りながら話しかけてくるのに応えるとオリアーナが父は治るのかときいてくる。
何度かきくあたり、かなり気になる事なのだろう。
そして私の回答も毎回同じ。
「お父さん次第だよ」
私は治そうと意志のある者に対してなら出来る限り協力するけど、と加える。
今の感じからいくとだいぶ見込みあると思うけど、そこは継続出来るかで大きく変わる。
ようはモチベーションが続くかどうか。
それを自分でコントロール出来るかだ。
そういった面も訓練するのが今回のプランニングでもあるわけで。
「………はい…その」
「何?」
「チアキの知識では…」
「うん?」
「姉は、目を覚ますのでしょうか」
おっと、ききたいのはこっちか。
さすがに植物状態から起こすとなると専門的すぎて私には難しい。
けど可能性は模索したい。
その為には、エステルとトットから詳しくこの世界についてきくことと、オルネッラがどういう状況なのか改めてよく知る必要がある。
「条件が揃わないとなんとも言えないね」
「そうですか…」
「だから今はひたすら情報収集ってやつかな」
「それは…」
「準備段階ってやつだよ」
にっこり笑って返すけど、オリアーナがどう思ってるかいまいち分からなかった。
確かにオリアーナが自殺志願に至るにあたって発端となったのは母と姉の事故だろう。
けれどここで姉が植物状態から目覚めたとして、オリアーナの周囲の環境が解決するとは考えにくい。
どちらにしろ時間がかかるなら、まずはオリアーナの周囲から考えていくのが彼女が自殺志願に至らない良い道筋なのではと思っている。
そこは彼女に話さないけど。
どちらにしろ彼女が姉の目覚めを望んでいるなら、他のことと並行して考えていくとしようじゃないか。
オリアーナはすでに私の推しだ。
クールキャラのデレの為に尽力させて頂きますとも。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「チアキ、ここ最近貴方が変わった姿で走る様子を見たという話が」
「ん?なんて?」
「チアキ、ひとまずこちらで落ち着いて話さないか」
中庭、校舎を前にして垂直飛びをする私に遠慮がちに話しかけてくるエステル。
私の想像通り、ここに転移する際に得た超人的な力とかではなく、単純に重力の問題だったようだ。
垂直飛びで2階に手を付けられるってそうないだろう。
世界記録は2mいってなかったはずだから、もうオリンピックで金メダルとれるレベルだ。
徐々にこの世界の重力になれてしまい、普通の人程度の力になっていくのだろうけど、しばらくは筋骨隆々の男性も真っ青なくらい力技を発揮できると言う事…それは実に楽しそうだ。
「やはり重力」
「どうしたの?」
「今だけスーパーマンみたいなものなのさ、私」
「すーぱー?」
空を箒なしで飛んでみせたり、人が持てない重いものを魔法なしで持ち上げてみせたり、大地に掌底打ちでもすれば地面を割るし、水の上も走れるだろう。
ようは魔法なしでもとっても強いよという話。
それをエステルにまま言えば、パソコン越しに話していた時と同じで驚きながらも頷いてくれる。
可愛い子に話きいてもらえるって幸せなことだな。
「ステラ、チアキに話す事があるのだろう?」
「ああ、そうだったわ。チアキ」
変わった姿で走る様子と。
変わった姿…ジャージ姿な朝のジョギングが見られていたということだろう。
それもそうか、帰り道は馬車通りを横目に走っている。
私の家の方向は学園への道でもあるわけだから、必然的に学園の生徒達が私のジョギング姿を見ることになるのは言うまでもない。
「うんうん走ってるよ!健康維持ね!」
「健康維持?」
「ジョギングって言うの。なかなかいいよ!」
「そうなの」
エステルがジャージ着たら可愛いんだろうな…トットが着たら何故か格好よく見えるんだろうな。
可愛い子は何を着たって可愛いしイケメンは何着たってイケメンなんだろうけど。
こっそり2人分のジャージ発注しよう。
いや、ここはかねてから考えていた本格的なランニングウェアを着てもらうのもありだ。
「ガラッシア公爵令嬢」
「はい?」
話しかけてきたのは珍しい人物だった。
「……ああ」
早朝、早速庭の中をウォーキングから開始だ。
私はしばらくすれば外にジョギングに出てしまうけど、父親はそのまま屋敷へ戻っていく。
「やはり夜は眠りづらいな…」
「そうですか」
「酒の量は控えるよう努めたんだが」
急には難しいことを再度伝え、専属医が示した酒の減量を試していくしかない。
そしてふと夜寝る為にはどうしたらいいか閃いたぞ。
「お父様、寝る前にお時間ありますか?」
「ああ…どうした?」
「ストレッチしてみましょう」
「すとれっち?」
適宜内容を説明する。
折角だからヨガも取り入れて瞑想も行っていこう。
続ければ、それが快適な安眠にもつながっていくだろうし、寝る前のルーチンになれば、ストレッチ=眠りというスイッチに変わっていくはずだ。
「わかった。時間をあけるようにしよう」
「お願いします。折角なので皆でやってみましょう」
「皆?」
おっと、メイド長さんや執事長さんも一緒にとは思ったけど、やはりこの世界にそういう概念はないのか。
けど私以外の人もやって損はないので、そこは試しに今日誘ってみよう。
こうなるとジャージの追加注文もしないとな。
「それではお父様、失礼します」
「ああ、気を付けて」
父親と別れ、いつもの道をひた走る。
「チアキ」
「ん?」
オリアーナが走りながら話しかけてくるのに応えるとオリアーナが父は治るのかときいてくる。
何度かきくあたり、かなり気になる事なのだろう。
そして私の回答も毎回同じ。
「お父さん次第だよ」
私は治そうと意志のある者に対してなら出来る限り協力するけど、と加える。
今の感じからいくとだいぶ見込みあると思うけど、そこは継続出来るかで大きく変わる。
ようはモチベーションが続くかどうか。
それを自分でコントロール出来るかだ。
そういった面も訓練するのが今回のプランニングでもあるわけで。
「………はい…その」
「何?」
「チアキの知識では…」
「うん?」
「姉は、目を覚ますのでしょうか」
おっと、ききたいのはこっちか。
さすがに植物状態から起こすとなると専門的すぎて私には難しい。
けど可能性は模索したい。
その為には、エステルとトットから詳しくこの世界についてきくことと、オルネッラがどういう状況なのか改めてよく知る必要がある。
「条件が揃わないとなんとも言えないね」
「そうですか…」
「だから今はひたすら情報収集ってやつかな」
「それは…」
「準備段階ってやつだよ」
にっこり笑って返すけど、オリアーナがどう思ってるかいまいち分からなかった。
確かにオリアーナが自殺志願に至るにあたって発端となったのは母と姉の事故だろう。
けれどここで姉が植物状態から目覚めたとして、オリアーナの周囲の環境が解決するとは考えにくい。
どちらにしろ時間がかかるなら、まずはオリアーナの周囲から考えていくのが彼女が自殺志願に至らない良い道筋なのではと思っている。
そこは彼女に話さないけど。
どちらにしろ彼女が姉の目覚めを望んでいるなら、他のことと並行して考えていくとしようじゃないか。
オリアーナはすでに私の推しだ。
クールキャラのデレの為に尽力させて頂きますとも。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
「チアキ、ここ最近貴方が変わった姿で走る様子を見たという話が」
「ん?なんて?」
「チアキ、ひとまずこちらで落ち着いて話さないか」
中庭、校舎を前にして垂直飛びをする私に遠慮がちに話しかけてくるエステル。
私の想像通り、ここに転移する際に得た超人的な力とかではなく、単純に重力の問題だったようだ。
垂直飛びで2階に手を付けられるってそうないだろう。
世界記録は2mいってなかったはずだから、もうオリンピックで金メダルとれるレベルだ。
徐々にこの世界の重力になれてしまい、普通の人程度の力になっていくのだろうけど、しばらくは筋骨隆々の男性も真っ青なくらい力技を発揮できると言う事…それは実に楽しそうだ。
「やはり重力」
「どうしたの?」
「今だけスーパーマンみたいなものなのさ、私」
「すーぱー?」
空を箒なしで飛んでみせたり、人が持てない重いものを魔法なしで持ち上げてみせたり、大地に掌底打ちでもすれば地面を割るし、水の上も走れるだろう。
ようは魔法なしでもとっても強いよという話。
それをエステルにまま言えば、パソコン越しに話していた時と同じで驚きながらも頷いてくれる。
可愛い子に話きいてもらえるって幸せなことだな。
「ステラ、チアキに話す事があるのだろう?」
「ああ、そうだったわ。チアキ」
変わった姿で走る様子と。
変わった姿…ジャージ姿な朝のジョギングが見られていたということだろう。
それもそうか、帰り道は馬車通りを横目に走っている。
私の家の方向は学園への道でもあるわけだから、必然的に学園の生徒達が私のジョギング姿を見ることになるのは言うまでもない。
「うんうん走ってるよ!健康維持ね!」
「健康維持?」
「ジョギングって言うの。なかなかいいよ!」
「そうなの」
エステルがジャージ着たら可愛いんだろうな…トットが着たら何故か格好よく見えるんだろうな。
可愛い子は何を着たって可愛いしイケメンは何着たってイケメンなんだろうけど。
こっそり2人分のジャージ発注しよう。
いや、ここはかねてから考えていた本格的なランニングウェアを着てもらうのもありだ。
「ガラッシア公爵令嬢」
「はい?」
話しかけてきたのは珍しい人物だった。
0
あなたにおすすめの小説
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について
えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。
しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。
その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。
死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。
戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
リトライさせていただきます!〜死に戻り令嬢はイケメン神様とタッグを組んで人生をやり直す事にした。今度こそ幸せになります!!〜
ゆずき
恋愛
公爵家の御令嬢クレハは、18歳の誕生日に何者かに殺害されてしまう。そんなクレハを救ったのは、神を自称する青年(長身イケメン)だった。
イケメン神様の力で10年前の世界に戻されてしまったクレハ。そこから運命の軌道修正を図る。犯人を返り討ちにできるくらい、強くなればいいじゃないか!! そう思ったクレハは、神様からは魔法を、クレハに一目惚れした王太子からは武術の手ほどきを受ける。クレハの強化トレーニングが始まった。
8歳の子供の姿に戻ってしまった少女と、お人好しな神様。そんな2人が主人公の異世界恋愛ファンタジー小説です。
※メインではありませんが、ストーリーにBL的要素が含まれます。少しでもそのような描写が苦手な方はご注意下さい。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる