元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女

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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録

90話 連れ去られる

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「血が出やすくなったのは繋がりを利用するようになったからさ」
「その身が要件を満たしていないのに無理に使おうとすれば当然身体の方にガタがくる。脳の稼働率が高すぎて負担がかかり血の巡りに影響し粘膜の弱い所から排出されるというわけだ」
「自身の性癖にかこつけて誤魔化していたな」

 サクが私のことを妄想して鼻血をよく出していたのは単なるふざけた話じゃなかったってこと?

「このままのペースで繋がりを使えば他からも血を排出するだろうな」

 鼻血でなければ口から吐くとか? そうなると身体の至る部分にダメージがいってることになる。

「なんでそこまでして」
「好きな女性を前に格好いい所を見せたいが一番だろうな」
「おかしいよ。だってこのままじゃ……」

 無理に身体を酷使していたらどうなるか想像がつく。

「このまま同じことをしていればサクはいずれ死ぬな」
「死んじゃ困るんでしょ」
「あの血筋が途切れるのは困る。聖人の血は薄くても世に必要であるのは、この十年サクが改革を進め平和な世に進もうとしている事で分かるはずだ。だからこそ我々はクラスの側にいる」

 サクを生かす為。
 サクが危うい道にいかせない為。
 最後に今のサクをどうにかする為。

「どちらにしてもサクが脳の稼働率を上げるのはどのルートでも同じだ。そこにクラス、君がいることで唯一止められる可能性がでるのだよ」
「私がサクを止めるの?」
「ああ」

 どうやって? 私の為に使っている部分もあるのに?
 ここぞという時、サクは割と頑固をこじらせて譲らないところがある。けど。

「サクが早くに死んじゃうのは嫌だよ」
「ああ」
「我々も同じ気持ちだ」

 私が死の呪いで早くに亡くなる代わりにサクには生きてほしいと思っていたのに、サクは私と同じ道を辿ろうとしている。
 それは嫌だ。
 サクには生きてほしい。幸せになってほしい。私のこと関係なく、サクが笑える未来がいいのに。

「クラスは生きたいか?」
「私?」
「そうだ」
「……最初は呪いで死んでもいいかなって思ってたよ。充分幸せだったから」

 最初は今迎えたこの春、呪いで死んでもいいと思っていた。
 残りの日を快く過ごす為に所在抹消をしたいと思ってここに来たけど今は全然違う。サクに看取られたいを超えた思いが出てきてしまった。

「でももう……」

 サクが来てから私の周囲はあたたかく華やかになった。側にサクがいるのが当たり前で、時間はあっという間で。もっと続いてほしいと思ってる。
 サクと一緒にもっといたいと、本当は十年前からずっと思っていた。その気持ちには蓋をして見て見ぬ振りだったのに、サクを失うかもしれないという思いが蓋を開けてしまう。
 今が充分幸せだからと誤魔化して目を逸らすことをもうやめないと。サクの言ってた通りそこから脱しないと私の望みに辿り着かない。

「……長生きしたい。サクと一緒に長く生きたい」
「ではそれをサクに伝えないとな」
「うん」
「ならば早速死を乗り越えるか」
「……うん」

 フィクタのとこに来たのはたぶんそういうことだ。
 私は自分が生きたいと思ったから、呪いを破るためにフィクタのとこに来た。
 終わらせなきゃいけないというのは、本当のところ生きる為なんだ。

「第一皇子妃がお越しです」

 立ち上がってしっかり前を見据えた。

「相変わらず辛気臭い顔をしているわね」

 十年前となにも変わらない姿だった。見ただけで妙な緊張が走る。

「まあいいわ。学のないお前が来るとは分かっていたし」
「……」

 フィクタは自身の両側に控える護衛騎士に目配せをする。するりと前に出て私の腕をとろうとしたのを、思わず手で払ってしまった。

「触らないで」

 少し眉を震わせ、フィクタが手に持つ扇で口元を隠す。瞳は不快感を示していた。

「生意気ね」
「なにをしたいんですか?」
「元に戻すだけよ」

 なにをと言う前に腕をとられてしまう。引きずられるように連れていかれたのは本棚の裏にあった隠し通路だった。

「黙ってついてきなさい」

 イルミナルクスの彼を想うならと囁く。やっぱりサクに危害を加える気ね。

「クラス大丈夫だ」
「我々がいる」

 ドラゴンとフェンリルが囁く。この場の人間には聞こえていない。やっぱり二人のことに気づける人物には限りがある。

「……」

 隠し通路が沢山あるとは思っていたけど、後宮にもあるなんて知らなかった。たどり着いた先は外で、使用人がよく洗濯を干す場所だった。
 馬車は用意されていて私は使用人用の馬車に押し込められる。ドラゴンとフェンリルが一緒に乗ることに侍女は眉をしかめるもフィクタがなにも言わないのでスルーしてくれた。
 フィクタを覗き見ると余裕のない焦りを滲ませている。なにをそんなに急いでいるのだろう。

「どこへ行くんですか」
「言う必要がないわね。黙って中にいなさい」

 扉を閉じられ鍵を外からかけられる。この日の為に外に鍵をつけたのなら相当なものだ。
 程なくして馬車は静かに出ていった。小さい小窓から頑張って外を覗くと、どうやら前方にフィクタの馬車、二つの馬車を囲うように護衛騎士が複数いるようだ。

「……」

 席に座り直し息をつく。さてどうしたものか。
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