元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女

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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録

91話 フィクタのシナリオ

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「クラス折角だ、時間でも潰そう」
「余裕だね」
「想定内だからな」

 呑気にドラゴンとフェンリルが雑談をまじえてくる。気になった続きでもきこうかな。

「ねえ聖女制度ってなくなったんじゃなかったの?」

 大昔に失われたものだと言っていたし、古い文献にも聖女制度は撤廃、以降聖女は排出されていなかったはずだ。なぜ今サクが聖人であることを重要視して守らないといけないのだろうか。

「制度はなくなったさ」
「だがサクは繋がってしまったからね。偶然聖女が発現した」
「発現したならば我々は聖女を見守るのが仕事。なに、大昔の約束だな」

 そして繋がったサクには私の生存が不可欠。私次第。

「クラス、君の気持ちを強制してるわけではないんだ」
「事実、サクは君が生きているだけで充分だと言うだろう」

 ちょっと前にふざけて言い合った内容だった。今回は真面目な話。

「サクは君と別れる事になっても受け入れる事が出来る」
「生きていればいいと言ってな」

 私がどんな選択をしても許してくれる。そこにサクの痛みがあろうとなかろうと関係なくだ。
 それすらも甘やかされているのではと思える。
 私には私のしたいことをきく割に、サクは自分の事を蔑ろにする覚悟を持っているなんておかしい。私にしたいことをと言うのなら、サクはサクのしたいことを突き通してからにしてよ。
 散々甘やかされたことを思い出す。そもそもサクは私と結婚する為に、甘やかす為に一緒に暮らしていたのに、一番大事な選択については私に自由を与える気だ。全然納得がいかない。私が生きるけどサクと一緒にはいない選択をとってもサクは自分の気持ちを曲げて私を優先するのは違う。
 私ばかり優先してるサクに苛立ちを覚える。しかも大事なことを話してもくれてない。

「はいそうですかってならない」

 納得いかないかと二人が笑う。

「おかしいでしょ」
「勿論最善はクラスと共にある事だし、サクもそう望んでいる」
「でもいざとなったら、さよならできるんでしょ」
「そうだな」
「……あとでサク殴る」
「おや」
「良いのではないか」

 ドラゴンとフェンリルが楽しそうだ。
 なんだか妙だった。私の気持ちを煽るように話しているような気もする。というより、どうして今になってこの話をするのだろう。それを考えた時、一つの可能性が頭をよぎった。

「もしかして……私の気持ちが決まるまで言うの待ってた?」

 二人が機嫌良さそうに目を細める。

「ということはクラスの気持ちは決まったのかな?」

 分かってるくせにやっぱりそう言うの。でも待って。それって私の気持ちの小さなところから察していて固まるまで待ってたってこと? 私とサクを眺めながらずっと?

「もう……意地悪」

 それはそれで恥ずかしい。ドラゴンとフェンリルはサクが来てもずっと一緒に暮らしていたから、ぞっと見られていたことになる。内心ふーんとかへーとか思いながら見てたってことだ。

「きちんと言葉にしてあげなさい」
「言ったらすごいことになりそうだよ?」
「卒倒しそうだな」
「意識が戻るまで何分かかるか賭けるか」
「やめてよ」

 クラスの素晴らしいところはね、とドラゴンが囁く。

「他者の運命を変えられる所だ。昔、クラスの血筋でいたな」
「そういうルートなんでしょ?」
「選択肢が狭まったのはクラスの力故さ」

 私の御先祖様も昔変えたことがあるらしい。その血を継いでる? でも人同士なら多かれ少なかれ影響しあうと思う。私だってサクと関わって変わったもの。

「ドゥークス伯爵」

 いいところで呼ばれてしまった。仕方なく外に出る。
 フィクタも護衛騎士も侍女も揃って外に出いていた。

「ここは」

 ウニバーシタス北側の帝都境、帝都に張り巡らせた水路の最初がある場所だ。

「アチェンディーテ公爵が先陣きって造った水路はウニバーシタス帝国を危機に陥れるものだった」
「え?」
「公爵は魔女を利用しウニバーシタス帝国を滅ぼそうと画策、多くの帝国民の命が奪われながらもウニバーシタス帝国正当後継者であるレックス第一皇太子とその妃が、公爵と魔女を撃ち滅ぼしウニバーシタス帝国に平和を齎した、というところかしらね」

 隣の護衛が大きな酒瓶を取り出す。

「十年前は潰されたけど、おかげでこの筋書きでうまくいきそうよ」
「十年前って、まさか」
「学のないお前でも分かるの? まあ折角だから教えてあげるわ。十年前、私が調合した酒を流通させたの」

 十年前、酒屋に行って酒の粗悪品の話をした。サクと再会してからも何度か聞いた話だし、直近また出回ったとヴォックスたちも言っていた。

「でももう出回らないって」
「ええ、十年前に潰されたから。けど今はこれがある」

 水路を指して言う。

「この規模のものを用意するには骨が折れたけど何度か試しもしたし充分良い頃合いだわ」

 十年前はサクが防いだ。今回はフィクタもいくらか準備していた。酩酊者が出ていたのは水路を使ったという話があったけどフィクタだったのね。

「水路を使う……」
「学のないお前にも分かったかしら?」
「水路によくないお酒を流すんですか」
「そうよ。これは本来酒ではないけど」
「この規模の?」

 帝都の面積を考えると難しい。水路の水で薄くなってフィクタの望む効果がなくなるはずだ。

「だから濃縮して帝都の大部分に影響する程度で作ったのよ」

 全滅はさせないという。証人がほしいからだ。

「亡き公国の魔女がやったというのを帝都の民に証明してもらわないといけないわ。だから一割から三割ぐらいは生かすの」
「え?」
「公国を併合された事を逆恨みした魔女が恐ろしい魔法を使って水路の水を毒に変えた、というところね」

 筋書きとしては上等でしょと笑う。
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