元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女

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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録

95話 フィクタの素性偽造

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 「顔が同じ可能性に辿り着ければ早いものです」

 本当は同じ顔の騎士が水路に異物を撒くのを現行犯で捕らえ未然に防ぎたかったらしい。結局それは起きてしまったけど、一際大きな事件になる前にこうして捕らえることが出来た。

「そもそも貴方が混入した異物は連合国家範囲内で手に入らない。完全な分析には至らなかったですが、分かった成分全てがフィクタ嬢、貴方の本当の故郷でないとないんですよ」
「フィクタの故郷?」

 第一皇子が眉を顰める。

「マギア公爵家はウニバーシタスの東中心部を管理する由緒ある家柄ではないか」

 第一皇子の言葉にサクが残念だと言わんばかりに肩を落とした。

「マギア公爵家にフィクタの年の娘はいません」
「え?」

 第一皇子がフィクタを見る。顔をこわばらせたフィクタが瞳を揺らして動揺していた。

「マギア公爵夫妻はフィクタが現れてから社交界で姿を見ていませんね」

 公爵家の屋敷にヴォックスが立ち入った時は夫妻含め使用人すらいなかったそうだ。フィクタが震える声で囁く。

「旅行にでも出ているのでは」
「いえ、いましたよ。公爵家の隠し部屋の中に」

 ヴォックスたちの成果だった。旅行なのかと足取りも念のため探したが見つからず、使用人は理由なく解雇されていた。隠し部屋の中に夫妻だったものが声もなくいただけ。

「貴女がマギア公爵令嬢として第一皇子に会う前には亡くなっていたようです」
「しかし婚姻の署名は」
「体調不良を理由に式には不参加、署名は省略していました」

 当時の書類まで用意していた。ユツィが破損を防ぐために額縁にいれ掲げた書類には確かにマギア公爵家のサインはない。

「マギア公爵家の髪色に変えたりしてたようですが、瞳の色はマギア侯爵家にはでない色。挙げ句異物を仕入れるために自国とやり取りしてたのが仇になりましたね。故郷がすぐに知れましたよ」

 なにも言えなくなるフィクタを見て第一皇子が驚きに震えていた。サクに視線を寄越して問う。

「フィクタは誰だ?」

 サクが東の国の名を出すが知るものが圧倒的に少なかった。東の大陸は広大で小国がいくらでもある。詳しく知る人間はそういない。

「身分や個人情報の詐称は国家連合内でも罪になります」

 挙げ句、マギア公爵夫妻の殺害もフィクタだと言う。水路に撒いたものと同じものを混ぜて。

「マギア公爵夫妻を殺害した際に使用したティーポットとカップを当時の侍女が不審に思い、ウニバーシタスのとある機関に提供していました。その分析結果が残っていまして」

 それは今回の酒の粗悪品、水路への異物混入にも繋がっていき、今ここにこういう形で成果を上げた。精度は低くても立証するには十分だったと。

「フィクタ嬢、貴方侍女としてマギア公爵夫妻の元にいたらしいですね。夫妻の元で働くときにはフィクタの名前を使っていたので足取りがとりやすかった」
「そんな証明できるはずが」
「できますよ。マギア公爵夫妻は子供がいなかったし跡を継ぐ者もいなかった。その為、夫妻管轄の仕事や多くの書類を移譲してました。その先が皇帝陛下です」

 爵位を持つ人間が廃嫡となる時は概ね国へ返上する。マギア公爵夫妻も国へ返す目的で動いていたのだろう。

「皇帝陛下とマギア公爵夫妻の署名つき書類もあるので移譲に関する事は証明されています。夫妻は行き場の失う下働きの事をとても心配していたようで、継ぐ者がいなければとよく話していたようです」

 では皇帝陛下はなぜフィクタの存在を許したのか。フィクタが継ぐことで侍女たちの進路は安泰となったと思われたらしい。第一皇子との結婚の際、フィクタはそう嘯いていた。
 そもそもフィクタの存在をマギア公爵家の令嬢として認知させる為にやはり自国の異物を使っていたという。
 そんな話、サクってば全然してくれなかったじゃない。確かに過去と今の酒の粗悪品といい、城に来る直前に水路に異物がと話もあった。サクのフィクタに対する偽物として見るニュアンスはここからきていたってこと? てっきり聖女であることを偽っているってことだけかと思ってた。分かりづらいわ。

「貴方がマギア公爵家に下働きでいた事を多くの証言や書類から証明できます」
「嘘よ、そいつら全員嘘ついて」
「貴方が東の国と取引していた事も証明出来ます」

 貿易は国同士の利益がかかっているから記録に残っていることが多い。フィクタのことももれなく記載があったという。
 裏での取引だろうによく足がついたものね。そう思っているとサクが私にだけ聞こえる声で囁く。

「過去の記録は中々手こずりましたが、十年前からセーフティ張っておいたので」
「準備してたの」
「んーまあどちらにしたって彼女の母国が厳しくチェックしてましたよ。東の国とのやり取りは大変でしたけど、最終的には情報もらえましたし」

 フィクタの母国がなにもしなかったのは、仕入れていた異物が彼女の母国では違法としてみなされていなかったからだ。けどこの十年間のことを鑑みて、国として正式な決断を国家連合に伝えていた。 

「フィクタ嬢の故郷である東の国からは、フィクタ嬢に関する処遇は国家連合が受け持つようにと決定通知がきました。書面もここに」
「な、にを」

 ここで自身の出身を認めてしまうわけにはいかなかったフィクタは言葉に詰まった。認めても国家連合の裁判にかけられるし、ウニバーシタスの人間と言い続けても国家連合の裁判にかけられる。彼女に裁判を受けずに逃げる選択肢はなかった。

「では詐称に相応する罪の告知については最後にしよう」
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