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2章 変態宰相公爵の、魔女への溺愛ストーカー記録
96話 フィクタの欲、皇子の思考
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話は酒の粗悪品、水路の異物混入に移った。
「サク、異物って?」
「んー、芥子みたいなものです」
酩酊効果のある異物は植物から抽出するらしい。二人だけで話していた会話を聞いたフィクタが憎々しげに笑った。
「芥子ではないわよ。あれは加工に時間がかかるもの」
「おや認めますか」
サクが無表情に言いのけるのをフィクタが睨み歯噛みする。
ドラゴンが私の肩に乗り、フェンリルが側に立った。いつもの小さいサイズになっている。
「芥子はもっと先の話さ」
「それにその手の事は起きないようにする」
「そう?」
東は誰が管轄していたとドラゴンとフェンリルが話し始めた。やれガルーダがどうとか青龍がどうとか言って盛り上がり始めたところでサクが二人を制した。私たちにしか聞こえなくても今はその話をする時ではないものね。
「人を酩酊状態にして何をする気でした?」
「……」
「これはフィクタ嬢だけではなく第一皇子も関わっていました。皇子殿下、もう一度お話し頂いても構いませんよ」
「……」
「お前達がいなければ円滑に進んだものを」
第一皇子レックスは言葉を発しない。かわりにフィクタが話した。
「お前達がいなければ彼が皇帝になり、そのまま領土拡大が可能だったのに」
「貴方方は国家連合成立を阻止したかった?」
「ええそうよ。だから酒を使い帝都を混乱させて内戦状態にして、お前達が仕組んだ事にすれば邪魔も消える。民の感情の矛先を他国にする事も出来たのに」
サクがイルミナルクスの人間だから、ウニバーシタスで騒動を起こせばイルミナルクスに対して開戦の宣告ができる。サクをイルミナルクスがウニバーシタスを乗っ取る為に送り込まれた刺客としてでっち上げて。
「そもそもそちらに呼ばれて来たんですがね」
刺客を呼び寄せる国はないだろう。けどフィクタはそれでやれると踏んでいたらしい。
「お前達二人は本当に邪魔だった」
サクが刺客、私は国を併合された恨みでウニバーシタスに復讐しようとしたと動機付けができる。私達に理由を作って罪をなすりつけることは可能だ。
私とサクは大体二人一緒だった。騎士の治癒やシレのところに行っていたとしても大半の時間を二人だけで過ごしている以上、異物を混入していない証明はできない。
「十年前はうまくいかなかった。だからこの人が一時的に戻って来たタイミングでお前達を失墜させ、今度こそ領土拡大の方向へ行こうとしたのよ」
「戻って来れるよう仕向けてまで?」
皆で旧ステラモリスでご飯を食べてた時、第一皇子は一時的にウニバーシタスに戻って来ていると聞いた。それも現皇帝の体調不良があったからだ。
「侍女を使って皇帝に飲ませましたね」
それも一度だけではない。今も皇帝はフィクタが用意したもので体調を崩している。
全てはウニバーシタス領土拡大の為、戦争を起こす為、第一皇子を皇帝にする為。
「この人が皇帝になれば、私はその妃として全てを見渡せる。現皇帝は何もしない腰抜けだわ。なら早く動いてこの人に立ってもらわないといけない」
第一皇子が皇帝になれば、フィクタはその妃となる。ウニバーシタスが領土拡大に成功すれば世界を統べるも同然だ。
「そんなに一番になりたいんですか」
「お前には分からないわよ。生まれから恵まれて持っていたのだから。いくら奪っても平穏に過ごして、そのくせ何をしなくても人が集まってくるのだから腹が立つわ」
「そんな、私は」
「五月蠅い」
戦争を起こしてまで一番という立ち位置を欲しがるフィクタの気持ちは分からない。私は静かに暮らしている方が好きだから、表に立ちたいフィクタのことは理解できなかった。
「もはや戦犯だな」
どこかの代表が囁く。
「マーロン侯爵」
「ああ」
まだ採決も終わってない中、この前ウニバーシタスで出会った男性が静かに告げる。
「こちらの収容所で預かる準備は出来ている」
南の、海を越えた先の国の収容所に、今度は十年前とは違ってきちんと罪人として入るということ? 福祉活動に従事という域を越えてしまっているのは明らかだけど。
「今までの待遇はない。他の罪人と同じ牢、同じ食事に同じ労働に従事してもらう」
「私は聖女ですよ? 庶民の罪人と同じ扱いなど」
「これが貴方の罪ですよ」
「そ、もそも裁判だというのなら独断で先行して決める事ではないでしょう!」
では裁決をするかと問うと黙り込む。隣のサクが私にだけ聞こえる声で、衣食住揃ってるだけマシと思えと悪態をついた。聞こえていないマーロン侯爵は冷静に続ける。
「貴方方が自ら罪を認め受け入れるというなら裁決をせずともこちらは受け入れるが?」
「っ! 最大の侮辱です! 私達は正しい方へ導いているというのに。言葉を改めなさい」
周囲から溜息が漏れた。罪を認めるという選択肢は二人にはない。
「第一皇子とフィクタ嬢の罪は皇帝陛下暗殺未遂、帝国民大量殺戮未遂及び致傷、アチェンディーテ公爵とステラモリス公爵への障害と名誉毀損、詐欺も含まれている。フィクタ嬢だけそこに身分の詐称とマーロン侯爵夫妻の殺害が加わる」
「……どいつもこいつも」
第一皇子が唸った。
「我が国が先頭に立ち統一国家にすることで世界は安定し繁栄するというのに何故それを理解しない?! 強い力が他を従える世界が正しい世界だ」
「各国が望めばだろう」
「併合されれば歴史上の偉業であると分かる。確認など必要ない」
「その抵抗を暴力で潰し、多くの犠牲があったとしても?」
「ウニバーシタス帝国の礎になれたと喜ぶだろう」
「……嘆かわしい」
掠れているのに妙に広場に響く声が通った。
「サク、異物って?」
「んー、芥子みたいなものです」
酩酊効果のある異物は植物から抽出するらしい。二人だけで話していた会話を聞いたフィクタが憎々しげに笑った。
「芥子ではないわよ。あれは加工に時間がかかるもの」
「おや認めますか」
サクが無表情に言いのけるのをフィクタが睨み歯噛みする。
ドラゴンが私の肩に乗り、フェンリルが側に立った。いつもの小さいサイズになっている。
「芥子はもっと先の話さ」
「それにその手の事は起きないようにする」
「そう?」
東は誰が管轄していたとドラゴンとフェンリルが話し始めた。やれガルーダがどうとか青龍がどうとか言って盛り上がり始めたところでサクが二人を制した。私たちにしか聞こえなくても今はその話をする時ではないものね。
「人を酩酊状態にして何をする気でした?」
「……」
「これはフィクタ嬢だけではなく第一皇子も関わっていました。皇子殿下、もう一度お話し頂いても構いませんよ」
「……」
「お前達がいなければ円滑に進んだものを」
第一皇子レックスは言葉を発しない。かわりにフィクタが話した。
「お前達がいなければ彼が皇帝になり、そのまま領土拡大が可能だったのに」
「貴方方は国家連合成立を阻止したかった?」
「ええそうよ。だから酒を使い帝都を混乱させて内戦状態にして、お前達が仕組んだ事にすれば邪魔も消える。民の感情の矛先を他国にする事も出来たのに」
サクがイルミナルクスの人間だから、ウニバーシタスで騒動を起こせばイルミナルクスに対して開戦の宣告ができる。サクをイルミナルクスがウニバーシタスを乗っ取る為に送り込まれた刺客としてでっち上げて。
「そもそもそちらに呼ばれて来たんですがね」
刺客を呼び寄せる国はないだろう。けどフィクタはそれでやれると踏んでいたらしい。
「お前達二人は本当に邪魔だった」
サクが刺客、私は国を併合された恨みでウニバーシタスに復讐しようとしたと動機付けができる。私達に理由を作って罪をなすりつけることは可能だ。
私とサクは大体二人一緒だった。騎士の治癒やシレのところに行っていたとしても大半の時間を二人だけで過ごしている以上、異物を混入していない証明はできない。
「十年前はうまくいかなかった。だからこの人が一時的に戻って来たタイミングでお前達を失墜させ、今度こそ領土拡大の方向へ行こうとしたのよ」
「戻って来れるよう仕向けてまで?」
皆で旧ステラモリスでご飯を食べてた時、第一皇子は一時的にウニバーシタスに戻って来ていると聞いた。それも現皇帝の体調不良があったからだ。
「侍女を使って皇帝に飲ませましたね」
それも一度だけではない。今も皇帝はフィクタが用意したもので体調を崩している。
全てはウニバーシタス領土拡大の為、戦争を起こす為、第一皇子を皇帝にする為。
「この人が皇帝になれば、私はその妃として全てを見渡せる。現皇帝は何もしない腰抜けだわ。なら早く動いてこの人に立ってもらわないといけない」
第一皇子が皇帝になれば、フィクタはその妃となる。ウニバーシタスが領土拡大に成功すれば世界を統べるも同然だ。
「そんなに一番になりたいんですか」
「お前には分からないわよ。生まれから恵まれて持っていたのだから。いくら奪っても平穏に過ごして、そのくせ何をしなくても人が集まってくるのだから腹が立つわ」
「そんな、私は」
「五月蠅い」
戦争を起こしてまで一番という立ち位置を欲しがるフィクタの気持ちは分からない。私は静かに暮らしている方が好きだから、表に立ちたいフィクタのことは理解できなかった。
「もはや戦犯だな」
どこかの代表が囁く。
「マーロン侯爵」
「ああ」
まだ採決も終わってない中、この前ウニバーシタスで出会った男性が静かに告げる。
「こちらの収容所で預かる準備は出来ている」
南の、海を越えた先の国の収容所に、今度は十年前とは違ってきちんと罪人として入るということ? 福祉活動に従事という域を越えてしまっているのは明らかだけど。
「今までの待遇はない。他の罪人と同じ牢、同じ食事に同じ労働に従事してもらう」
「私は聖女ですよ? 庶民の罪人と同じ扱いなど」
「これが貴方の罪ですよ」
「そ、もそも裁判だというのなら独断で先行して決める事ではないでしょう!」
では裁決をするかと問うと黙り込む。隣のサクが私にだけ聞こえる声で、衣食住揃ってるだけマシと思えと悪態をついた。聞こえていないマーロン侯爵は冷静に続ける。
「貴方方が自ら罪を認め受け入れるというなら裁決をせずともこちらは受け入れるが?」
「っ! 最大の侮辱です! 私達は正しい方へ導いているというのに。言葉を改めなさい」
周囲から溜息が漏れた。罪を認めるという選択肢は二人にはない。
「第一皇子とフィクタ嬢の罪は皇帝陛下暗殺未遂、帝国民大量殺戮未遂及び致傷、アチェンディーテ公爵とステラモリス公爵への障害と名誉毀損、詐欺も含まれている。フィクタ嬢だけそこに身分の詐称とマーロン侯爵夫妻の殺害が加わる」
「……どいつもこいつも」
第一皇子が唸った。
「我が国が先頭に立ち統一国家にすることで世界は安定し繁栄するというのに何故それを理解しない?! 強い力が他を従える世界が正しい世界だ」
「各国が望めばだろう」
「併合されれば歴史上の偉業であると分かる。確認など必要ない」
「その抵抗を暴力で潰し、多くの犠牲があったとしても?」
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