死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

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2話 やり直し開始、六歳に回帰する

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「というかおかしくないですか?」

 何故目の前のフィクタは物語の終わりを知っているの?
 フィクタはフィクタの人生を歩んだ。投獄されるところで物語が終わるだなんて断定できない。

「馬鹿ねえ。巡回者に触れてるのよ? あの女の記憶入ってんだから」
「え?」
「あの女から聞いたのよ」

 どこが終わりでどこが蛇足か。
 オタクからしたら蛇足なんてものはこの世に存在しないぞ。どれでもおいしく頂けます、なんて。

「今こうして分裂してるのは何故ですか?」
「巡回者のミスを精霊王が庇ったのよ」

 本来はありえないことだ。けど巡回者の影響を受けた部分をなかったことにできないという。正確に言うならできるけど、意識の世界と監視者たちとの取り決めで魂はいじらないとしているとか。
 巡回者に監視者、精霊王に聖女……用語が多すぎる。
 能力的にできません、な一文でもよかったじゃん。

「まあいいや」
「……はあ?!」
「手早くいきましょう。つまるとこ死に戻りでやり直すんですよね? フィクタはどうしたいんです?」

 私はフィクタであると信じきれていない。なにせ死に戻りたい理由が分からないから。

「……」
「一番になりたいは……なさそうですね? 聖女にも……睨まないでください。もー、どうしたいんですか?」
「……死にたくなかっただけよ。分かるでしょ」
「そうですねえ」

 まだ三十代だった。死にたくないから足掻いただけにすぎない。死に際なんてそんなものなのかな。

「巡回者も精霊王も今回のやり直しは認めてくれるそうよ」
「魔術成功してたんですか」
「ええ」

 死に戻りの魔術は難しい。それを成功させるなんてフィクタって実はすごいんじゃない?
 折角だ、こうなったら死に戻って新しく始めてみるしかないか。

「私はこのままの姿であんたの中で残るわ」
「というと?」
「混じらない。融合しないってこと」
「私が表立ったらお前誰だよ的なことになりません?」
「あいつの影響が強いだけで本質は変わらない。妥協するわ」

 どこにフィクタぽさがあるのやら。
 しかも目的なく戻るのもなんだかなーというところだ。

「六歳の幼女からやり直すのか……」
「身内も村もなくしてからの所だからなんでもできるわね」
「ポジティブですねえ……ひとまず最初よりは長生きすればいいですかね?」

 三十代死亡は早すぎるしね。

「好きになさい」

 その時が来たら融合してあげるわとフィクタはいやらしく笑う。高飛車でいかにも悪役な笑い方だった。


* * *


「……おや?」
「!」

 ベッドもいうには粗末なものに寝かされていた。よく知っている。

「目、覚めた?」

 側にいたのかあの時助けた双子の片割れが近づいてきた。恐る恐る顔を覗かれる。

「……大丈夫」
「そう」

 言葉少なに外に出て、もう一人を連れてくる。水を入れた桶を持っていた。あの大きな山のおかげで水には困らないのが我が国のいいところね。

「……へえ」

 起き上がると痛みはあるけど重傷ではなかった。最初と同じ。それもこれも先祖代々受け継いでる魔石のおかげだ。
 あの山からとれる誰でも魔術が使えるようになる石。

「傷は塞がってる」
「知ってますよ」

 あまり驚かない。奴隷として虐待を受けていたからか反応が薄く表情もあまりないのよね。

「外のこと、話した方がいい?」
「私のとこも貴方たちのとこもなくなりましたよね? 襲ってきた部族は奪うだけ奪って戻っていった」

 さすがに知りすぎてる私に二人は警戒を見せた。

「……君は聖女?」
「うわあ、それはない」

 前はそれに固執して亡くなりましたよ。

「これですよ」

 魔石を見せる。双子が同じ動きで顔を近づけた。
 これは前人生でも双子には見せて中身の説明をしている。今話しても問題ないだろう。

「山でとれる」
「そうそう」
「呪い師が持ってる」

 まあ大概立場ある人間が持ってるだろう。私が持っているのは山を越えた先出身のご先祖様の研究対象だったからだ。

「そうだ」

 立ち上がると痛みはあるものの動けそうだった。傷は塞がってるから問題ない。

「待ってまだ」
「大丈夫」

 行って外に出ると凄惨たる状況だった。私がいた小屋はかろうじて形を保っていたけど、外はもれなく家屋は倒壊、色々なものが散乱し、なんだか見てはいけないものもあったけど無視して進む。
 双子は後ろから黙ってついてきた。

「家族を探してる?」
「死んでますよ」

 私が双子の元に来る際に矢に撃たれている。魔石を持っていないし、撃たれたのが頭だから助からないだろう。
 もし助かっていたとしても襲ってきた部族に連れ去られているはず。そうなると会うのは難しい。
 実際双子の集落も私の集落も壊滅状態で人がいなかった。

「よしよし、あった」
「?」

 襲ってきた部族は見向きもしない。基本は食べるものやら家畜やらしか奪わない。存在が大きく知られたら需要が出てくるだろう物語において小さく出ていたアイテムだ。

「またその石?」
「使い方を後で教えますよ」

 首を傾げているけどそれも仕方ない。お守り程度の魔術なら教えてもいいだろう。
 にしてかなりの量があった。袋用意しといて正解ね。

まじない師に渡すのか?」
「いいえ。ってことは、そちらの呪い師生きてるんですか?」
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