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27話 エールの思い出語り
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翌日からなにも変わらずいつも通りのエールだった。学院に戻って授業を受けてもいつも通り。
シレとソミアの尊いカップル爆誕の為に一肌脱いだだけだと思っていたけど、それはその日の終わりに否定してるし……なぞだ。
「フラルは学祭に参加しないのですか?」
「そういうのは煩わしい派」
「そうですか」
ここに推しカプのヴォックスとユースティーツィアでもいれば頑張るつもりだったけど騎士学院と合同ではない。一部の騎士学院の生徒はこちらの学祭に遊びに来るようだけど二人が来るという情報はないし、来るならストーキングしたいからフリーであるのが正解だろう。
「第二皇子殿下とユラレ伯爵令嬢は来ませんよ」
「え、声に出てた?」
「いいえ。感で当たりをつけました」
私の思考を読んでるようで怖いよ。
エールの情報ではヴォックスとユースティーツィアはレースノワレの王女の誕生祭だからと不在にしてるらしい。まさかヴォックスまで一緒に行くとは……婚約は国同士の公認的な? いやまあ体裁としては国際騎士団設立の先駆けパフォーマンスのが有力?
「フラル、私と学祭を回りませんか?」
「遠慮しとく」
「ふふ、すげないですね」
ただでさえ最近帝国を行き来するようになって死亡フラグたちとの関係が深くなっている。死亡フラグをいつどんな形で回収するか分からないから表立たない方がいい。
というか即お断りな私に笑ってられるとかドエムなの?
「エール、私のこと本当に好きなの?」
「はい。好きですよ」
ソミアとのお茶会以降、最近すっきりした様子だ。最初はハニートラップで私を骨抜きにして悪事を暴き死亡フラグを回収してくるのではとは思っていたけど、あまりになにもないから本当に純粋に私のことが好きなのではと疑い始めている。
「フラル、ついてます」
「ん」
今は二人、学院の裏庭のガゼボで昼食をとっていた。前からこうして食べこぼしとってくれてたけど初めに断ってればよかった? 今更遅い?
「そんなに私のこと好きなの?」
いつもの笑顔そのままパンを口にする。さすが貴族、綺麗な所作で食べるのね。
「そうですね……例えばですが、騎士学院視察の帰りにフラルに会いに行きました」
「九・十話参照」
「その時、貴方の学友になりたいと言いましたね。私が今よりもフラルの側にいられるならなんでもいい、とも」
二十四時間監視宣言のことね。あの時は恐怖に慄いたわ。
「あれでは遠回しすぎました」
本当に口説いていたとは思ってなかっただけで、素で口説くタイプだと思った記憶あるよ。
「フラルを騙して兄達の前に連れた時は嫌われると思うと凄く嫌で……最後まで悩みました」
「十一話ね」
「双子や故郷の同じ友人達を気遣ってばかりで羨ましいとも思ってましたね」
「私は私が一番だよ」
そう言うと思ってましたと笑う。事実だもの。私は私を一番に優先する。死にたくないから。
「将来の職の確保、私が理事長に進言したと言ったらどう思いますか?」
「え?」
「放っておくといなくなりそうなので……職の融通という形でフラルを縛ろうとしたんですよ」
それはかなり重いのでは? でもそう言うと喜ぶからやめとこ。
「フィクタでなくフラルという名を私だけが知っているのも、私のことをエールと特別に呼ぶのも、内心私がとても喜ばしく想ってるなんて知らないでしょう?」
「十六話あたりかしら」
あの日はしつこかったからよく覚えている。
「憂いを払うから側にいてほしいとも言いましたし、特別になりたいとも言いました」
「あ、あれね」
「本気にしてなかったでしょう」
「そうね」
そうだと思ってましたとまた笑う。当時は恋愛要素が絡んでいるなんて念頭になかった。
「帝都で逢引できたと喜んでいたのは私だけなんでしょうね」
「え、あれ?」
ちなみに二十一話参照だ。
「私としては誘うのに結構緊張したのですが」
「気づかなかったわ」
気遣いじゃなかったの? あれってデートしましょうだったの?
そんな感じどこにもなかった。
「それに……フラルが未来を知っていて、その為に動いているのを知っているのが自分だけというのも嬉しいです」
未来というか本来あるべき物語のルートね。エールには未来が見える呪い師みたいに見えるのかしら。
「先日のソミアさんを説得したのだって、フラルが喜ぶからですし」
「はあ」
「もうすぐ私たちも十六でしょう? デビュタントがありますし、婚姻の話も本格的になります」
本当にソミアの前での告白は本物だったの?
「うーん……今まで私が好きだったのは分かったけど、そんな昔に何があって私のこと好きになったの?」
「そうですね」
思えば初めて会って以降、会議以外の日に来てたのは私が気になって、ということになる。
私ったら、最初の内は逃げようとしたり水ぶっかけたりした。試作品デザートの味見も草むしりもしたけど、まさかこれも全部?
「はい。フィクタが侯爵としての私ではなく、一人の人間として扱ってくれたのは一つの要因でしたよ。侯爵なのに邪険にするというのも中々見ないので興味がわいたのも事実です」
「心読んだ?」
「言葉に出てましたね」
やってしまった。というかやっぱりドエムなんじゃない? 水かけられて気になるとか……ドエムでしょ。
「……そう」
「ええ」
まだなにか話そうか悩んでいるのが見えた。
なので目で訴える。割と目を合わせると応えてくれる感じはあるのよね。
「フラルは真っ直ぐ私を見てくれますよね」
「そ?」
「ええ、その目が気になったところもありますが……一番はひたむきさでしょうね」
なにに?
死亡フラグへの?
「自分の為と言いつつ、あの双子を筆頭に故郷の同胞たちのことまでずっと気にしていますね」
自覚はないと思いますがと眉を下げた。
「危険だからと双子を突き放す姿は興味深かった」
「やっぱり全部聞いてたの」
「ええ。私としては貴方の近くをうろつく双子は目に障るので離れてもらえると嬉しいですが」
と言うエールの眼は笑ってない。まさか嫉妬してたの? 今の今まで?
私と双子にはなにもないのに。
「幸せにしたい人、この場合第二皇子や第三皇子ですが……その為に関わりたくない人間と関わり、法まで変えるなんて早々できません」
本編ヒーロー・サクも余裕でしてたけど。全部クラスと結婚する為にね!
「そんなこと、」
「一般的に考えるなら、そんなことできませんよ。そんなフラルだから私もできる限り力になりたいと思ったんです。でもフラルはさらに先をいきますよね。戦争をなくしたのですから」
戦争が一番ネックだったから仕方ないよ。外伝では戦争のせいでヴォックスとユースティーツィアはこじれたし。クラスも危なかったし。
「フラルが救いたい人を救えた後でいいです。私のこと、考えてもらえませんか?」
「それは……」
終わったら死亡フラグから離れる為に、この大陸を去りたいんだけどなあ。
まさかそれも見越して慰留させる為に言ってる? やめてよ?
でもここまで語られて断るとすっごく嫌な女みたいで避けて通りたい。というか、ここまでエールが私を好きって事実を突きつけられて塩対応したら、それこそ死亡フラグ回収しそう。
「ただ私みたいなのが物珍しいだけだと思うんだけど」
「いいえ、フラルが唯一フラルだから好きなんです」
ごめんね、エール。小説の世界であるここで好きだの愛だのが一番危険なのよ。
ときめきよりも警戒心と危機感が増すだけ。どうしたものか。
シレとソミアの尊いカップル爆誕の為に一肌脱いだだけだと思っていたけど、それはその日の終わりに否定してるし……なぞだ。
「フラルは学祭に参加しないのですか?」
「そういうのは煩わしい派」
「そうですか」
ここに推しカプのヴォックスとユースティーツィアでもいれば頑張るつもりだったけど騎士学院と合同ではない。一部の騎士学院の生徒はこちらの学祭に遊びに来るようだけど二人が来るという情報はないし、来るならストーキングしたいからフリーであるのが正解だろう。
「第二皇子殿下とユラレ伯爵令嬢は来ませんよ」
「え、声に出てた?」
「いいえ。感で当たりをつけました」
私の思考を読んでるようで怖いよ。
エールの情報ではヴォックスとユースティーツィアはレースノワレの王女の誕生祭だからと不在にしてるらしい。まさかヴォックスまで一緒に行くとは……婚約は国同士の公認的な? いやまあ体裁としては国際騎士団設立の先駆けパフォーマンスのが有力?
「フラル、私と学祭を回りませんか?」
「遠慮しとく」
「ふふ、すげないですね」
ただでさえ最近帝国を行き来するようになって死亡フラグたちとの関係が深くなっている。死亡フラグをいつどんな形で回収するか分からないから表立たない方がいい。
というか即お断りな私に笑ってられるとかドエムなの?
「エール、私のこと本当に好きなの?」
「はい。好きですよ」
ソミアとのお茶会以降、最近すっきりした様子だ。最初はハニートラップで私を骨抜きにして悪事を暴き死亡フラグを回収してくるのではとは思っていたけど、あまりになにもないから本当に純粋に私のことが好きなのではと疑い始めている。
「フラル、ついてます」
「ん」
今は二人、学院の裏庭のガゼボで昼食をとっていた。前からこうして食べこぼしとってくれてたけど初めに断ってればよかった? 今更遅い?
「そんなに私のこと好きなの?」
いつもの笑顔そのままパンを口にする。さすが貴族、綺麗な所作で食べるのね。
「そうですね……例えばですが、騎士学院視察の帰りにフラルに会いに行きました」
「九・十話参照」
「その時、貴方の学友になりたいと言いましたね。私が今よりもフラルの側にいられるならなんでもいい、とも」
二十四時間監視宣言のことね。あの時は恐怖に慄いたわ。
「あれでは遠回しすぎました」
本当に口説いていたとは思ってなかっただけで、素で口説くタイプだと思った記憶あるよ。
「フラルを騙して兄達の前に連れた時は嫌われると思うと凄く嫌で……最後まで悩みました」
「十一話ね」
「双子や故郷の同じ友人達を気遣ってばかりで羨ましいとも思ってましたね」
「私は私が一番だよ」
そう言うと思ってましたと笑う。事実だもの。私は私を一番に優先する。死にたくないから。
「将来の職の確保、私が理事長に進言したと言ったらどう思いますか?」
「え?」
「放っておくといなくなりそうなので……職の融通という形でフラルを縛ろうとしたんですよ」
それはかなり重いのでは? でもそう言うと喜ぶからやめとこ。
「フィクタでなくフラルという名を私だけが知っているのも、私のことをエールと特別に呼ぶのも、内心私がとても喜ばしく想ってるなんて知らないでしょう?」
「十六話あたりかしら」
あの日はしつこかったからよく覚えている。
「憂いを払うから側にいてほしいとも言いましたし、特別になりたいとも言いました」
「あ、あれね」
「本気にしてなかったでしょう」
「そうね」
そうだと思ってましたとまた笑う。当時は恋愛要素が絡んでいるなんて念頭になかった。
「帝都で逢引できたと喜んでいたのは私だけなんでしょうね」
「え、あれ?」
ちなみに二十一話参照だ。
「私としては誘うのに結構緊張したのですが」
「気づかなかったわ」
気遣いじゃなかったの? あれってデートしましょうだったの?
そんな感じどこにもなかった。
「それに……フラルが未来を知っていて、その為に動いているのを知っているのが自分だけというのも嬉しいです」
未来というか本来あるべき物語のルートね。エールには未来が見える呪い師みたいに見えるのかしら。
「先日のソミアさんを説得したのだって、フラルが喜ぶからですし」
「はあ」
「もうすぐ私たちも十六でしょう? デビュタントがありますし、婚姻の話も本格的になります」
本当にソミアの前での告白は本物だったの?
「うーん……今まで私が好きだったのは分かったけど、そんな昔に何があって私のこと好きになったの?」
「そうですね」
思えば初めて会って以降、会議以外の日に来てたのは私が気になって、ということになる。
私ったら、最初の内は逃げようとしたり水ぶっかけたりした。試作品デザートの味見も草むしりもしたけど、まさかこれも全部?
「はい。フィクタが侯爵としての私ではなく、一人の人間として扱ってくれたのは一つの要因でしたよ。侯爵なのに邪険にするというのも中々見ないので興味がわいたのも事実です」
「心読んだ?」
「言葉に出てましたね」
やってしまった。というかやっぱりドエムなんじゃない? 水かけられて気になるとか……ドエムでしょ。
「……そう」
「ええ」
まだなにか話そうか悩んでいるのが見えた。
なので目で訴える。割と目を合わせると応えてくれる感じはあるのよね。
「フラルは真っ直ぐ私を見てくれますよね」
「そ?」
「ええ、その目が気になったところもありますが……一番はひたむきさでしょうね」
なにに?
死亡フラグへの?
「自分の為と言いつつ、あの双子を筆頭に故郷の同胞たちのことまでずっと気にしていますね」
自覚はないと思いますがと眉を下げた。
「危険だからと双子を突き放す姿は興味深かった」
「やっぱり全部聞いてたの」
「ええ。私としては貴方の近くをうろつく双子は目に障るので離れてもらえると嬉しいですが」
と言うエールの眼は笑ってない。まさか嫉妬してたの? 今の今まで?
私と双子にはなにもないのに。
「幸せにしたい人、この場合第二皇子や第三皇子ですが……その為に関わりたくない人間と関わり、法まで変えるなんて早々できません」
本編ヒーロー・サクも余裕でしてたけど。全部クラスと結婚する為にね!
「そんなこと、」
「一般的に考えるなら、そんなことできませんよ。そんなフラルだから私もできる限り力になりたいと思ったんです。でもフラルはさらに先をいきますよね。戦争をなくしたのですから」
戦争が一番ネックだったから仕方ないよ。外伝では戦争のせいでヴォックスとユースティーツィアはこじれたし。クラスも危なかったし。
「フラルが救いたい人を救えた後でいいです。私のこと、考えてもらえませんか?」
「それは……」
終わったら死亡フラグから離れる為に、この大陸を去りたいんだけどなあ。
まさかそれも見越して慰留させる為に言ってる? やめてよ?
でもここまで語られて断るとすっごく嫌な女みたいで避けて通りたい。というか、ここまでエールが私を好きって事実を突きつけられて塩対応したら、それこそ死亡フラグ回収しそう。
「ただ私みたいなのが物珍しいだけだと思うんだけど」
「いいえ、フラルが唯一フラルだから好きなんです」
ごめんね、エール。小説の世界であるここで好きだの愛だのが一番危険なのよ。
ときめきよりも警戒心と危機感が増すだけ。どうしたものか。
応援ありがとうございます!
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