死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

文字の大きさ
29 / 55

29話 学祭

しおりを挟む
「なんか……普通の学祭なのね」
「どういったものを想像してたんですか」

 屋台でご飯食べられて、演劇やらコンサートやらがあってだと、この前帝都で歩いた時とあまり変わらない。

「メイド喫茶とか女装男装バーとかほしいな」
「なんですか、それは」

 苦笑されるもドン引きしないあたり、私の言動に慣れている。さすがエールね。

「ほら、またつけて」

 食べこぼしの癖もいい加減直さないといけない。
 こういうことを許しているからエールが勘違いするんだわ。今の内から諦めてもらって、国家連合設立後にこの大陸を離れられるようにしよう。学院で働くのもやぶさかではなかったけど、死亡フラグから完全に離脱するには大陸を離れるしかない。

「グレース騎士学院の生徒、結構来てるのね」
「ええ。交流会や交換留学も増えましたし」

 外伝二つ目のヒーロー・ヴォックスとヒロイン・ユースティーツィアがいれば文句なかった。二人の姿が見られないのは心底残念ね。

「フィクタ」
「フィクタ」
「あら、貴方たち」

 双子が来ていた。
 嬉しそうに駆け寄って来るところを、なぜか隣が肩から抱き寄せてきて、目の前の双子の動きがびしりという音を立てた気がした。

「ちょっとエール、いきなりなに?」
「フィクタ!」
「なにそれ!」
「いやそれは私が聞きたい」

 エールとこんな密着することなんてなかったもの。
 しかも場所が悪い。双子ってだけで目立つのに騎士学院の制服着てて精悍さが割増しているから、こっちの総合学院の女生徒からの脚光を浴びている。女子特有の黄色い声交じりのひそひそが証明してるし。
 挙句、エールが公衆の面前で私を抱き寄せたから尚更視線がこちらに集中した。
 どこにいたってどの世界だって女性は恋バナが好きでイケメンが好き。つまりこのシチュエーションは大好物と言うわけだ。私だって渦中の中にいなければ両手上げて喜んでる。

「やっぱり! フィクタ、そいつから離れて」
「え? やっぱり?」

 いや離れたいけど無理なんだって。結構力強いのよ。

「そいつ最初からずっとフィクタをいやらしい目で見てた」
「ええ?」

 見上げる間近なエールはにっこにこだった。あ、隠してる。

「折角二人きりで楽しんでたのに」

 当然双子に届かない声でエールが囁く。散々聞いたから今は嫌でも分かる。エールは今、双子に嫉妬しているし、デートを邪魔されて不機嫌になっている。困ったわね。

「エール、離れて」
「嫌です」
「公衆の面前でこんなことして目立ちたくないの」
「……」
「大丈夫、すぐ終わるから」

 剣呑な視線を送る双子に対し、笑顔のまま私の肩から手を離してくれた。けどそのまま私の手をとってくる。だめね。仕方ないからこのぐらいは許そう。

「フィクタ、そいつと結婚するの?」
「しないわよ。てか話が飛躍しすぎ」
「え、しないのですか」
「ちょっと黙ってて」

 ややこしくなるわ!

「やっぱりフィクタを守る」
「特にそいつは危険だし」
「落ち着きなさい。貴方たちの気持ちも分かるけど、彼は悪い人ではないの」
「フィクタは騙されてる」

 てか付き合ってもいないのに、何故かそういう感じで話してくるのやめてくれないかな?
 そりゃ抱き寄せられたらそう思うだろうけど……周囲の女性陣のやっぱり付き合ってた的なひそひそ声が痛いよ。違うの、告白されたけど付き合うなんて言ってない。
 あれ、私そしたら結構狡い女? 物語の修正力が働いて悪役令嬢への道を進むの? やめてよ。
 いや、今はこのコントみたいな会話劇をどうにかしないと。

「フリーゴス、カロル。ちょっと来なさい」
「フィクタ、考え直して」
「そうだよ。そいつは絶対駄目」

 自分たちがフィクタを守らないとと息巻いている。
 エールは嫌な笑顔のまま私と手を繋いで歩いていて律義に言葉を発さない。
 多くの視線を浴びながらも、人が少なくなった場所まで来れた。

「ねえ、折角お祭りで盛り上がってるし、久しぶりに会えたんだから楽しくいかない?」
「だって、そいつがフィクタを抱き寄せるから」
「それは後できちんと叱っておく」

 しゅんと落ち込んでから、二人目を合わせて申し訳なさそうにこちらを見る。

「本当はフィクタを驚かせるつもりだった」
「喜んでくれるかなって」
「ええ、そうね。久しぶりに会えて嬉しいわ」
「本当?」
「もちろん」

 よかったと笑う双子に癒されるわ。年齢の割に精神年齢がちょっと幼い気がするけど、そこはおいおい伴ってくるでしょうし。なにより出会った頃より感情豊かになっている。それだけで安心だ。

「じゃあ祭はフィクタが案内してくれる?」
「え、それは」
「残念ながら私と先約がありますので」

 黙ってなかった!
 エールが喋るだけで目の前の双子の機嫌が急降下するのよ、勘弁して!

「……決闘するか?」
「フリーゴス、とてもいい案だと思う」
「おやおや、私はかま」
「待った!」

 いい加減にしなさい!
 そこから私にお説教される男三人が目撃され、それはそれで注目を浴びることになった。

* * *

「……疲れたわ」
「すみません。どうしてもあの二人には大人げなくなってしまいます」

 渡されたのは果実水だった。学祭終わりにいいチョイス。エールって本当よくできる子ね。
 窓の外では花火があがっている。
 結局あの後は双子とエールを連れて学祭をまわり、早い段階で双子は帰ることになった。どうやら騎士学院でも主要なところに置かれているらしく、やる事が多いらしい。
 おかげで今私は図書館の窓からエールと二人、フィナーレの花火を見ながら過ごしている。エールの機嫌をよくするための時間があって良かった。

「エールはあの子たちを意識しすぎよ」
「フラルは身内に甘い」

 立ち上がって座るエールの頭を撫でてあげた。
 なにを、と戸惑う姿が見れてちょっと新鮮。

「二人で回れなかったのに我慢してくれてたでしょ」

 いい子いい子的な。
 すぐに手を取られ「子ども扱いはやめてください」と囁く。これは照れてるだけで不機嫌ではないわね。よしよし。

「……フラル」

 とった手を自身の口元へ連れて行き、指先に唇を寄せてくる。うっわ、エールってば告白してから随分積極的になった。

「……来年は必ず二人でお願いします」
「はいはい」

 これだけ素直になるのなら、告白されてからの方が気兼ねなくていいかも、なんて思ってしまう。分かりやすいし。
 なんて、返事してない卑怯な私が望むことじゃないか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

処理中です...