死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

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32話 デビュタント

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「結局デビュタント出るんじゃん」
「まあまあ、私がいますので」

 エールがエスコートしようとしなかろうと関係ない。帝国の重鎮マジア侯爵夫妻の養子になった平民の娘というだけでスキャンダルなのに、デビュタントで噂そのものすなわち自分を晒すなんて愚の骨頂だ。
 なんでデビュタント出席してるの、私。
 
「はあ……」
「後でいくらでも話を聞きます。今日は我慢して下さい」

 具体的には養子の話を持ってきたあたりから文句言ってもいいと思う。
 養子、後見人の件は仕方ないし、そこを採用しないと違う死亡フラグを回収しそうだったから結果オーライだ。まあ養子決定からデビュタントまでが早すぎて断る隙間すらなかったのは不満ね。やっぱ後で文句言おう。

「マーロン侯爵」
「……」

 デビュタントでもう一つ悩ましいのがここだ。
 やたらエールが話しかけられている。ダンスの誘い、歓談の誘い、挨拶と様々だけど、ようはマーロン侯爵家第二継承者にお近づきになりたいということだ。

「あの、私と是非ダンスを」
「申し訳ございませんが、今宵の相手は決まっておりますので」
「それなら」
「ええ、他の方と話す時間もありません」

 丁寧に謝るのに付け入る隙は一切ない。
 ここでどこぞの国の襲撃なんてないと思うのに、なぜか外も中も警備は厳重だ。騎士学院の生徒に応援を頼むレベルの人を割くってなんなの。

「お、いたいた」
「フィクタ、どちらへ」
「庭。ほら、フリーゴスとカロルが仕事してて」

 途端笑顔なのに眉間の皺が深くなる。

「今は私がフィクタのパートナーです」
「ただの雑談振っただけで、そこまで不機嫌になる?」
「なりますよ」

 エールってば最近大人げない。いや、年相応になったというべき?

「フィクタ」
「フィクタ」
「あら、そっちから来たわね」

 警備場所と私がいる場所がかぶった。ずっとここにいなよという双子にもう帰るわよと言うとエールが小さく驚く。いや今すぐにでも帰りたいんだけど。

「そういえば貴方たち、就職先は決まった?」
「年齢ばれた」
「はい?」
「二年留年になった」

 私と親しくしてたところから双子を知る商人に騎士学院が調査を入れたらしい。今更になって年齢がバレて二年留年になったとか。やっぱり同い年だったのね。というか学院の調査遅すぎでしょ。

「おや、私達の娘は人気者だね」
「そうですね」

 相変わらず平和そうなマジア侯爵夫妻がやってきた。私を養子にしてから凄く嬉しそうでなにより。私としては夫妻に自分の命を大事にする行動をとってほしいわ。

「フィクタと同郷だと聞いているよ」

 名前を呼ばれ騎士の礼をとった。双子ったら中々様になってる。

「困ることがあったら気兼ねなく言ってほしい」

 娘と同郷だからという理由で随分甘いんだから。やれやれと呆れていると双子がそれならとお願いを申し出た。初対面なんだから、やめときなさい。

「フィクタの護衛になりたいです」
「側仕えの護衛騎士として雇ってください」
「貴方たち!」

 まだ諦めてなかった! こんなところでなにを言い出すかと思ったら!

「駄目って言ったでしょ!」

 国際平和騎士団がまだ設立してないからその話は言えないし、マジア侯爵夫妻は笑顔でうんうん言ってて採用しそう。やめて。

「娘は嫌らしいので、君達が卒業するまでは保留かな?」
「あ……」

 私に視線を寄越す。穏やかな瞳の中に冷静な色合いが見えた。事情があると分かっているわね。

「成績も良好な上で卒業して、面接にいらっしゃい」
「はい」
「分かりました」

 夫妻が格上だと分かっている双子はすぐに引いた。空気読むのはうまいのよね。そして騎士団長である外伝二つ目のヒーロー・ヴォックスに呼ばれ庭に出て仕事に戻った。

「ふう」
「これで良かったかな?」
「ありがとうございます……助かりました」
「同郷故の事情もあるだろう」

 事情を聞いてこないところはさすが大人。まさか双子の死亡フラグの為、なんて理解を得られないだろう。

「にしても、大変だなあ」

 ええええと夫人までにこにこしている。なにが?

「娘の人気がすごくて婚約者殿は大変だろう?」

 エールの肩に手を置き笑う侯爵夫妻、そして笑顔のまま無言のエール。いやいや否定してよ。

「違うし」
「え?」
「え?」

 なんで夫妻がそんなに驚くのよ。

「きちんと彼から申し出を頂いたよ?」
「え、ちょっとなにそれ」

 エールに訴えるもいい笑顔しか返ってこない。

「私達の子供になった途端、デビュタントまでの間に随分と縁談の話もありましたし」
「え、そうだったんですか」
「彼がいるから断っておいたよ」

 マジア侯爵夫妻のネームバリューがすごすぎる。でもこれで分かった。エールと婚約してれば縁談が断れる。これは過激派側との接触リスクを避ける為だ。ひとまず国家連合設立までの契約、というか嘘の情報を流す的なやつね。分かった。

「御父様、御母様、ありがとうございます」
「いいんだよ。君がしてくれたことに比べれば足りないぐらいだ」

 いえいえ。今ある種、贖罪してるようなものだし、近くでリスク管理してるだけなんで。

「私達は皇帝陛下への挨拶も済んだから帰るよ」
「はい、お気をつけて」
「次は我が家においで」
「善処します」

 今日はデビュタントが終わったら外伝三つ目のヒロイン・ソミアと同僚侍女のメルが着替えを手伝ってくれる。そのまま城のあてがわれている部屋で就寝し仕事に戻る形だ。
 マジア侯爵邸はできる限り行きたくない。当然お断りだ。

「……で、エール。なにかのプランがあるなら先に教えてよ」
「そうですねえ」

 嘘婚約は話し合わせるために必要でしょ。

「いくら嘘つくにしても婚約は話し合わせるために必要な情報だわ」
「ああ、それは真実です」
「はい?」
「正式に婚約を申し込んでいますよ」

 なにを言っているの?

「ちょっと、どう」
「おいお前」

 誰から声をかけられたかすぐに分かった。
 この間の悪さもさすがよ。嫌になる。

「第一皇子殿下」 
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