死亡フラグと修正力に抗う一周目悪役令嬢な私【元ツンデレ現変態ストーカーと亡き公国の魔女 外伝3】

文字の大きさ
47 / 55

47話 フェンリルとドラゴン

しおりを挟む
 まずい。
 骨格から男だと分かる。フードで顔を隠してて明らかに不審者。第二皇子管轄の警備の中、どうやって入り込んだの。

「っんの」

 足で脛を蹴る。痛みに少し屈んだ。あら、丁度いい位置に顔が下がってきたわね。

「離しなさいよ!」

 右手を捕まれていたので左拳のストレートパンチをお見舞いした。運良く顔に入って拘束されてる手が緩む。手を引いて距離をとろうと思った時だった。
 ゴッと音がして目の前の男が横に吹っ飛ぶ。

「?!」

 そのまま地面に身を伏せた。起きあがらないけど、生きてるわよね?

「フィクタ!」

 ふわりと舞うようにおりてきたのに打撃は鋭い。男と私の間に入って背を向けたのはエールだった。

「お約束ね」
「……緊張感を持って下さい」

 ため息を吐かれた。でもおかげでエールの殺気は引っ込んだ。勢いのままトドメを刺しても困る。

「生きてるわね?」

 地面に這いつくばってる男は呻きながら顔を上げた。フードがとれて顔が良く見えたけど知ってる顔ではない。

「第二皇子殿下」
「ああ、問題ない」

 ユースティーツィアと共に剣を男に向け、囲むように距離を開けたところに騎士が控えている。さすが推しカプ。優秀ね。

「……くそっ」

 悪態つくだけかと思ったら右手に持つ何かを持っていた。持つ指先に力が入る何かが淡く光った後、粉々に砕け散る。

「魔石!」

 しかもすぐ割れるなんて不完全品も甚だしい。いやその前にどうしてこの男が持っていたの。

「フィクタ」

 男に近づこうとする私をエールが止めた瞬間、遠くに控える騎士の頭上を越え、迷わずこちらに駆ける獣の姿が見えた。

「野犬?」

 かなりの数が四方から攻めてきた。特段動く気がないエールやヴォックスにユースティーツィアにもおかしさを感じて、エールの袖を掴むと気づいたエールがこちらに顔を向ける。
 場に似合わないぐらい目元を緩ませて微笑んだ。

「大丈夫です」

 背後から何かが跳躍して私達の頭上を越える。
 白銀の毛並みと、野犬に匹敵する体躯。
 先頭に立った途端、美しい大きな犬は響くような吠え声をあげた。

「!」

 四方の野犬が地面に落ちた。全て失神して震えている。

「本当お前ちょろいな」
「サク、言い方よくないよ」

 背後から声がかけられ振り向くと本編推しカプのサクとクラスが歩いてくる。
 さらにその後ろからは外伝推しカプのシレとソミアが来た。シレは魔法で野犬に対し何か魔法をかけている。

「魔石で野犬を操っていたから魔法を解除してます」
「あ、そうなの」
「あいつはヴォックスの方で預かるからな」
「オッケー、サクたん!」

 怒涛のことで今一実感がないけど、間者を見事撃破的な?
 ヴォックスたちは拘束した男を他の騎士に預け、魔法を解除した野犬も控えていた騎士が連れていった。
 推しカプたちと私とエールが残る。え、楽園?

「おい、お前に挨拶だとよ」
「?」

 ヴォックスとユースティーツィアが道を譲った。先程の白銀の犬が私の目の前にくる。

「大きいわんこですね」
「ガルーダが息災なようでなによりだ」
「ん?」
「おや? 巡回者の記憶から私が誰かは分かるだろう」

 白銀の毛並みに金色の瞳。
 まさか。

「サクとクラス以外では君にだけ声が届くようにしている」
「フェンリル!」
「ああ」

 まさかこんなとこで会えるなんて! 聖女の元にしか現れないのに。いやサクがいるからいるとは思ってたけどフィクタと接触なんてしないでしょ?

「ドラゴン」
「ああ」

 フェンリルの頭の上に小さなドラゴンが現れた。これも私にしか見えないようにしている。

「ふおおおおおお!」
「フィクタ、アチェンディーテ公爵令息の飼い犬に興奮されても困ります」
「エール黙ってて!」

 小説本編でもフィクタはドラゴンとフェンリルを見ていた。この世界線では会うことはないと思っていたけど、こんなことがあるのね。

「巡回者の影響があるとはいえ、あの傍若無人ぶりが嘘のようだな」
「しかし本質は変わってないようだが」
「ん? お二人もみえてる?」
「ああ、そうだな」

 明らかに小説本編のフィクタを知っているような発言だった。

「はっ!」
「フィクタ……なにをしてるんです?」
「黙っててエール」

 ドラゴンとフェンリルの前で土下座した。小説のフィクタがやらかしたことについて。

「大変申し訳ございませんでした」
「サク、いいの? フィクタ嬢、君の飼い犬に土下座してるけど」
「シレ、ほっといていい」

 この二人を怒らせたら大変なんだからね!
 荷電粒子砲でるんだぞ!

「ああ、そのことなら気にすることはない」
「君は罰を受けたしな」
「表舞台にたてて我々も楽しかったぞ」
「あの世界線も悪くなかった」
「ん?」

 この言い方だと私の中身をみたとかではなく、純粋に小説本編の世界線にいたかのようだ。けど、この世界線は別物だよね?

「ああ、我々はどの世界線とも繋がっている」

 エスエフ小説も真っ青だわ。

「余談だな。君を通してガルーダの近況も分かったし、今後もこの世界線を楽しんでもらえればいい」
「はあ」

 ガルーダとは? なんかそんなスーパーな生き物と話した記憶ないけど。

「君の故郷にまじない師がいただろう」
「ああ!」

 そういえば、フェンリルとドラゴンによろしく的なこと言ってた気がする。

「君と接触した時に我々にメッセージを残していた」
「きちんと受け取ったよ」
「ほう」

 なんかやっぱりこのへんのキャラ出ると規格外になってくる。私は俄然わくわくする派。

「巡回者の性質も徐々に薄くなってるようでなによりだ」
「こちらのミスが解決するまで見守ろう」
「ありがとうございます?」

 今後も恩恵に預かれるならなんでもいいか。

「終わったな」
「ああ、サク。手間を取らせた」
「帰るぞ」

 サクの一言で解散の流れになった。さすがサク、すごいカリスマ性だ。

「え、サクいいの? フィクタ嬢、犬に土下座して終わりだよ?!」
「ああ? 終わりだよ。俺とクラスは帰るからな」

 二人をにやにやしながら見送る。
 推しカプも散り散りになり私とエールも帰ることになった。というか問答無用で馬車に押し込まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

逃げたい悪役令嬢と、逃がさない王子

ねむたん
恋愛
セレスティーナ・エヴァンジェリンは今日も王宮の廊下を静かに歩きながら、ちらりと視線を横に流した。白いドレスを揺らし、愛らしく微笑むアリシア・ローゼンベルクの姿を目にするたび、彼女の胸はわずかに弾む。 (その調子よ、アリシア。もっと頑張って! あなたがしっかり王子を誘惑してくれれば、私は自由になれるのだから!) 期待に満ちた瞳で、影からこっそり彼女の奮闘を見守る。今日こそレオナルトがアリシアの魅力に落ちるかもしれない——いや、落ちてほしい。

悪役令嬢と転生ヒロイン

みおな
恋愛
「こ、これは・・・!」  鏡の中の自分の顔に、言葉をなくした。 そこに映っていたのは、青紫色の髪に瞳をした、年齢でいえば十三歳ほどの少女。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』に出てくるヒロイン、そのものの姿だった。  乙女ゲーム『タンザナイトの乙女』は、平民の娘であるヒロインが、攻略対象である王太子や宰相の息子たちと交流を深め、彼らと結ばれるのを目指すという極々ありがちな乙女ゲームである。  ありふれた乙女ゲームは、キャラ画に人気が高まり、続編として小説やアニメとなった。  その小説版では、ヒロインは伯爵家の令嬢となり、攻略対象たちには婚約者が現れた。  この時点で、すでに乙女ゲームの枠を超えていると、ファンの間で騒然となった。  改めて、鏡の中の姿を見る。 どう見ても、ヒロインの見た目だ。アニメでもゲームでも見たから間違いない。  問題は、そこではない。 着ているのがどう見ても平民の服ではなく、ドレスだということ。  これはもしかして、小説版に転生?  

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?

六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」 前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。 ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを! その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。 「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」 「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」 (…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?) 自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。 あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか! 絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。 それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。 「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」 氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。 冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。 「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」 その日から私の運命は激変! 「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」 皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!? その頃、王宮では――。 「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」 「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」 などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。 悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!

処理中です...